16コア32スレッド デュアルCPU Xeon構成のゲーミング性能を図る

「AMD Ryzen」シリーズの投入によって、「多コア・多スレッド」化が進みそうなコンシュマーCPU。停滞していたCPU市場に活気が戻るのはユーザー的には嬉しい限りだ。しかし、コア数とシングルスレッド性能がトレードオフになっている点はAMD・Intel共に変わりない。

「多コア・低クロック」CPU環境はゲーミング性能にどのような影響を与えるのだろうか。手持ちのデュアルXeonを搭載したPCで試してみる。

本来ゲーミング用途ではないCPU「Xeon」シリーズ

Xeonはゲーミングを想定した用途ではない。主にサーバー・ワークステーションといった業務用途をターゲットにしたCPUとなっている。

バリエーションとして少数コア、高クロックの「Core i7」と大して分からないXeonも存在するが、主力は「Core i7」では実現できない多コア・マルチスレッドとECCメモリ・長時間高負荷稼働を前提とした堅牢性が特徴のモデルだろう。

今回はゲーミング性能を図っているが、これらのベンチマークやテストでXeonの価値を測れないのは言うまでもなく、実際、筆者もゲーミング用はCore i7搭載の普通のPCだ。

CG制作作業用の「自作」ならぬ「他作PC」

筆者自信は長年、メーカー製のワークステーションをCG制作用として利用してきた。デュアルXeonに「Quadro」といった3DCG制作では定番の構成で、数年単位で事務的に粛々と乗り換える感じだ。しかし、現在利用しているPCは事情から、自作PCショップで流通しているパーツで構成されており、ワークステーションというより「自作Xeonパソコン」といった体裁になっている。

当時忙しく、PCショップに組み立てを依頼した「自作」ならぬ「他作PC」だ。グラフィックボードも「Quadro」ではなく「Geforce」だったりするので、ますますゲーミングPCとの差異が小さい。

CPUスペック

Xeon E5の1世代前のミドルロークラス「Xeon E5 2640 V3」

今回テストするCPUは「Xeon E5 2640 V3」となっている。最新の「V4」シリーズの1世代前のCPUだ。単に購入が2015年末という事情で3年近く前のCPUだが、現行の「V4」世代とは大きな違いはない。

下記はデュアルXeon E5V3シリーズのラインナップの一部。様々な需要があるため、多数のモデルバリエーションとなっている。

「2640」シリーズはXeon E5ではミドルローに位置する。クリエイティブ用途なら「2687W」あたりが良さそうだが、2つで60万円、TDPも160Wでデュアル合計320Wと価格も消費電力も跳ね上がる。妥協して当時2つで26万円程度で買える2640V3に収まった次第だ。

ハイクラスになるとCPU1つで70万円、2つセットだと140万円に達するXeonシリーズ。基本的に投入したコストを回収できるという事で回っている市場であり、このあたりもホビー用途のゲーミング用CPUとは事情が異なる。

CPU仕様比較

スペックを見ると、1CPUのコア数は8コア16スレッドと「Ryzen 7 1800X」と変わらない。2つのCPUが搭載できるデュアルXeonなので合計では16コア32スレッドの動作となっている。

i7と比較するとTDPが低く、16コアのフルロードでも空冷で冬場なら40℃台、夏場でも50℃台で運用可能になっており、長時間、高負荷でも堅牢に動作する設計になっている。

レンダリングしたまま就寝・外出したり、フルロードに近い状態が続くZBrushの様なヘビーソフトと大量のアプリの同時実行しながら長時間・安定動作する事を期待してチョイスした。

定格クロックは2.6Ghzと非常に低い

ターボブーストが有効で、最大では3.4Ghzの動作となっている。各コア数に対する動作クロックは以下のとおり。i7相当の4コア8スレッド状態では3.1Ghzとなっており、最新世代のCPUと比較すると乖離は大きいが、当時のマルチ最速i7の5960Xと比較すると、そこまで大きなギャップはない。

CineBench R15

まずCPUの性能を一般的なAMD Ryzen、intel Core i7と比較しながら見ていく。勿論「Xeon」の価値はここから示すベンチマークでは測れない部分にあるのだが、今回はゲーミング性能という事であえて一般的なベンチマークで図っていく。

マルチスレッド

マルチスレッド性能は定格では3年前のモデルとはいえ未だ見劣りしない。デュアルXeonも最新のハイエンドクラスになると「5000」以上のスコアになるのだが、「Xeon E5 2640 V3」だと「2200」程度でそこまでのインパクトはなく、ミドルロークラスといったところだ。

比較CPUのi7、R7-1800XはOCによってスコアを引き上げれるが、定格低温で高いマルチスレッド性能を長時間、安定して発揮できる点もXeonの特徴でもある。

シングルスレッド

シングルスレッドは現行CPUと比較すると大きく劣る。当時の競合になるCore i7 5960X以下で、過去のメジャーなCPUに例えるとCore i5-2600Kやi7-2600K相当となる。これでもXeon E5シリーズの方では速い方で、コア数が増加した型番では更に数値は低い。

一応XeonもベースクロックOC可能だったりする。マージンも大きく取られているので、底上げは期待できるが、堅牢・安定を求める作業用PCでオーバークロックはあり得ないだろう。

CPUコア温度の推移

サーバーグレードだけあって、CPU温度は低い。以下はCinebench中のCPUのコア温度の推移。50℃越えた時点で終了している。

数時間全コアCPUの負荷が高まるZbrushなどの作業でも60℃台を見たことがないので、この辺はTDP90WクラスのXeonの強みだろう。安心して長時間のCG作業や起動しっぱなしのレンダリング作業が行える。

GPUゲーム系ベンチマーク

ゲーム系のベンチマークを見てみる。手持ちのXeonとCore i7-6700K、3種のNVIDAグラフィックボードの組み合わせの結果となっている。高いマルチスレッド性能、非常に低いシングルスレッド性能はどのような影響が出るのだろうか。

 3DMark TimeSpy

DirectX12時代のゲーム性能指標となるTimeSpy。GTX1080TiとGTX1050では比較的マルチコア対応が進んでいるTimeSpyでXeon E5-2640V3の方がCPUテスト分リードしている。GTX980TIのSLI環境では逆転しているが、未だ明確な差は出ていない。

3DMark FireStrke

全体的にXeon E5-2640V3の方がスコアが伸び悩んでいる。フレームレートが高くなるにつれて差が顕著に現れており、SLI環境では10%近い差が出ている。低いシングルスレッドがCPUボトルネックとなっている傾向が浮かび上がってきた。

FF14蒼天のイシュガルドベンチ 4K 最高画質 DirectX11

比較的古めのゲーム性能指標となるFF14ベンチ。4Kなら誤差に収まっている。現行ハイエンドのGTX1080TI程度ではCPUの前にGPUが先にボトルネックになっている感じだ。

SLIに関してはCPU問わず、3DMarkと比較すると対応が不完全な傾向は見られる

FF14蒼天のイシュガルドベンチ フルHD 最高画質 DirectX11

ここでは明確にE5-2640V3がボトルネックになっている結果が出ている。GTX1080TIでも2万以下という寂しいスコアだ。3DMarkと同様にフレームレートが高くなればなるほど、CPUのボトルネックが顕著になっている様に見える。

以下はGPUとCPUの温度推移。GPUはGTX1080TIのFE版というだけあって、凄い温度に達している。概ね82,3℃程度をターゲットに推移しており、このためクロックも抑制される。

CPU温度はFF14ベンチだと負荷が軽すぎて50℃すら超えていない。

実際のゲームでのパフォーマンス

以下はゲーム内のフレームレートの推移をGTX1080TIを用いて、E5-2640V3とi7-6700Kで同一設定にて比較した結果だ。実際のゲーム動作でも概ねベンチマークの結果を裏付けるような挙動となっている。

4Kゲーミング ではフレームレートに明確な差は出ない

4Kでは両者殆ど差がない。GTX1080TIでは最高画質4Kの60フレームは未だ荷が重く、多少の画質調整が必要となる点は変わりない。プレイしても違いは殆ど気づかない。

CPUがボトルネックになる前にGPUが先に根を上げている様だ。4K最高画質60フレームを実現するにはGPUの更なる進化が待たれる。

Full HDの高フレームレートで明確な差が出る

フルHDでも「DarkSoul3」の様な上限が60フレームをターゲットとしたタイトルでは差が出ない。しかしフレームレートのリミッターを解除できるゲームにおいては上限値では差が出ている。

高いフレームレートでは、「E5-2640V3」のシングルスレッド性能がボトルネックになりフレームレートが頭打ちになる様だ。概ね90フレームを超えた辺りから顕著になっている。

CPU利用率

各ベンチマークとゲーム中のCPUの利用率を見てみよう。昨今のゲームプログラムは32スレッド中何%程度活用されているのだろうか。

CPUの進化に合わせた最適化が進む海外ゲーム勢

「ウィッチャー3」,「バットマンアーカム」の両ゲームともCPUは30%程度は利用している。とくに「ウィッチャー3」は大量のAIを駆使しているためか、ピークでは40%に達しており、32スレッド中14スレッド近い利用率だ。オープンワールドクラスの海外AAA級ゲームではCPUの進化に併せてマルチスレッドの有効活用が進んでいる事が伺える。

緑=GPU 赤=CPU

ウィッチャー3 4K

バットマンアーカム 4K


*GPU利率率が100%になっていないのは、計測中に上限を60フレーム設定にしているためと思われる。ウィッチャー3ではFE版という事でクロック制御も働いてると想定される。

PS4を基準としている様に見える国内マルチゲーム

「ダークソウル3」は敵を大量に集めて、樽や壺などを壊しまくっても、CPU負荷には一定に上限がある模様。15~18%で推移しており、PS4のスレッド数を上限としてフル活用している感じだろうか。

緑=GPU 赤=CPU

ダークソウル3 4K

昔ながらのシングルスレッド重視のFF14ベンチ

FF14のベンチマーク中はCPU利用率は非常に低い。シーンによって上下するが、傾向としては昔ながらのシングルスレッド重視という設計のようだ。ベンチマークという事もあると思うが、32スレッドベースでみると、CPUはガラガラの状態になっている。

緑=GPU 赤=CPU

FF14 4Kベンチマーク

FF14 FULL HDベンチマーク

FF14ベンチのFullHDでは殆どCPUもGPUも利用されていないという結果となっている。上述のFF14ベンチFull HDにおいて、低いスコアの原因はコレのようだ。このためベンチマーク中でも消費電力も控えめという奇妙な状態に陥っていた。

1スレッドが100%に達しているが他はスカスカだ。メインとなるCPUスレッド1本がボトルネックになると他のスレッドも回らないプログラムの構造になっている模様。

CPUのシングルスレッド1本に集中させているため、ここが引っかかると、ハードウェア全体のパフォーマンスを発揮できていない状態になる様だ。メモリクロックもXeon E5 2640V3だと「DDR4 1866」と低いのもFF14ベンチだと厳しいのかもしれない。

多コア、低クロックCPUにおけるゲーミング性能

60フレームなら4K、FullHDともにボトルネックになってない

16コア32スレッドで定格2.6Ghzという多コア・低クロックのゲーミング性能を測ってきた。4Kで60フレームをターゲットとした場合はGTX1080TIですらGPU性能が先にボトルネックになり、CPU性能のボトルネックは目立っていない。

4Kでは「GTX 1080TI」でも未だGPUが力不足といった所で、ゲームのプレイに大きな差異はなかった。同様にFullHDでも60フレームを上限とした場合はE5 2640V3のシングルスレッド性能でも十分余裕はある。

120フレームなど高FPSをターゲットにすると厳しい

しかしフルHD、120フレーム等の高いフレームレートをターゲットとした場合、CPUのシングルスレッド性能がボトルネックとなり、FPSが頭打ちになっている。

高リフレッシュレートのゲーミングモニタを用いて、解像度や画質よりフレームレートを優先する様なゲーミングスタイルの場合は、Xeon E5 2640V3ではシングルスレッドが追いつかない。もっと高いクロック周波数のCPUが必要になりそうだ。

意外と動く低クロック・多コアCPUによるゲーミング

元々、CG作業用PCとして利用している本Xeon機ではゲームをプレイする事は想定していなかったが、試してみると普通にプレイする位なら十分に動作してしまった。

60フレームをターゲットにしたプレイスタイルであれば、定格2.6Ghzという低いクロック周波数でもターボ・ブーストと相まってボトルネックにはならない様だ。勿論ゲーミングPCとしてみるとコストパフォーマンスが悪すぎるが、兼用できるという選択肢が増えるのは有り難い。

Core i7と比較するとゲーミングで厳しいとされているRyzenだが、今回試したXeonよりシングルスレッド性能は遥かに高い。通常のゲームプレイスタイルであれば、Ryzenの性能があれば殆ど問題がないというのも納得ではある。

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