真のローエンド「Geforce GT 710」レビュー。3,000円で買える超省電力グラボのベンチマーク・ゲーム性能

数年ぶりにラインナップの更新があったNVIDIAのローエンドGPUクラス。しかし5,000円未満で買えるレンジは未だ「GT710」が最新となる。長い期間、この価格帯を支えてきた「Geforce210」が市場から消えつつある今、3,000円前後で買えてしまう「真の現役ローエンド」といえる「Geforce GT710」はどの様なグラフィックボードなのだろうか。

「Geforce GT 710」の仕様

現在最新の「GT」を関する10番代のGPU

「Geforce GT 710」は「GT」のNVIDIAグラフィックボードのラインナップで10番代を冠する最新GPUだ。700番代なので古いイメージがある「GT710」だが、2016年1月発売開始と意外と新しいGPUとなっている。

コアは古く、製造プロセス28mmのKeplerアーキテクチャを採用し、シェーダー数が「GT730」から200近く削減されている。2016年にDDR3版、2017年にGDDR5版が投入されており、現在のローエンドクラスを支える現役ラインナップだ。

市場に流通しているのは殆どKepler版となるGT710

リネームの多い、ローエンドクラスのGPUだが、「GT710」は「一応」Keplerコアの新GPUだ。メーカーPCのOEM品では40nmのFermi世代GPU「GT610」をリネームしたFermi版「GT710」も存在しているらしいが、自作市場ではお目にかからない。

前モデルとなる「Geforce GT 610」は「Geforce GT710」の登場で完全に終息商品となっている。価格も3,000円の「GT710」と殆ど変わらず、スペックも大幅に下回るため、「GT610」は選択肢から外して良いだろう。

最安値クラスを支えるDDR3版GT710

2017年に投入された最新GPU「GT1030」は未だ9000円前後の価格で流通しており高い。5,000円前後の価格帯は「GT730」が担っており、「GT710」はここから更に低い「3,000円前後をカバーしている。GDDR5「GT710」は「GT730」と価格差が縮まるため、市場の存在価値としてはDDR3版がメインだ。

競合製品はリネームを繰り返すAMDの「HD6450」となっており、ライバルの方が少し安いが両者の価格差は小さい。どちらも新品の製品が全国で流通している現行ラインナップだ。

玄人志向 ビデオカード GF-GT710-E1GB/LP

今回レビューに用いるグラフィックボードは玄人志向「 NVIDIA GEFORCE GT710搭載 PCI-Express グラフィックボード GF-GT710-E2GB/LP」となっている。流通量も多く、GTX710の中では最安値のクラスのベストセラー商品で地方の店頭でも見ることが出来る。


玄人志向 ビデオカードGEFORCE GT 710搭載 ロープロファイル 空冷FAN GF-GT710-E1GB/LP(amazon)

インターフェース形状:PCI Express(2.0) x16(スピードは×8)
コアクロック:954MHz
メモリクロック:1,600MHz
ビデオメモリ:DDR3 1GB
映像出力:HDMI/D-SUB/DVI-D
補助電源コネクタ:不要
カードサイズ:14.4cm×6.891cm×1.81cm
専有PCIスロット:1スロット


外観・形状の特徴

付属品

3000円程度のローエンドながらもロープロファイルブラケットが2つも付属している。単品でも2つで1,000円程度の価格なので、かなりお得感がある。

その他、マニュアル、ドライバディスクと一般的なビデオカードと変わらない付属物だ。しかし梱包は簡易でコストを限界まで切りつけている事が伺いしれる。

外観

1スロットかつロープロファイルという事で非常にコンパクトなサイズ。シルバーとブルーのツートンカラーが結構際立っており、安価ながらも開封後に取り出した際の満足感は高い。

LowProfile対応という事まおり、アナログVGA端子 D-SUBは基盤から取り外せる構造になっている。ヒートシンクとファンのカラーも相まって意外にもチープ感が小さく、ローエンドながらも良くまとまった外観といった感想だ。

カードサイズ

一般的なサイズのグラフィックボード「GT970」のリファレンスと比較すると、コンパクトさが際立つ。内部の増設エリアがシビアなメーカ製PCでも収まるケースは多そうだ。

メーカー公称サイズは「14.4cm×6.891cm×1.81cm」。実測でも差異はなく、PCI Expressのスロット形状ほぼ限界まで短くなっている。

このサイズが収まらないケースはグラボの増設事態を諦めたほうがよいだろう。

映像端子構成

古いPCの延命目的が用途として多いためか、昨今のグラフィックボードでは珍しいアナログVGA D-SUBとDVI-D端子が備わっている。勿論HDMIも備わっているが、バージョンが2.0ではないので、解像度は3840×2160(4K)の場合、30hzに限定される。DVI出力時では2560×1600で60hzに対応しているので、フルHDかWQHDモニタまではカバーしてる。

D-SUB端子はプラケットから取り外せる構造になっている。ロープロファイル構成で全ての端子を用いたい場合は2スロット占有で3つ全て使える。D-SUB端子のみを用いる場合は、2スロット構成で固定するか、固定せずにぶら下げるしかない。

GPUクーラーと玄人志向シール

発熱の低いGPUなのでヒートシンクにオマケ程度に小径のファンが搭載されている。ファン中央には自作ユーザーからは評判が良くない「玄人志向シール」が貼られている。不要だがメーカーが付けたいのなら仕方なく、この価格なら文句も言えない。

補助電源なし・バックプレートなし

このクラスのGPUは勿論バックプレートなどは存在しない。補助電源も不要でポン付けするだけでグラフィックボードの増設は完了する。

1slotに収まっており干渉の心配はなさそうだが、一応ファンの吸気を完全に塞ぐのは避けた方がよさそうだ。

ゲーム系ベンチマーク

では「Geforce GT710」のゲーム系ベンチマークを見ていこう。比較対象としてライバルの「Radeon HD6450」,上位GPUの「GT730」だけでなく「Core i7 6700」のCPU内蔵グラフィック「inte HD 530」も加えている。

3DMARK  timespy

最新DirectX12のゲーム性能指標となるTimeSpy。「GT710」は起動するのが精一杯といった具合で、スコアも200を切っておりCPU内蔵グラフィック以下だ。デモ中も完全に紙芝居状態で状況を把握する事すら困難。最新ロークラス「GT1030」との差は価格以上に大きい。

ライバルのHD6450はDirect X12未対応で起動すらしなかったので、このクラスのGPUには荷が重すぎるベンチマークと言えるだろう。

3DMARK  Firestrike Full HD

現在主流のDirectX11のゲーム性能を図るフルHD「FireStrike」でも傾向は大きく変わらない。intel HD530にすら追いついておらず、2015年以降のPCに本GPUを増設するとグラフィック性能は低下する可能性が高い。

ライバルのAMD HD6450と比較すると倍近い性能を見せており、ローエンドのベンチ対決では一応NVIDIAに軍配があがっている。

FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者

前世代のPS3クラスゲーミング性能を図るFF14ベンチ。最高品質ではフルHDでも「動作困難」判定となっており、やはり内蔵GPU以下だ。GTX1050TIとは10倍以上の差となっており、価格差以上の性能差を示唆している。

解像度を1280×720とPS3相当にして、画質オプションを下げると、何とか「やや快適」判定を得る事ができた。ゲーム本編全てを本GPUで楽しむ事は厳しそうだが、特定の遊び方なら何とかなるかもしれない。

国産ライト ネットゲーム 4Kベンチマーク

軽量な国内ネットゲームのベンチマークを見ていく。ここまでは全てのゲームが動作困難である事を示されたGT710。負荷が低いゲームであれば何とかならないだろうか。

ドラゴンクエストX ベンチマーク

左:FullHD最高画質 右:4K最高画質

フルHDでは最高画質ではGT710は厳しい「やや重い」判定。しかし解像度を1280×720に変更して、画質オプションも標準まで下げると「とても快適」判定を得る事ができた。ドラクエ10を家庭用ゲーム相当のオプションに落とせば「GT710」でも十分遊ぶ事が出来そうだ。

ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク

フルHDの最高画質設定「6」は相応に負荷も高く「GT 710」は全くスコアが伸びない。内蔵グラフィックの30%に留まっており、厳しい現実を突きつけられる。エントリークラスの新GPU「GT1030」のスコア伸びは目覚ましい。

設定1 1280×720

設定を限界まで落としてみると、スコアが6万近くに達する跳ね上がり方を見せる。グラフィックに拘らなければ、「PSO2」は「GT 710」でも十分快適に遊べそうだ。

GPGPUベンチマーク

動画や3Dなどクリエイティブソフトで用いられるGPGPU性能を図る「CompBench2.0」。やはりiGPU以下の性能となっており、エンコード速度の向上やプレビュー速度の高速化といった用途ではGTX710は期待に答える事はできないようだ。

CPU内蔵グラフィックとの比較

CPU内蔵グラフィック(iGPU)に絞って「GT710」と比較したグラフが以下。一応第2世代Core iシリーズに実装されている「intel HD2000」や「inel HD3000」からは2倍から3倍程度のグラフィックパフォーマンスのアップが期待できる事が分かる。

しかし第三世代のCore iシリーズに実装されている「intel HD 4000」付近から差が殆どなくなり、最新の第7世代、第8世代の内蔵グラフィック「intel HD 630」には完全に負けている状態だ。「GT710」はCore i3-2100、Core i5-2500、Core i7-2700あたりの古いPCからのアップデートが限界といったところだろう。

実際のゲームプレイのFPS計測、性能比較

ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のゲームと、数年前のPS3・Xbox360世代のゲームのFPSを計測してみた。

Core i6-6700内蔵グラフィックのHD530に加えて、最新エントリークラスのGPU「GT1030」、「RX550」との比較を中心に見ていく。

PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080

Witcher3 (ウィッチャー3)

現時点で最高峰のオープンワールドRPG。やはり「GT710」では全く歯が絶たず、最低画質でも起動して計測する事が難しいくらいだった。「GT1030」はアベレージでも30フレームに達しており、何とかプレイできる水準に達している。

For Hornar (フォーオナー)

こちらも同様で「GT710」はiGPU以下となっている。GT730でもプレイは困難だが、GT1030、RX550は十分遊べる水準までパフォーマンスアップしている事が分かる。

DarkSouls3(ダークソウル3)

PS4とのマルチタイトルのなかでも比較的軽量な部類のタイトルだが、GT710は10フレームにも達しない。ここでもGT1030,RX550では十分遊べる平均30フレームを超えており、特にGT1030の安定感は素晴らしい。

Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)

ここでは内蔵グラフィックのHD530が起動すらしなかった事と比較すると「GT710」は一応「起動」しており、外付けの「dGPU」の維持を見せている。とはいえ、GT1030との差は価格差以上に大きい。

PS3、Xbox360世代のFullHDゲーミング:1920×1080

最新のゲームでは全くプレイできなかった「GT710」。では数年前のPS3世代のゲームではどうだろうか。

METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)

フォックスエンジンを用いたPS3、PS4の縦マルチタイトルで比較的重い。PS4マルチタイトル群と傾向は大きく変わらず、プレイは不可能と見て良いだろう。最新ローエンドGPUのGT1030、RX550は60フレーム近くに達しており、かなり快適に遊べる。

LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII(FF13 ライトニング リターンズ )

和製RRGの代表作FF13。負荷は軽いタイトルだが、やはりプレイは厳しい。内蔵グラフィック「intel HD530」でも遊べたタイトルだけに厳しい結果と言えるだろう。

BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)

GT710が厳しい事に代わりはないが、GT1030とRX550の高いフレームレートが光る結果となっている。Pascal世代、Poralis世代の最新GPUであれば、このクラスのゲームはローエンドでも余裕の様だ。

Tomb Raider 2013(トゥームレイダー2013)

GT710ではプレイ不可能は傾向に変化はない。GT730で何とかプレイ可能といったところで、GT1030は伸び率が低い。反面ライバルのAMD「RX550」は高いフレームレートを示している。恐らくNVIDIAのHairWorkが逆にGT1030の足を引っ張っていると思われる。

Skyrim (スカイリム)


今回計測した中で唯一「GT710」でも遊べそうなタイトルがスカイリム。グラフィックオプションを低下させる事で30フレームが狙えそうだ。とはいえ快適とは言い難いのであえてGT710で遊ぶ必要はないだろう。

基本的にゲームは厳しいGT710のGPU性能

PS4世代のゲームだけでなく、PS3,Xbox360世代のゲームすらGT710には荷が重い様だ。GT1030クラスになれば一気に遊べるゲームの幅が広がるので、ゲームも視野に入れるなら1スロットかつロープロファイル限定なら「Geforce GT 1030」一択となる。

GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動

GPU-Z情報

GPUコアはGK208。製造プロセスも28nmと一世代古い。メモリはサムソン製のDDR3。一応CUDA,PhysX、DirectComputeにもチェックが入っている。

GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動

以下はアイドル時と高負荷時のGPU-ZのSensors情報。GPU温度は極めて低い。

高負荷時のコアクロック・GPU温度・ファンスピードの推移

下記のグラフはFF14ベンチの起動からベンチマーク終了後にアイドルに戻るまでのGPUクロックと温度とクーラーファンの挙動グラフ。クロックはアイドル時135Mhzとフルロード時の953.7Mhzの2段階制御の様だ。

GPU温度はピークでも45度程度でファンレスでも十分いけそうな範囲に収まっている。ファンスピードは制御されておらず40%一定。煩くはないが、制御できればさらに静音になりそうだ。この辺はコストカットのトレードオフとして止む終えないだろう。

消費電力比較

低消費電力が期待される「Geforce GT710」。ここからは省電力性にスポットを当ててみていく。

システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。(左:アイドル 右:フルロード)

アイドル時のシステム全体の消費電力

前世代にGPUとだけあって、アイドル時の消費電力はやや高い。Pascal最新世代のGT1030を上回るだけでなく、上位GPUと余り差がない。GT730すら上回っている原因はハッキリしないが、測定誤差かコストダウンの何らかの影響が与えてる可能性もある。

高負荷時のシステム全体の消費電力

アイドル時とうってかわって高負荷時は「GT710」は素晴らしい結果を示している。グラフィックボードを付けていない「inte HD530」と大差ない消費電力に留まっており、高い省電力性が期待できる。

恐らく高負荷時は内蔵グラフィック「intel HD530」の場合、CPUに高い負荷、電力がかかるため、その分高まる消費電力が大きいためと推測される。

高負荷時の消費電力削減という観点でみると「GT710」はトップ性能をいって良いだろう。ただし性能はintel HD530以下なので、パフォーマンスとアイドル時の消費電力向上のトレードオフとなる

「Geforce GT 710」レビューまとめ

3,000円で買える最安値のGPU「Geforce GT710」はGPU性能という面では最新のCPU内蔵グラフィックを下回り、期待できなさそうだ。あくまで古いPCの延命用という用途として捉えておいた方だ良いだろう。

しかし、Ryzenなど内蔵グラフィックを実装していないCPUもあるので、ゲームやクリエイティブ用途、動画を目的としない用途であれば「とりあえず映る」グラボとして「GT710」で繋ぐのも悪くないかもしれない。

また非常に安価なので「保守用の部品」として所有しておき、メインPCがトラブル・不調になった際の「原因の切り分け用」として利用するのも悪くなさそうだ。

「GT710」は設計が古く、映像端子が4K 60hzに対応してないのも用途を狭めている。ゲーム目的でなくとも4K動画や4Kデスクトップ作業が目的となるのであれば、1スロットかつロープロファイルモデルのある「GT1030」をお勧めだ。

近年は内蔵グラフィックの進化が目覚ましく、このクラスのGPUやNVIDIA・AMD双方積極的ではない。しかし、内蔵GPUを搭載してないCPUや内蔵GPUで収まらないマルチモニタなど一定の需要は失われいないと思われる。

DisplayPort1.4やHDMI2.0b に対応した最新ローエンドGPU「GT1010」の登場に期待したい。