封印されし力を開放した「GeForce RTX 2080」レビュー。レイトレ、DLSS、ゲーム性能と消費電力をベンチマーク

遂にRTXシリーズの「レイトレース」と「DLSS」機能が一般開放された。発売直後は高い評価を得る事ができなかった「Geforce RTX2080」は新たな力を得て、ゲーマーに新しい未来を見せてくれるのだろうか。今回はNVIDIAの最新GPU「Geforce RTX2080」を新機能とゲーミング性能、消費電力にスポットを当ててレビューしていく。

「NVIDIA Geforce RTX2080」の仕様

グラフィックの再創造を謳った新アーキテクチャ

「RTX2080」はNVIDIAのTuringアーキテクチャを用いた最新GPUだ。前世代の「GTX1080」から実に2年の年月を得て、2018年9月にようやくデビューとなった。製造プロセスは12nm FinFETと微細化され、メモリも「GDDR5」より高速な「GDDR6」を採用。TPDは全体的に増加気味だ。

Turingアーキテクチャの最大の特徴は従来のユニットに加えて、新たにリアルタイムレイトレーシング アクセラレーターとなる「RT コア 」と人工知能(AI)に必要な演算を高速化させる「Tensorコア」が追加された。その他に演算器の並列動作による最適化やキャッシュ性能の向上など、前世代から改良が加えられた。

TuringのTU102のブロック図を見ると「RTコア」と「Tensorコア」が大きな面積を締めている事が確認できる。このためPascal世代と比較するとダイサイズは1.6~1.7倍と肥大化している。NVIDIAはTuring世代で「グラフィックの再創造」を謳っており、ゲームグラフィックパイプランの革新をハードウェア面から促そうとしている様だ。

「RTX 2080」と競合GPUの価格推移

2018年9月から発売開始されたRTXシリーズだが、初値価格が従来の「Geofrce GTX」と比較すると大きく値上がりした。「RTX2080Ti」は衝撃の20万円前後という値付けとなり「GTX1080Ti」の倍以上だ。「RTX2080」も12万円前後でスタートしており、「GTX1080」の初値と比較しても2~3万円は高い滑り出しとなった。

しかし、発売から2ヶ月ほどで両GPUともに3万円近く値下がりしており、「RTX2080」は10万円を切る事も珍しくない。最安値で付加ポイントも考慮すれば「GTX1080Ti」と比較しても決して高すぎない水準になりつつあり、現在も値下がりは進行している。

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RTX2080の基礎GPU性能

詳細なベンチマークを見る前に、まずは「Geforce RTX2080」の基礎GPU性能を把握しておこう。(他のベンチマーク、各種ゲームのFPS比較は後述している)

3DMARK Firestrike Ultra

現行の4Kゲームの性能指標となるDirectX11を用いた「Fire Strike Ultra」。「RTX2080」はコア数2944ながらも、コア数3584の「GTX1080Ti」に近い性能を示している。過去のGPUの性能飛躍率と比較すると控えめだが、微細化+演算最適化とGDDR6によるメモリ高速化分は確実効いている様だ。

RT Coreを活用したレイトレーシングの性能

レイトレーシングの概要

レイトレーシングとは光の反射をシミュレートし、その結果からグラフィックを生成するレンダリング技法である。CGの世界では数十年前から一般化されており、90年代後半からアマチュアが用いるCGソフトでも活用されている古典的な技法だ。

リアルな反射、屈折表現が可能な反面、計算が複雑となるため、CPU処理では膨大レンダリング時間を必要とした。6年ほど前からCPUの代わりにGPUで演算する事で、計算時間を大幅に短縮するワークフローが一般化し、CG制作の世界ではプレビュー用にGPGPUが活用されている。

TuringのRTコアは、このレイトレースの処理をハードウェアで高速化する事ができる。勿論、プリレンダのような全てを正確に計算するわけではないが、ゲームの動作として「現実的な負荷と時間」でリアルタイムに処理する事が可能とされている。

またRTコアは反射、屈折表現だけでなく、シャドウやAO表現、GI(グローバルイルミネーション)の表現力アップにも利用できる。平たく言うと「ゲームグラフィックを更に進化させる事が出来る新機能」と見て問題ないだろう。

BF5のおけるレイトレース の例と比較

バトルフィールドVでRT Coreを利用したリアルタイムレイトレーシング機能を試せるので、従来のグラフィックとレイトレーシングを有効化したグラフィックの比較をしてみた。

・レイトレーシング オフ

プレイヤーの前のドアにガラスが貼られているが、環境マッピングで擬似的に周囲の景色を写しているだけなので、プレイヤーは描写されず反射していない。手前にガラスがあるはずだが画面を通して伝わらず、表現としては少し弱い感じだ。

・レイトレーシング オン

レイトレーシングによって、プレイヤーの像がガラスに反射して写されている事が確認できる。勿論、プレイヤーが動作すると反射像も動く。この表現によって、手前にガラスがあるという事がゲーム画面を通してプレイヤーに伝わってくる。

・レイトレーシング オフ

水面には周囲の環境マップが写り込んでおり、水には見えるが現実世界とは違うCGである事がひと目でわかる。スクリーンスペースリフレクションを用いる事で近い表現は可能だが、画面外の表示物は反射されないため、動くと違和感が出る事が多い。

・レイトレーシング オン

水面に船や遠景の町並みが映し出されている事が確認できる。画面外に船を外しても、水面の映り込みが追随しており、リアリティは高まっているように見える。従来のフェイク技法でも工夫すれば不可能ではないが、GPUリソースを大きく消費し、工数も肥大化する。専用ハードウェアでシンプルかつ高速に表現できるのであれば、ユーザー、開発側双方のメリットは大きい。

*画面外でレンダリングされてない船も水面に描写されている

レイトレースの有効化条件

現時点ではRTXのレイトレースをPCで実現するためには準備が必要となる。対応したグラフィックボードはもちろん、最新のWindows10(windows october 2018 update)とDirectX12を有効化した上で「DXR有効」をオンにする必要がある。

レイトレースのリフレクションの品質は上記より調整できる。現在はリリース直後という事もありNVIDIAから「最高」→「低い」に変更を推奨するというアナウンスもある。

レイトレーシング有効時のパフォーマンス

上記はレイトレースの性能を図る「3DMark PortRoyal」の結果。流石にRTX2080Tiには及ばないが、現行の最速ハイエンドの70%程度のパフォーマンスを「RTX2080」は発揮できることが伺える。

以下は「BF5」でレイトレースを有効化した場合の各解像度のゲーミングパフォーマンス。「RTX2080」は4K最高画質で「BF5」を遊べる性能を持っているが、レイトレースをオンにすると10フレーム程度までFPSが落ち込んでいる事が確認できる。

レイトレーシングを有効化した状態だとWQHDでも快適とは言い難く、フルHDでなんとか30フレーム維持といった所だ。グラフィックの高品質化に大きな貢献をしてくれるレイトレース機能だが、現時点ではパフォーマンスが大きく犠牲となる。品質とFPSのトレードをオフを踏まえて利用する必要がありそうだ。

*レイトレースはエリアやシーンによってフレームレートは大きく変化する。軽いエリアなら上記より大幅に高いフレームレートを維持できる。

Tensor Core を利用したDLSSの性能

DLSSとは

DLSSは「Deep Learning Super Sampling」の略で深層学習を用いた超解像アンチエイリアシング的な手法だ。別サーバーで実際に高解像度でレンダリングした学習結果を元に「Tensorコア」でポストエフェクト的に処理し、リアルタイムでアップスケールと高画質化を行い、ノイズやジャギーを軽減する機能となる。

FF15のおけるDLSSの例と比較

現時点ではFF15ベンチマークがいち早くDLSSに対応し、その効果を確認できる。パフォーマンスと他アンチエイリアシング手法との品質差をあわせて確認していこう。

・FXAA

FXAAはテクスチャーのジャギーにも効果が高く、PS3時代に広く普及した。前時代のレンダリングや詳細度では十分な効果があったが、現世代のゲームではジャギーが目立つ。

・TAA

時間軸で過去のフレーム参照する事で更にジャギーを低減する事ができるTAA。DirectX11世代で利用が広まったが、この手法でもジャギーは低減しきれていない。特に髪の毛の輪郭は許容し難いレベルだ。

・DLSS

Tensorコアを用いたDLSSだと、全体のフォーカスが甘くはなっているが、他のAA手法で見られた髪の毛の酷いジャギーは殆ど確認できないレベルまで低減されている。しかし瞳や帽子のフチのディティールは潰れ気味で情報量は若干低下している。

・FXAA

従来型のFXAAはPBR(物理ベースレンダリング)との相性が悪い。物理的に正しい描画はハイライトが発生しやすく、動くと酷いチラつきが発生する。全体的にディティールは維持できているが、ノイズが多い映像といった印象になる。

・ TAA 

ディティールを維持したまま、FXAAで発生していたジャギーが大幅に軽減されている事が確認できる。カーナンバーの詳細感やランプ付近のスリット形状も維持されており、4Kならではの高精細なグラフィックが保たれている。

・DLSS

全体的にディティールが潰れており、4Kの高精細感は大きく損なわれている事が確認できる。ランプ近くのスリットでは形状が大きく変化しており、WQHDなどから4Kにアップスケールしている感が出ている。しかし、全体的にジャギー感は軽減しており、注視しなければ4K品質として違和感はない。

DLSSの有効化条件

DLSSはレイトレースのような制限は少ない。RTXシリーズのグラフィックボードであれば、カスタム設定から「DLSS」をオンにするだけで有効化する事ができる。この場合アンチエイリアス項目はグレーアウトされる。ベンチマークのプリセットは解除され「カスタム」になる点は留意が必要だ。

DLSSの性能と効果

以下はFF15ベンチをDLSSとTAAで比較したグラフ。DLSSを用いる事でフレームレートが大幅に向上している事が確認できる。重いベンチマークなので、60FPS堅持とまではいかないが、十分実用的にプレイできるレベルに達していると言って良いだろう。

以下は各解像度とアンチエイリアス手法による結果を比較したグラフ。DLSSを利用する事でTAA,FAAAと比較して20%~30%程度高速化できている事が確認できる。興味深い点はアンチエイリアスをオフにした状態とDLSSをオンにした状態を比較すると、DLSSのほうが高いフレームレートが出ている点だ。

超解像度技術という事でDLSSは4Kより小さな解像度でレンダリングし、それを4Kに引き伸ばして表示している事が裏付けられる結果に見える。原理的にはRTXシリーズの下位グラフィックボードでも、超解像度技術を用いてFullHDやWQHD環境下でのパフォーマンスの向上も不可能ではなさそうだ。

外観・形状の特徴

「GeForce RTX 2080 VENTUS 8G OC 」レビュー

さて、大まかな性能の確認を終えたところで、より詳細にRTX2080を見ていこう。今回レビューに用いるグラフィックボードはMSI社の「GeForce RTX 2080 VENTUS 8G OC」 だ。上位の3連ファンタイプと比較すると低価格かつコンパクトで、ミニタワーケースでも運用しやすい。


MSI GeForce RTX 2080 VENTUS 8G OC(amazon)

インターフェース形状 : PCI Express(3.0) x16
コアクロック:ベース1,515MHz ブースト1,710MHz
メモリクロック:14,000MHz
ビデオメモリ:GDDR6 8GB 256bit
映像出力:HDMI2.0b×1 / DisplayPort 1.4×3 /USB typeC×1
補助電源コネクタ:8ピン×1 6ピン×1
専有PCIスロット:3スロット
カードサイズ:268mm×114mm×50mm
推奨電源容量:650W以上


付属品はマニュアル、ドライバとシンプル。ハイエンドらしく梱包はしっかりしてる。補助電源ケーブルやDVI変換アダプタなどは付属しないので留意が必要だ。

見た目はRTX2080のFounders Editionに近い。カラーリングもブラックを基調としたシルバーという点も同様だ。

スロット厚はFE版と違い、2スロットには収まらずに3スロット目に達している。サイドにロゴが配置されているが、これは点灯などはしない。

サイズ比較

従来のリファレンスグラフィックボードと比較すると、サイズは若干大きく26.8cm×11.4cm×5cmとなっている。ハイエンドでは比較的コンパクトな部類だが、リファレンスカードからアップデートする場合は留意が必要だ。

新たにUSB Type-Cが追加された映像端子構成

3つ搭載しているディスプレイポートのバージョンは規格上では8K-60Hzや4k-120Hz、HDRをサポートする「DisplayPort 1.4a」。「HDMI」は4K/60Hz映像出力、HDR対応、横長の変則アスペクト比モニタに対応した「HDMI2.0b」に対応した最新仕様だ。

近年は端子のVerアップしか進化しなかった出力端子構成だが、TuringではVRヘッドマウントディスプレイ接続規格の「VirtualLink」用USB Type-Cが新たに追加されている。

側面には従来のSLI端子に変わり、NVLinkが配置されている。従来のSLIブリッジより広帯域接続する事ができるが、QuadroやTeslaのような単一GPU,VRAM拡張の様な動作は行わないので留意が必要だ。

デュアルファンクーラー

GPUファンはデュアルファン設計でダブルボールベアリング仕様。長期間の利用でも性能を維持するとされている。セミファンレス設計ではない。ヒートシンクは銅製。

補助電源・バックプレート

補助電源はFEと同じ8ピン×1+6ピン×1。推奨電源は650W以上。ハイエンドだがOCモデルでなければ、構成にもよるが700W程度の電源ユニットで十分稼働可能だ。

重いグラフィックボードはバックプレードがないと経年劣化による故障が怖い。当モデルも堅牢なバックプレートで強固され、ヒートシンク側からサンドイッチに補強されている。

ゲーム系ベンチマーク

では「Geforce RTX2080」のゲーム系ベンチマークを見ていこう。新世代GeforceのGPU性能は現行ゲームでも十分に発揮できるのだろうか。

3DMARK TimeSpy 

最新のDirectX12ゲーム性能を図る「TimeSpy」。TuringでDirectX 12の最適化が進んだのか、「RTX2080」は前世代のハイエンド「GTX1080Ti」を大きく超えるスコアを叩き出している。長らくDirectX 11時代が続いたが、Turing世代のGPUの普及によってDirectX12への移行が進む事が期待されそうな結果だ。

「RTX2080」はライバルのAMDの現行ハイエンド「Vega64」を圧倒しており、想定どおりのスペックが発揮できれば,Pascal世代から大きく飛躍している事が伺える。RTXシリーズは高解像度・高負荷環境において輝くGPUの可能性が高い

3DMARK  Firestrike Full HD

現在主流のDirectX11のゲーム性能を図るフルHD「FireStrike」。ここでは「RTX2080」は「GTX1080Ti」を偏差で上回っている。平均FPSも100を超え、高リフレッシュレートのゲーミングモニタを用いたプレイスタイルでも十分高い性能を発揮できる事が期待できる。

FinalFantasy XVベンチマーク

最新の和ゲー代表となるFF15のベンチマーク。非常に重いタイトルだが、RTX2080は4K最高画質でもプレイ可能な範囲に収まっている。前世代のハイエンド「GTX1080Ti」を上回り、ライバルの現行ハイエンド「Vega64」はもはや相手にならない。更に「RTX」シリーズはDLSSで20~30%以上スコアがここからの伸びる。Turing世代のGPUの潜在能力は高い。

「RTX2080」はフルHDであれば最高品質でもカンストの「とても快適」に達している。上位GPUの「RTX2080Ti」との差は小さい。フルHDでも負荷が高いゲームであれば、Turing世代のGPUは順当に性能向上を果たしている事がわかる。

FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者

4K 最高品質

PS3世代のゲーミング性能を図るFF14ベンチ。「RTX2080」は「GTX1080Ti」と同等のスペックを見せており、古いゲームでも必要十分な性能を発揮している事がわかる。高いFPSを維持したまま、高解像度で快適にゲームプレイできる事が期待できる。

FullHD 最高品質

FullHDでは負荷が低すぎて、CPUやメモリが先にボトルネックとなってスコアが伸び悩んでいる。GTX1080Ti以上のGPUは飽和スコアに達し、差が出にくい。このクラスのゲームならRTX2080はオーバースペックのようだ。

国産ライト ネットゲーム 4Kベンチマーク

ここからは国内ネットゲームのベンチマークを見ていく。これらのベンチは負荷が軽すぎてハイエンド帯ではフレームレートが飽和する。純粋なGPU性能というより、ゲーム動作を図る指標程度に捉えておいた方が良いだろう。

ドラゴンクエストX ベンチマーク

左:FullHD最高画質 右:4K最高画質

フルHDでは負荷が軽すぎてスコアを20,000、フレームレートが240を超えたあたりで飽和している。もはやGTX1050Ti以上はGPUでは差が出ないタイトルと見て良いだろう。

4K解像度だと相応にGPU性能の差がスコアに出ており、RTX2080TiはわずかにGTX1080Tiを上回るパフォーマンスを示している。DirectX9世代の古いゲームにおいても、RTXシリーズは必要十分な性能を維持できる様だ。

ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク

Radeonとの相性が悪いPSO2ベンチマーク。ここでもRTX2080はGTX1080Tiを偏差で上回り、Radeon勢を圧倒している。PSOを遊ぶならGeforceで間違いないようだ。

VRベンチマーク

VRMark Orange Room

VR性能を測る「VRMark」で「Orange Room」は軽量なVRの指標となる。負荷が軽すぎるためか、スコアは飽和しており、上位GPUでは差が出にくい。「RTX2080」も順当に飽和点に達している事が確認できる。

VRMark Blue Room

高負荷のBlueRoomではGPU性能の差がスコアとなって現れている。高負荷に強いRTXシリーズがGTXシリーズを圧倒しており、VRにおいてTuringアーキテクチャのGPUが高いパフォーマンスを発揮する事が期待できる。

SteamVR Perfomance Test

SteamVRのVR性能指標となる「SteamVR Perfomance Test」。忠実度はGTX980TiやGTX1070程度のGPU性能でMax値の「11」に達している。「GTX2080」も勿論「11」で90fps以下のフレームも「0」だ。

「テストされたフレーム」に注目すると「VRレディ」以上のGPU性能の差が浮き上がってくる。「RTX2080」は「GTX1080Ti」を偏差で交わしている。多くのVRゲームで「GTX1080Ti」と比較しても遜色ない体験が可能になりそうだ。

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実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能

ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHD/4Kゲーミング性能と、数年前のPS3・Xbox360世代の4KゲームのFPSを計測してみた。

PS4・XboxOne世代の最新ゲーム:1920×1080 & 4K

バトルフィールドV

レイトレースにいち早く対応したバトルフィールドV。ここではレイトレースをオフにした最高品質のグラフィック性能を見ている。RTX2080はGTX1080Tiとほぼ同じ性能といったところで、ベンチマーク結果と大きな差異はない。

フルHDでは平均140FPSに達し、高リフレッシュレートのゲーミングモニタを用いたプレイも高画質グラフィックで十分快適に遊べそうだ。

アサシングリード オデッセイ

現時点で超重量級のゲームとなるアサシングリードオデッセイ。最高画質ではRTX2080Tiでも荷が重く、「RTX2080」も30~40FPSを維持するのが精一杯だ。4Kで遊ぶならグラフィックオプションを調整する必要がある。

フルHDでも高画質は相応に重いが、RT2080は60フレームをターゲットに快適なプレイができそうだ。GTX1080やVega64クラスの前世代のハイエンドでは体験できない高品質なグラフィックでゲームを遊べる。

PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080 & 4K

Witcher3 (ウィッチャー3)

今世代で高い評価を得ているオープンワールドRPG「ウィッチャー3」。広大なフィールドとリアルタイムで変わるライティング、高密度のオブジェとNPCと相応に負荷の高いゲームだ。「RTX2080」は「GTX1080Ti」より高い性能を発揮しており、高解像度においてのRTXシリーズの強さを示している。

フルHDではGTX1080Tiと同等クラスで平均FPSも140に達している。ゲーミングモニタを用いた高フレームレートの快適なプレイが期待できる。

For Hornar (フォーオナー)

「RTX2080」は4Kにおいても平均60FPS以上に達しており、GTX1080Tiを上回るパフォーマンスを示している。高い負荷においてはGTX1080Tiを上回る性能を安定して出せるようだ。

フルHDではフレームレートが上がりすぎて、CPUがボトルネックになっておりGTX1070以降は平均フレームレートに大きな差は出ていない。RTX2080も飽和点に達しており、これ以上のFPSはCPUのアップデートが必要となる。

DarkSouls3(ダークソウル3)

60フレームが上限となるダークソウル3だが、RTX2080は4Kでも60FPSで安定している。従来はGTX1080Tiしか体験できなかった最高品質60フレームでのプレイが可能となっている。

フルHDでは完全オーバースペック気味だ。GTX1060以上の性能があればゲーム体験に差は出ない。高いGPU性能を活かすためには高解像度モニタも合わせて用意しておきたい。

Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)

ここでもGTX1080Tiを上回り、「RTX2080」の平均FPSは90に達している。RTX2080のGPU性能は従来型のゲームでも「GTX1080Ti以上か同等」と見て問題なさそうだ。

フルHDではGPUが飽和点に達し、CPUがボトルネックとなっている。GTX1080以上は飽和点に達しており、本ゲームにおいて差は出ない。GPU能力を活かすためにはWQHD以上の負荷が必要となる。

PS3、Xbox360世代の4Kゲーミング:3840×2160

ここからは前世代にあたるPS3、Xbox360とのマルチタイトルの4Kゲーミング性能を3840×2160ドット設定で見ていく。

METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)

事実上最後となるメタルギアソリッド最終シリーズ。PS3とPS4のマルチタイトルだけに相応に負荷が高い。しかし軽量なFOXエンジンというい事でGTX1060以上のGPU性能があれば4Kでのプレイが可能だ。RTX2080ならGPUファンをユルユル回しながらでも遊べる。

BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)

上限フレームがなく、CPUもボトルネックになりにくいため、GPU性能の地力が出るバイオショック3。RTX2080はGTX1080Tiを偏差で交わしている。古めのゲームにおいても十分性能を発揮している事がわかる。

「GTX1080Ti」と同等以上の性能となる「RTX2080」

「GeForce GTX2080」は現行世代のゲームで「GTX1080Ti」と比較しても、全く遜色のない性能を発揮できるようだ。4Kなどの高解像度では「GTX1080Ti」を上回る事も少なくなく、高負荷になればなるほど、前世代GPUより高い性能を発揮する潜在能力の高さが垣間見える。

DirectX9世代の5年以上前のゲームにおいても、RTX2080はGPU性能をスペック通りスケーリングできており、当時では実現できなかった「高解像度」「高リフレッシュレート」の両立が可能となる。Steamでセールの多いタイトル群を、コンソールでは体験できない超高画質でプレイするのも悪くなさそうだ。

GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動

GPU-Z情報

GPUコアは「「TU104」。ビデオメモリはGDDR6でMicron製と表示されている。

GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動

以下はアイドル時と高負荷時のGPU-ZのSensors情報。

高負荷時のコアクロック・GPU温度の推移

下記のグラフはゲームの起動から放置後、終了してアイドルに戻るまでのGPUクロックと温度とクーラーファンの挙動グラフ。GPUクロックは1890Mhzで安定しており、Pascal同様に高いクロックが維持できている。GPUの温度は70度に達することはなく、ファンスピードもピークで50%と十分許容範囲だ。

消費電力比較

ここからは「GTX2080i」の消費電力にスポットを当てて見ていく。RTコア、Tensorコアを追加したTuringアーキテクチャのGPUはPasxal世代と比較しても遜色ないのだろうか。

*システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。

(左:アイドル 右:フルロード)

アイドル時のシステム全体の消費電力

昨今のグラフィックボードはアイドル時のコアクロックが抑えられるため、ハイエンドでも消費電力は低い。RTX2080もPascal世代と大差ない消費電力にセーブされており、クロック制御の進化と優秀性が伺える。

高負荷時のシステム全体の消費電力

従来のGPUは世代が進化すると、性能の対してのワットパフォーマンスが大幅に改善されていたが、「RTX2080」は性能が近い「GTX1080Ti」とほぼ同じ消費電力となってしまった。微細化された分をTensor、RTコア振り分けて、さらにダイサイズも肥大化した弊害だろうか。

電気料金比較

以下は「1日3時間、GPU負荷100%でゲームを1年プレイした」と想定した場合の年間電気料金の比較。RTX2080は前世代の同クラスGTX1080と比較すると1000円程度の加算となる。このクラスのGPUを利用するユーザーなら誤差の範囲だろう。

「Geforce RTX2080」レビューまとめ

新しい4Kゲーミングの選択肢

「Geforce GTX 2080」は従来は「GTX1080Ti」しか実現できなかった4Kゲーミングを現実的な画質で実現できるGPUと見て良さそうだ。GTX1080Tiよりコア数は減少しているが、GDDR6化と最適化で性能をカバーしている。VRAM8GBも現在のゲーミング程度では問題は顕在化していない。

発売当初は価格がネックとなったが、ご祝儀価格も収まり、GTX1080の初値程度まで下がってきた。現在も価格の下落は続いており「RTX2080」は4Kゲーミングにおける新しいグラフィックボードの選択肢となりそうだ。

RTコア、Tensorコアの活用で潜在能力を発揮できるか

Turingアーキテクチャの目玉となるRTコア、Tensorコアを活用したゲームタイトル群が徐々にリリースされつつある。現在はGTX1080Tiと同等という評価だが、これらのタイトルがリリースされれば、RTXシリーズのアドバンテージが更に発揮されるはずだ。

また、今回のレビューではレイトレースは重い結果となったが、筆者の環境で適切にグラフィック設定を施すことで、BF5はフルHDで十分60FPSでプレイできている。新次元のグラフィック体験を一足早く体験できる満足感はかなり高かったと付け加えて置こう。

DLSSも注視すれば気になるところはあるが、その引き換えに得られるパフォーマンスの向上は大きい。他のタイトルでも実装が進めば積極的に利用したい品質は維持されている。レイトレースで低下したパフォーマンスをDLSSで取り返す事ができたら、ゲーム全体のグラフィック品質の向上に寄与しそうだ。

発売当初は厳しい評価となった「Geforce RTX2080」。GPUの進化を停滞させないための対策として、NVIDIAから提案された新機能の実力は、まだ十分に図りきれていない。しかし、RTXシリーズは現行ゲームでも十分高速に処理できる性能を備えている。価格が下がれば、「Geforce RTX2080」の評価も変わってくるだろう。

値下がりしたPascal世代のGPUを狙うのも悪くないが、新世代のグラフィックボードでコンシュマーゲーム機では体験できない、ゲームの新しい未来を一足早く体験できるのも自作PCゲーマーならではの楽しみ方ではないだろうか。

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