こういうのでいいんだよ。「Radeon RX 5700 XT」レビュー。AMDの新世代GPUをベンチマーク、ゲーム性能比較

「Radeon RX 5700 XT」は2019年7月にAMDがリリースした新アーキテクチャ「Navi」を採用したグラフィックボード用GPUだ。長年続いた「GCN」を一新し、新内部設計「RDNA」と、製造プロセス7nmを採用した新世代GPUとなる。

「RX5700XT」は「Radeon」復活の狼煙となるのだろうか。今回はNVIDIAを猛追するAMDの新型GPUをレビューしていく。

Radeon RX5700XT」の仕様

現在のゲームシーンを捉えたミドルハイレンジGPU

「Radeon RX5700XT」は新アーキテクチャ「NAVI」となるAMDのミドルレンジクラスとなるGPUだ。内部設計を2011年から8年続いた「GCN」設計から「RDNA」に刷新し、7nmの製造プロセスを採用している。

ライバルNVIDIAがの「RTX」シリーズが「RTコア」と「Tensorコア」を搭載した結果、大規模・高価格化した「未来のためのGPU」とすると、AMDの「Navi」は素直にシェーダー規模を拡大し、高クロックし、微細化した分をワットパフォーマンスの向上に割当てる事で着実な進歩を図った「現実的な」GPUといったところだろうか。

Radeon RX5700XTの基礎GPU性能

詳細なベンチマークを見る前に、まずは「RX5700XT」の基礎GPU性能を把握しておこう。(他のベンチマーク、各種ゲームのFPS比較の詳細は後述している)

3DMARK TimeSpy 

最新のDirectX12ゲーム性能を図る「TimeSpy」。「RX 5700XT」はライバルNVIDIAの「RTX2070」と殆ど互角のスコアを叩きし、前世代のハイエンド「GTX1080Ti」を凌ぐパフォーマンスを示している。特筆すべき点はAMDの上位モデルとなる「Radeon VII」を上回っている点となる。

全ての局面で「Radeon VII」を上回るという事ではないが、最新のゲーミング性能を図る本ベンチマークで倍近い価格差を性能でひっくり返す「RX5700XT」のコストパフォーマンスは非常に高い。

AmazonでRadeon RX5700 XTの最新価格をチェックする

AmazonでRTX2070 の最新価格をチェックする

外観・形状の特徴

「SAPPHIRE Radeon™ RX 5700 XT 8G GDDR6」レビュー

今回レビューに用いるグラフィックボードはSAPPHIREの「Radeon™ RX 5700 XT 8G GDDR6」だ。AMDのリファレンスモデルであり、各社違いはない。


SAPPHIRE サファイア RADEON RX 5700 XT 8G GDDR6(amazon)

インターフェース形状:PCI Express(3.0) x16
ブーストクロック:1905 MHz
ゲームクロック:1755 MHz
ベースクロック:1605 MHz
メモリクロック: 14Gbps
ビデオメモリ:GDDR6 8GB
映像出力:HDMI2.0b×1/Displayport1.4×3/
補助電源コネクタ:8ピン×1 6ピン×1
専有PCIスロット:2スロット
カードサイズ:272mm x 111mm x 36mm


付属品

昨今のグラフィックボードは付属品はほとんどない。本品も本体のみでドライバや電源変換ピンなどは一切ない。

外観

外観はリファレンスモデルということで外排気モデルの一般的なグラフィックボードだ。「RX5700XT」の特徴として、一部に凹んだ様な独特のアクセントデザインを取り入れる点となる。この凹みは下位モデルの「RX5700」にはない。

全体的にダークグレーに細いスリットが施されており、「Radeon」のロゴは光沢メッキ塗装されている。

専有スロットは2スロット。側面の「Radeon」ロゴはLEDが埋め込まれており、通電時には鈍くオレンジ色に光るギミックが仕込まれている。これもリファレンスモデルの「RX5700」にはなく、上位モデルの「RX5700XT」のリッチ感を演出といったところだろうか。

サイズ比較

リファレンスデザインとなるNVIDIAの一般的なグラフィックボードとのサイズ比較。272mm x 111mm x 36mmということで若干カード長が伸びているがほとんど誤差の範囲内だ。一般的なPCケースであればクリアランスに問題は起きないだろう。

スタンダードな映像端子構成

映像端子には、DisplayPort×3、HDMI×1とスタンダードな構成だ。「HDMI」は4K/60Hz映像出力、HDR対応、横長の変則アスペクト比モニタに対応した「HDMI2.0b」に対応した最新仕様を1つ。ディスプレイポートのバージョンは「DisplayPort 1.4」となる。

NVIDIAの上位モデルには「VirtualLink」用USB Type-Cが搭載されているが、Radeon勢の実装は未だ先になるようだ。

シロッコファン

GPUファンは外排気ブロワーということでシロッコファンを採用。2連内排気のオリジナルモデルと比較すると静音性は若干落ちるが、PCケース内の環境に左右されず、安定した性能を維持できる。

補助電源・バックプレート

補助電源は8ピン×1+6ピン×1仕様。推奨電源ユニットは600Wとされている。公証消費電力は225W。メーカー製PCや価格を抑えた廉価なBTOモデルでは少し厳しい。

バックプレートが施されており、ボードの自重による歪みが招くクラックを防ぐ。

ゲーム系ベンチマーク

では「RX5700XT」のゲーム系ベンチマークを見ていこう。NAVIアーキテクチャ採用によるAMDの新世代GPUの実力はどの程度なのだろうか。

3DMARK  Firestrike Full HD

現在主流のDirectX11のゲーム性能を図るフルHD「FireStrike」。ここでもRX5700XTは上位モデルRadeonVIIに肉薄するパフォーマンスを示しており、ライバルRTX2070に圧勝し、対抗して投入された「RTX2070 SUPER」ですら凌駕している。

3DMARK  Firestrike Ultara

現在主流のDirectX11の4Kゲーム性能を図る「FireStrike Ultra」。高負荷になるとハイエンド勢が強く、RadeonVII、GTX1080Tiには届かない。しかし、同クラスのRTX2070は圧倒しており、「RTX2070 SUPER」と比較しても大きな遜色はない

FinalFantasy XVベンチマーク

スクウェア・エニックスの看板タイトルとなるFF15のベンチマーク。NVIDIA Works対応という事で、ここではRadeon勢は全体に的にスコアを落としている。新アーキテクチャによる効率化が響いてるのかRadeonVIIをRX5700XTは上回っている。

4KでもRadeonが不利という状況に大きな変化はない。他のベンチマークと比較して全体的に1ランク下がる結果といったところだろうか。Geforceに最適化されたタイトルでは、Radeonは十分なパフォーマンスを発揮できない。

FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者

4K 最高品質

 

PS3世代の古めのゲーミング性能を図るFF14ベンチ。FF15ほど大きなギャップはないが、やはりRadeon勢は全体的に伸び悩んでいる。とはいえ、RX5700XTはRTX2070を超えており、ハンディキャップを乗り越えて、同クラスのライバルGPUを制した結果となった。

FullHD 最高品質

フルHDでも傾向近い、RX5700XTはRTX2070と互角といったところで、カウンターで投入された「RTX2070 SUPER」には届かない。

AmazonでRadeon RX5700 XTの最新価格をチェックする

AmazonでRTX2070 の最新価格をチェックする

国産ライト ネットゲーム 4Kベンチマーク

ここからは国内ネットゲームのベンチマークを見ていく。これらのベンチは負荷が軽すぎてハイエンド帯ではフレームレートが飽和する。純粋なGPU性能というより、ゲーム動作を図る指標程度に捉えておいた方が良いだろう。

ドラゴンクエストX ベンチマーク

左:FullHD最高画質 右:4K最高画質

設計が古いゲームのベンチマークでも新アーキテクチャとの相性が悪いのか、ドライバのチューニングが追いついていなのか、「RX5700XT」,「RX5700」のスコアが大きく落ち込んでいる。GPU性能にスコアがスケールしていない。

VRベンチマーク

VRMark

高負荷VRの性能指標を図るVRMarkのBlueRoom。RX5700XTはRTX2070には及ばない。とはいえ、GTX1080やRTX2060以上の性能をしてしており、一般的なVRタイトルであれば十分快適に遊べる事が期待できる。

SteamVR Performance Test

現在のVRゲームの標準となるStemaVRのパフォーマンステスト。RX5700XTはカンスト値の「11」に達しており、SteamVRのVRゲームタイトルを十分快適に遊べることが伺える。

テストされたフレーム」に注目すると「VRレディ」以上のGPU性能の差が浮き上がってくる。RX5700XTはRadeonVIIをわずかに上回るが、RTX2070には及ばない。

実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能

ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHDゲーミング性能と、数年前のPS3・Xbox360世代のゲームのFPSを計測してみた。

PS4・XboxOne世代の最新ゲーム:1920×1080 & 4K

バトルフィールドV

レイトレースにいち早く対応したバトルフィールドV。ここではレイトレースをオフにした最高品質のDirectX12のグラフィック性能を見ている。RX5700XTはRTX2070とRTX2080の間に収まる性能を示しており、コストパフォーマンスの高さが光る。

RX5700XTはハイエンドGPUと比較すると伸びが鈍いが、4Kでも平均50フレームを超えており、画質設定を調整することで60フレームでの4Kゲーミングも視野に入ってくる。

アサシングリード オデッセイ

広大なオープンワールドとリッチなグラフィックで処理も重いアサシングリードオデッセイ。上位GPUのRadeonVIIを僅かに上回っており、実ゲームにおいてもハイエンドに匹敵にする性能を発揮する局面がある事が伺える。

4Kでは荷が重く、RadeonVIIには及ばず、旧世代のNVIDIAのハイエンドGTX1080Tiに及ばないが、RTX2070と互角程度のパフォーマンスは発揮できている。

PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080& 4K

Witcher3 (ウィッチャー3)

オープンワールドRPGの代表作「ウィッチャー3」。RX5700XTは平均120フレーム付近に足しており、ハイリフレッシュレート対応のゲーミングモニタを用いたプレイも視野に入ってくる。

フルHDでは苦戦を強いられていたRadeon勢だが、4KではGPU性能どおりのパフォーマンスを発揮している。RTX5700XTは平均60フレーム寸前に達しており、この負荷レベルのゲームであれば多少の画質オプション調整で十分4Kゲーミングも視野に入ってくる事が伺える。

For Hornar (フォーオナー)

RX5700XTはタイトルと相性が良いのか、RadeonVIIとGTX1070Ti、RTX2070を上回り、RTX2080の背中が見えるほどのパフォーマンスを発揮している。

4Kでも高いパフォーマンスを示しており、画質オプションを調整することで4K60フレームのプレイも視野に入ってくる。ここでもRTX2080に迫る健闘を見せている。

DarkSouls3(ダークソウル3)

上限のフレームレートが60フレームに固定されているダークソウル3。GTX1050Ti程度で60フレーム付近に達することから、現行エントリーモデル以上の性能があればGPU性能の差がゲーム体験に現れない。

4K最高画質でRX5700XTは平均54フレームに達しており、画質オプションを多少調整することで4Kゲーミングも視野に入ってくる。

Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)

PS4世代でも比較的初期のタイトルで負荷も軽いバットマン アーカム・ナイト。上限フレームレートが高くなりすぎて、現行のミドルレンジ以上のGPUの差は現れにくい。RX5700XTも平均160フレーム近くに達し、高リフレッシュレートのゲーミングモニタでのプレイも対応できそうだ。

RX5700XTは4Kでも平均75フレームに達しており、RTX2070を完全に凌駕している。PS4世代のゲームでも初期のタイトルであれば4Kゲーミングも十分視野に入りそうだ。

PS3、Xbox360世代のゲーミング:4K

ここからは前世代にあたるPS3、Xbox360とのマルチタイトルの4Kゲーミング性能を見ていく。

METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)

小島監督によるメタルギア・ソリッド最終作品の序章。RX5700は余裕で4K60フレームで安定しており、さらなる高画質設定も十分対応できそうだ。

BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)

上限フレームがなく、CPUもボトルネックになりにくいため、GPU性能の地力が出るバイオショック3。ここでもRTX2070を上回り、PS3世代の少し古めのタイトルでもGPU性能を十分発揮できる事が伺える。

タイトルによってはRadeonVIIやRTX2070を超える性能

「RX5700XT」はタイトルによっては上位モデルの「RadeonVII」やライバル「RTX2070」を超えるゲーミングパフォーマンスを示した。最新のゲームにおいては「RTX2070」以上「RTX2080」という局面少なくなく、コストパフォーマンスの高さが光る。

「RX5700XT」はPS3・XboxOneのゲームタイトルでもGPU性能どおりのパフォーマンスを示しており、少し古めのゲームから最新ゲームまでバランス良く高いパフォーマンスを発揮するグラフィックボードと見て良さそうだ。

AmazonでRadeon RX5700 XTの最新価格をチェックする

AmazonでRTX2070 の最新価格をチェックする

GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動

GPU-Z情報

GPUコアはNavi10、製造プロセスは7nmでメモリはGDDR6と表示されている。

GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動

以下はアイドル時(左)と高負荷時(右)のGPU-ZのSensors情報。

消費電力比較

ここからはワットパフォーマンスを中心にチェックしていく。前世代のVEGAではNVIDIAのGPUと比較すると数段高い消費電力となったが、Naviで改善したのだろうか。

*システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。(左:アイドル 右:フルロード)

高負荷時のシステム全体の消費電力

RX5700XTはライバルRTX2070より若干高い数値を示しているが、RTX2080を下回る健闘を見せている。Radeon VIIやVega64と比較すると圧倒的に低消費電力に抑えられており、新アーキテクチャNAVIによる最適化と製造プロセス7nm化で、NVIDIAのGPUと比較しても遜色のないレベルまでワットパフォーマンスが向上している事が伺える。

電気料金比較

以下は「1日3時間、GPU負荷100%でゲームを1年プレイした」と想定した場合の年間電気料金の比較。実際には多くの人は1日3時間もゲームプレイは困難なので年間ベースでみると大きな差にはならない。もはやRadeonの消費電力が高い忌避する必要がない所まで改善している。

「Radeon RX5700 XT」レビューまとめ

NVIDIAのライバルGPUと比較しても遜色のない性能

「Radeon RX 5700XT」は競合となる「RTX 2070」と比較しても遜色のない性能を示しており、カウンターで発表した「RTX2070 SUPER」の価格と踏まえると、十分「戦える」ゲーミンググラフィックボードに仕上がっているようだ。。

タイトルによっては「RTX2080」に迫り、上位モデルの「RadeonVII」すら上回る潜在能力を見せている。ワットパフォーマンスも高く、価格の低下も踏まえるとコストパフォーマンスは高い。RadeonのGPUはドライバの成熟によるパフォーマンスの向上も期待できる。今後の性能の伸びにも注目したい。

「レイトレース」を切り捨てた現実的なGPU

「RTX」シリーズは「レイトレース」と「DLSS」をアピールしているが、対応タイトルが出揃っておらず、その真価を発揮するには時間が必要だ。特にレイトレースの処理はハイエンドの「RTX2080Ti」ですら重く、普及も鈍い。

「レイトレース」、「DLSS」を省いたモデルとしてNVIDIAにも「GTX1660Ti」という選択肢もあるが、「RX5700XT」より性能は格下だ。そういう意味でも「RX5700XT」は「今、ゲームを快適に遊びたい」という実利重視のユーザーにとって「こういうのでいいんだよ、こういうので」というグラフィックボードに仕上がっている。

SAPPHIRE サファイア RADEON RX 5700 XT 8G GDDR6 グラフィックスボード (amazon)

AmazonでRadeon RX5700 XTの最新価格をチェックする

AmazonでRTX2070 の最新価格をチェックする