CPU内蔵intel HD Graphics(iGPU)を活用して、 携帯型PS3ゲーム機の代替機とする

CPUに内蔵されているグラフィック機能であるiGPUの性能向上は目覚ましい。Skylake以降の世代のintel HDはプレイステーション3クラスのゲームであれば問題なく遊べる程度の性能を持ち始めている。

一定性能のintel HD搭載ノートパソコンやタブレットPCなら、SteamなどにPC展開されているPS3とのマルチタイトルをプレイする事も不可能ではなく、モバイルできるプレイステーション3の代替機として活用できる。

前世代のローエンドdGPUに追いついてきたiGPU性能

標準搭載のCPU内蔵グラフィック性能の向上

数年前まではintel HDで3Dゲームは厳しいとされていた。しかしAMDのAPUとの競争が激しいCPU内蔵グラフィック機能は年々性能が向上している。とくにKabylake世代のintel HD630は前世代のローエンドクラスのグラフィックボードに追いつきつつある。

これまで外部のGPUを用いなければ動かなかったアプリケーションがCPUに標準で内蔵されているグラフィック機能で動作する意義は大きい。

ハイエンドiGPUではGTX750Tiの背中が見え始める

ハイエンドのCPU内蔵グラフィックである「iris」を冠するintel iris proシリーズの性能は、PS4のGPUと性能が近いGTX750Tiの背中が見え始めている。

ただし、irisシリーズはユーザーが内蔵GPU性能を重視して、CPUを選択しない限り実装されていない。搭載ノートやタブレットの価格も高価だ。上述した標準的なCPUに搭載されているiGPUとは立ち位置は事なると言える。

最新ベンチマークでは図りにくいPS3世代のゲーム動作

内蔵GPUを用いたベンチマークは各所で見かけるが、dGPUと比較されており、流石に見劣りする。PS4やXbox Oneで動作するような最新のゲームで検証されるとかなり厳しい事は否めない。

しかし、PS3世代のゲームであればiGPUでも十分動作する性能を秘めている。実際、ベンチマークもPS3世代の設定で走らせると十分現実的なスコアと動作を示している。

*intel HD520でPS3相当の設定でFF14ベンチを走らせた結果

intel HDを利用したゲームの実際の動作

モバイルを想定してSurface Pro4で確認

モバイルPS3との代替という事で実際のゲームプレイの確認に「Surface Pro 4 」のCore i5モデルを利用している。内蔵グラフィックにはskylake世代のintel HD520が用いられている。

そろそろ後継のKabylake版「Surface Pro 5」も噂されており、発売当時に15万円で購入した本機だが、現在は10万円を切る価格で処分されはじめ値下がりが著しい。

Surface Pro 4 Windows10 Pro Core i5/4GB/128GB(Amazon)

Skylake Kabylakeの内蔵グラフィック性能比

なおintel HD520の性能は以下のとおり。最新のKabylake世代のモバイルターゲットの内蔵グラフィックGPUであるintel HD620は更なる向上が図らており、ここで示すフレームレートより少し上ブレすると思われる。

PS3世代のゲームをモバイル内蔵GPUで動かしてみる

では実際のiGPUを用いたPS3世代のゲームの動作・性能を見ていく。実際のグラフィック品質確認用に各スクリーンショットをクリックすると拡大閲覧出来る様になっている。(サイズの都合実機サイズでない画像もある。)

またグラフィックオプションを丁寧に詰めれば、これらのスクリーンショットより綺麗な状態も不可能ではない。尚、PS3とXbox360世代という事で解像度も1920×1080ではなく、コンシュマー相当の1280×720@30フレーム動作を基準としている。(PS3では更に低いタイトルも少なくない)

ライトニングリターン ファイナルファンタジー13

説明不要のスクエニ代表作「FF13」のスピンオフ。タイトル側でPS3相当の解像度ロックが施されており、逆に都合が良い。「1280×720ドット」の「標準設定」でバトル・移動シーンは30FPS安定している。

カットシーンでエフェクトが多重に表示されるカットのみ20フレーム台まで落ち込むケースがある。アルファを贅沢に用いた髪の毛表現と半透明エフェクトが重なるとGPUの負荷が過剰に大きくなる様だ。

Tomb Raider(2013)

トゥームレイダーシリーズのリブート作品。今回の計測で最も高いグラフィック品質とフレームレートを維持した作品の一つ。設定は「1280×720ドット」のノーマル設定で45フレーム前後といった所。カットシーンやエフェクトの具合によっては30フレーム台まで落ち込むが、ゲーム事態は快適にプレイ可能だった。

スクリーンショット取得時にアスペクト比を間違ってしまったが、勿論正しく設定できる。プレイしているとモバイル端末であるという事を忘れてしまう動作だ

BioShock Infinite

日本語版ボイスを沢城みゆきが演じるエリザベスが魅力的な名作「バイオショック」シリーズの最新作。1280×720のVeryLowで50フレーム、Lowで40フレーム、Normalで30フレーム前後で推移する。

Normalだと激戦区に入ると30フレームを切るケースがあるが、Lowから細かくカスタマイズすれば快適に遊べそうだ。

メタルギア・ソリッド グランドゼロ

ハイクオリティながらも軽量な動作のFox Engineを用いた本作。1280×720ドットではゲーム中は25~30フレームで推移する。グラフィックと解像度の設定をすべてLOWまで下げることで30FPS安定する具合だ。

1280×720ドット以下なのでPS3より更に解像度を妥協すればintel HD520でも問題なくプレイできる水準だ。intel HD620ならPS3相当の解像度で動作すると思われる。とはいえ、この品質がモバイルで動いてる事を踏まえると凄い。

スカイリム

オープンワールドの代表作「The Elder Scrolls V:Skyrim」。1280×720ドット、LOW設定で60フレームで完全に安定動作する。

全てをLow設定だと流石にテクスチャが荒い。intel HD520でも余裕があるので各種グラフィックオプションを上げてプレイする事も可能だ。30フレームターゲットにすれば画質も結構こだわれそうな気配がある。

アランウェイク

海外ドラマを見てるような感覚で楽しめる名作アドベンチャー「ALAN WAKE」。1280×720のLOW設定で30FPS安定。エリアやシーンによっては60FPSで安定してる。軽い箇所と重い箇所の差が大きい。

Portal2 & Left 4 Dead

数々のゲーム賞を総なめした名作ACTバズルFPS「Portal2」。流石Valveというべきか1280×960のデフォルト設定で60フレーム完全安定する。

 

かなりスペックに余裕がある様なので好みに応じて より高画質な設定に変更が可能となっている。同Valve社製の「Left for dead2」も同様にデフォルトで60フレーム安定だ。  

キング・オブ・ファイターズ13

SNKのドット格闘アクションゲームのリブートにあたるKOF13。基本2Dであり、かなり余裕があるためかデフォルトで60フレーム安定。フレームがシビアな格闘ゲームでも十分耐えうる動作となっていた。

BlazeBlue:Calamity Trigger

今回、唯一プレイできる程度に安定しなかったタイトル。画質オプションを最も下げても25-30FPSをフラフラする。解像度1920*1080を上げても、グラフィックオプションを変えても
常に上記一定の挙動を示す。

他のタイトルより特別に重そうな処理はしていないので単純にタイトルのバグか最適化不足だと思われる。

PS3世代ならグラフィックオプションの調整で十分遊べるCPU内蔵GPU

数年前のゲームなら十分遊べる最新Intel HDの3D性能

CPU内蔵グラフィックといえども、PS3世代のゲームタイトルであればグラフィックオプションを調整する事で十分プレイする事が可能の様だ。今回試したSurface Pro4に搭載されている「intel HD520」よりも高速な「intel HD620」であれば更に快適なプレイが期待できる。

かつでの高品質ビジュアル和ゲーの代名詞「FF13」を外で普通に遊べてしまうのである。(実際に遊ぶかはともかく)

ストリーミングならPS4を越える画質とフレームも可能だが制限も大きい

ゲーミングPCを所有しているのであれば、PS4,Xbox One世代の最新ゲームSteam のストリーミングを用いて遊べる。しかし高速なLAN環境でなければ現実的な速度を維持する事は難しい。メインとなるPCを起動した状態で同一ネットワーク上という制約も大きく、通信量も限られるモバイルでは殆ど利用不可能だ。

普及しているタブレットやノートPCのCPUで3Dゲームが遊べるインパクト

intel HD520や620はタブレット型の2in1PCやノートパソコンに搭載されている一般的なCPUのiGPUだ。バッテリーとの兼ね合いもあるが、普及した機器が携帯型プレイステーション3の代替機となる性能を持っている事になる。

快適性では負けるが「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」への移植を待たなくてもスカイリムを外で遊ぶ事も不可能ではない。PSP VITAのPS3マルチタイトルなら遥かに高画質で遊ぶ事が可能になってくる。

勿論、実際に外でプレイするには周囲の目を考えるとハードルは高すぎるが、手持ちのタブレットPCやノートパソコンでPS3やXbox360クラスのゲームがプレイできるインパクトは大きい。出張先のビジネスホテルの一室で軽くゲームをプレイする程度なら十分使えるだろう。

デスクトップPCのintel HD630なら更なるパフォーマンスが期待できる。自宅にゲーミングPCを所有してなくても、手持ちのビジネスPCやノートPCのiGPUを活用して、Steamセールで数百円で購入できる過去の名作を遊んで見るのも悪くない。