「GTX1060 3GB」は「GTX1060 6GB」から2ヶ月遅れの2016年9月にリリースされたエントリーGPUだ。ライバルAMDの「RX470」の対抗製品として投入され、そのまま「RX570」とも競合となっている。
「GTX1060は3GBか?6GBか?」といった論争はネット上でも頻繁に繰り広げられ、未所有者は「3GB」のデメリットを語り、所有者は「3GB」のコスパの良さを訴えるといった様子を目にする。価格が高く、上位GPUである「6GB」の方が性能が高いのは当然だが、価格相応の性能差となっているのだろうか。
今回は「GTX1060 6GB」と比較されがちな「GTX1060 3GB」を「6GB」版と前世代ハイレンジ「GTX980」との比較を中心にレビューしていく。
「NVIDIA Geforce GTX1060 3GB」の仕様
GTX1060 6GBの性能カット版となる3GB
「GTX1060 3GB版」は「GTX1060 6GB版」のコアと同じGP106を採用したミドルレンジGPUだ。シェーダープロセッサが6GBの「1280」から「1152」へと削減され、ビデオメモリ容量は6GB→3GBへと半減している。
クロックなどは6GBと同等であり、TDP120Wや補助電源6pin×1も同じだ。ポジション的には、GTX1050TiとGTX1060 6GBの中間というより、6GBに限りなく近い。しかし、製品名は同じでもスペックと価格に差異があり、名称と相まってユーザーに混乱と論争を招きがちなGPUとなっている。
上位GPU「GTX1060 6GB」との価格差
マイニング需要やメモリ不足の影響によってミドルレンジ以降のGPUの価格上昇が著しい。「GTX1060 6GB」は一時は最安値で2万円中盤程度まで下落していたが、直近では3万円を軽く超える価格まで上昇している。
「GTX 1060 3GB」も最安値は2万円を切る19,800円という特価も珍しくなかったが、2万円前半まで戻ってしまった。とはいえ、6GBと比較しても上昇率は穏やかだ。6GBの値上がりによって3GBと6GBの最安値の価格差は1万円近い水準にまで達している。
「GTX1060 3GB」は「GTX1050Ti」に「ちょい足し」で手が届くGPUに収まっており、「6GB」と比較すると明らかに1ランク安い。
外観・形状の特徴
「玄人志向 GF-GTX1060-3GB/OC/DF」レビュー
今回レビューに用いるグラフィックボードは「玄人志向 GF-GTX1060-3GB/OC/DF」だ。GALAX社のOEM品となっており、GPUファン中央の「GALAX」ロゴが「玄人志向」シールに張り替えられ、サポートなどをカットし、ユーサーがリスクを負う商品となっている。
玄人志向 ビデオカードGEFORCE GTX 1060搭載 GF-GTX1060-3GB/OC/DF(amazon)
インターフェース形状:PCI Express(3.0) x16
コアクロック:ベース1,518MHz ブースト1,733MHz
メモリクロック:8,008MHz
ビデオメモリ:GDDR5 3GB 192bit
映像出力:HDMI2.0b/DisplayPort 1.4/DVI-D
補助電源コネクタ:6ピン×1
専有PCIスロット:2スロット
推奨電源容量:600W 12V45A以上
付属品は定番のドライバDVDとマニュアルに加えて、補助電源6ピン変換ケーブルが付属している。ミドルレンジながらも梱包は頑丈なスポンジで施されており、チープ感はない。
形状は8cmのツインファン仕様となっており、ブラックメタルとシルバーメタルの2トンカラーデザインだ。
玄人志向マークさえなければ、クリアパネルケースでも酷い見た目にはならない。
専有は2スロット。6mmの2本の銅製ヒートパイプがヒートシンクを貫いている。必要電源容量は400Wで要求構成は低い。
サイズ比較
リファレンスサイズのGTX970と比較するとほぼ同サイズに近い。サイズはブラケットを除くとカード長は21,4cm×11,1cm×3,86cm。ブラケット込だと 22,8cm×12,4cm×4,15cmだ。
ブラケットサイドは殆ど出っ張りはなく、補助電源ピンコネクタがケースサイドパネルに干渉しなければ、殆どのPCケースで問題なく収まるだろう。
最新モニタから旧型モニタまで対応できる映像端子構成
ディスプレイポートは1つ搭載。バージョンは規格上では8K-60Hzや4k-120Hz、HDRをサポートする「DisplayPort 1.4」。「HDMI」も1つ搭載で4K/60Hz映像出力、HDR対応、横長の変則アスペクト比モニタに対応した「HDMI2.0b」に対応した最新仕様だ。
昨今の上位モデルでは珍しく、DVI端子が備わっており、古いモニタにも対応できる。
グラフィックボードの後方にもエアフローが確保されている。
ツインファンのGPUクーラー
GPUクーラーは9cmのツインファン仕様でセミファンレスではなく、GPU温度によって制御されるがアイドル中でも静止はしない。
ユーザーからは不評な「玄人志向」シールが大きく貼られており、見た目に拘る人は避けた方が良いだろう。サポートもなく、売却時は他のメーカーよりも低価格になるリスクをどう捉えるかが問われるブランドとなってきている。
補助電源・バックプレート
補助電源はリファレンス同等の6ピン×1。推奨電源も400W程度なのでオーバークロックモデルであろうと十分範囲内に収まる様だ。
背面にバックプレートはない。ミドルレンジモデルの中でも廉価なグレードのグラフィックボードであり致し方ない。
ゲーム系ベンチマーク
では「Geforce GTX1060 3GB」のゲーミングベンチマークスコアを見ていこう。上位GPUとなる「6GB」との差はどの程度なのだろうか。価格差を踏まえて下位GPU「GTX1050Ti」との性能差と併せて見ていきたい。
3DMARK TimeSpy
最新のDirectX12ゲーム性能を図る「TimeSpy」。スコア的には「6GB」の90%近い性能に達しており、価格の近い下位GPUの「GTX1050Ti」からの飛躍率は大きい。
前世代のハイエンドクラス「GTX980」とミドルハイ「GTX970」の中間位置に収まっている。ライバルのAMD「RX570」と比較するとほぼ互角といったところだ。
3DMARK Firestrike Full HD
現在主流のDirectX11のゲーム性能を図るフルHD「FireStrike」。こちらでもGTX980には及ばないが、GTX970より高いスコアだ。「GTX1060 6GB」と比較すると9割程度の性能を示しており、概ねシューダーユニットの削減分だけ低下している事が浮かび上がっている。
TimeSpy,Firestrikeのベンチマークではビデオメモリ半減は大きなボトルネックとして働いていない様に見える。また「GTX1050Ti」からの飛躍率も高い。
FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者
FullHD 最高品質
PS3などの前世代の古めのゲーミング性能指標となるFF14ベンチ。Geforceに有利なベンチマークとだけあって、ここでは競合の「RX570」どころか上位GPUにあたる「RX580」すらも上回るスコアを出している。
前世代のハイレンジ「GTX980」に迫り、下位モデルとなる「GTX1050Ti」や「RX560」とのスコア差は価格差以上に大きい。
4K 最高品質
4KでもFF14ベンチなら一応「快適」判定を得る事が出来ている。グラフィックオプションを調整すれば4Kモニタを用いたプレイも視野に入ってきそうだ。
FF14ベンチでもビデオメモリの容量による著しい性能低下は確認出来ていない。
国産ライト ネットゲーム 4Kベンチマーク
ここからは国内ネットゲームのベンチマークを見ていく。尚このクラスのゲームの場合、負荷が軽すぎてスコアが飽和気味だ。純粋なGPU性能というより、これらのゲーム動作を図る指標程度に捉えておいた方が良いだろう。
ドラゴンクエストX ベンチマーク
左:FullHD最高画質 右:4K最高画質
フルHDでは負荷が軽すぎて、GTX1050程度でスコアが飽和し、CPU・メモリベンチの様相を示すドラクエベンチ。GTX1060 3GBで飽和点に達しており、6GBとの際はない。
4K解像度だと相応にGPU性能差が出て来ている。「GTX1060 3GB」でもスコアは1万点を超えており、十分快適に遊べる事が期待できる。ここでも概ね6GBと比較しても90%以上の性能を発揮している事が確認できる。
ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク
PSO2ベンチマークはRadeon勢と相性が悪く、「GTX1060 3GB」は「RX570」「RX580」のスコアを大きくうわ待っている。下位モデルの「GTX1050Ti」とのスコア差は大きく200%に達している。フルHDの場合、最高画質でもオーバースペックだ。WQHDや4Kモニタを用いたゲーミングも視野に入ってくるだろう。
GPGPUベンチマーク
動画や3Dなどクリエイティブソフトで用いられるGPGPU性能を図る「CompBench2.0」。ここでもビデオメモリ容量がボトルネックとなって顕在化しないため、「GTX1060 3GB」は「6GB」と比較すると90%程度の性能を示している。
項目によって得手不得手はあるが全体的にAMDのRadeon勢が優勢な傾向がある。
VRベンチマーク
VRMark
性能的には「VRレディ」となる「GTX1060 3GB」。指標スコアとなる「5000」を大きく上回り、一定のVR性能が期待出来る。アーキテクチャの更新が響いてるのか前世代ハイエンドの「GTX980」を上回っている。
高負荷のBlue Roomではシェーダ数の差が地力となって現れてるくるのか、「GTX1060 3GB」は「GTX980」には届いていない。とはいえライバルの「RX570」には勝っており、発売当時の競合である「RX470」との差も大きい。
Steam VR pefomance Test
SteamVRの性能指標となるベンチマーク。「平均忠実度」が「6」以上で「VRレディ」判定を得る事ができるが、「GTX1060 3GB」は「7.3」となっており、SteamVRプラットフォームのVRゲーム・アプリケーションが快適に動作できる事が期待できる判定が出ている。しかしVRゲームはビデオメモリの消費量が高いケースが大きいので留意は必要だ。
「テストされたフレーム」に注目すると全体的にGTX1000シリーズが余裕をもってVRを処理出来てていそうだ。一般的なSteamVRアプリケーションであれば、ビデオメモリが溢れない限りは「GTX1060 3GB」でも動作しそうである。
実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能
ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHD/4Kゲーミング性能と、数年前のPS3・Xbox360世代の4KゲームのFPSを計測してみた。
GTX1060の3GBと6GBはゲーミング性能で大きな差となって現れるのだろうか。
PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080 & 4K
Witcher3 (ウィッチャー3)
現世代のオープンワールドRPGの代表作となる「ウィッチャー」シリーズの完結編。広大なフィールド・膨大なオブジェクト・リアルタイムライティングと高いGPU負荷となる本作だが、フルHDであれば「GTX1060 3GB」でも平均60フレーム近辺に達している。
最適化が適切に施されており、ビデオメモリの消費量がボトルネックとならないのか「GTX1060」の「3GB」と「6GB」でフレームレートに差は誤算やモデル差の範疇だ。60番代で80番代の「GTX980」に迫る性能は頼もしい。
4Kは「GTX1060」には荷が重すぎるため、双方で平均30フレームを下回る。ビデオメモリの前にGPUの処理能力自体が不足するためか、ここでも3GB版と6GB版で差は出ていない。
For Hornar (フォーオナー)
「フォーオナー」は設定を上げると、ビデオメモリの消費量が跳ね上がるタイトルだ。しかしフルHDでは3GB近辺に留まるためか、「GTX1060」の「3GB」と「6GB」の差はシェーダーユニットの差である1割程度に収まっている。
4Kになるとビデオメモリの消費量が3GBを大きく超える。GTX1060の3GB版はメモリ量がボトルネックとなりGPU負荷が軽い箇所でもフレームレートが伸びずに6GBと比較すると大きく落ち込んでいる。
しかし、GTX1060は3GB、6GB双方でGPUの処理能力自体が足りておらず、30フレームを維持出来てない。本タイトルでは実用上で大きな差はないと見て良いだろう。
DarkSouls3(ダークソウル3)
ダークソウル3は上限が60フレームに制限されている。「GTX1060」のGPU性能があればフルHDで60フレームをターゲットに快適に遊べる。ここでもフルHDではビデオメモリの消費量がボトルネックにならないため、3GBと6GBで差はない。
フレームレートが落ち込む箇所もCPUやストレージがボトルネックとなっているため、3GBと6GBでプレイ感に差は全く感じなかった。
4Kになると「GTX1060」ではGPU性能が足りてない。3GB版と6GB版双方で30フレームを維持できておらず、ビデオメモリの差が健在化する前にGPUの性能が足りずに挫けてる具合だ。
Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)
バットマンアーカムナイトは初期PS4タイトルで負荷も軽い。GTX1060でも3GB、6GB双方で平均100フレームに達している。ここでもフルHDではビデオメモリの差が顕在化せず、3GBと6GBは誤差程度の範疇に収まっている。
ここでもGTX980と遜色のないパフォーマンスを発揮している。
4Kではビデオメモリの消費量が跳ね上がるのか、「GTX1060 3GB」は「6GB」と比較すると大幅にフレームレートが落ち込んでいる。しかし6GBでも4Kは荷が重く、快適なプレイとは言い難い。
実用範囲内では大きな差はなく、GPU事態がボトルネックとなる点は各タイトルで大きな違いはなさそうだ。
PS3、Xbox360世代の4Kゲーミング:3840×2160
最新のゲームでは4Kは荷が重すぎた「GTX1060」の3GB、6GB双方。PS3,Xbox360世代のPCマルチゲームであれば4Kゲーミングも視野に入ってくる。ここからは前世代の3840×2160ドット設定で見ていく。
METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)
事実上、メタルギアソリッド最終シリーズとなる「V」。PS4との縦マルチという事もあって相応に負荷の高い。GTX1060 6GBでは60フレームを維持できているが3GBでは維持できておらず、明暗がハッキリ別れる形となった。
他のベンチマーク・テストでは「GTX1060 3GB」を下回る結果となっていた。この辺が境界となりそうだ。
LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII(FF13 ライトニング リターンズ )
JRPGの代表作FF13の続編「ライトニングリターン」。「GTX1060」のGPUがあれば、十分60フレーム近辺で安定しており快適に4K画質で遊べる。ここではビデオメモリがボトルネックにならず、3GBと6GBで差異は出ない結果となった。
BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)
CPUがボトルネックにならないため、GPU性能が図りやすいバイオショックインフィニット。「GTX1060 3GB」は最高フレームレートでは「6GB」と比較すると落ちているが、平均フレームレートではシェーダープロセッサ数の差相当に収まっている。
ライバルのRX580には少し劣るが、RX570には明確に上回り、GTX980と遜色はない結果となっている。
Tomb Raider 2013(トゥームレイダー2013)
PS4との縦マルチでもある本タイトル。ビデオメモリ量がボトルネックとなったのか、「GTX1060 3GB」は平均・最高フレームでは「6GB」と比較しても差はないが、最小フレームで一部落ち込むシーンが発生している。
とはいえ最低でも50フレーム以上を維持しており、実用上では大きな差異はない。
Skyrim (スカイリム)
前世代のオープンワールドRPGの代表作。GTX1060のGPU性能があれば最高画質4Kでも60フレーム安定だ。しかしMODを盛大に盛るような使い方はビデオメモリを食う。遊び方によっては3GBというメモリ容量がボトルネックとなって現れるかもしれない。
フルHDでは6GBの85~95%のゲーミング性能
Geforce GTX1060 3GB版はフルHD環境では概ね6GBの85%から95%程度のパフォーマンスを期待出来るようだ。高負荷時にビデオメモリの消費量が3GBを大きく上回る用な局面ではメモリ容量がボトルネックとなるケースも見られたが、その様な局面ではGPUが先に挫けて、フレームレートが実用範囲に収まらないケースが多い。
フルHDで60フレームという「GTX1060」のGPU性能の実用範囲内では「3GB」のビデオメモリ容量が致命的なボトルネックとなる局面は多くはなさそうだが、「3GB」を大きく溢れるケースでは、フレームレートは大きく落ち込むという特性を理解して、利用する必要があるGPUと見るべきだろう。
PS3世代のゲームであれば、「GTX1060 3GB」のGPU性能があれば4Kゲーミングも十分視野に入ってくる。グラフィックオプションによっては「6GB」と比較すると、ややフレームレートが落ち込むケースも見られたが、設定変更する事で安定させる事は可能だ。
ビデオメモリ3GBの影響
ビデオメモリ使用量
6GBと比較して半減となる3GBのビデオメモリは絶妙なスペックダウンだ。PS4世代の殆ど多くのゲームにおいてフルHD設定60フレームであれば、3GBでもメモリ不足は顕在化しない。しかし、最適化が不十分なタイトルや、PCならではの高画質設定オプションを持っているタイトルでは3GBを大きく超えた消費量に達する。
GTX1060の実用解像度
上記はフルHD最高画質におけるビデオメモリ消費量の大まかな比較グラフ。殆どのタイトルで3GB内に収まっている事が確認できるが、越えるタイトルも存在する。
・4K
上記はフォーオナーの4K最高画質時のビデオメモリ消費量の目安値。3GBに収まらずに4GB程度に達する事がタイトルのオプションでも確認できる。しかし、この解像度だと6GBのGTX1060でもフレームレートは全く維持できない。
・WQHD
WQHD程度に留めるとビデオメモリ消費量は3GBに収まる。しかし、WQHDでもGTX1060のGPU性能では力不足で3GB、6GB双方でフレームレートは安定しない。一定のパフォーマンスを得るにはGTX1060ではグラフィックオプションの妥協が必要となる。
・フルHD
フルHDなら最高画質でも3GBで余裕で収まっている事が確認できる。PS4とのマルチタイトルという事を踏まえると、フルHDで3GBを大きく上回る様なタイトルはまだ少ない。溢れてもオプションで微調整する事で3GBに収まるタイトルが殆どだ。
フルHDで3GBを越えるタイトルのビデオメモリ使用量の調整
上記はバットマンアーカムにおけるフルHDの最高画質設定。(NVIDIA GAMEWORKS除く)フルHDでも3GBを超えて消費する事が示されている。
このケースではグラフィックオプションを調整し、ビデオメモリの使用量を3GB以内に収める事で極端なフレームレートの落ち込みを回避する事が出来る。
フルHD60フレームをターゲットとした場合はGTX1060 3GBのビデオメモリがボトルネックになるタイトルは未だ多くないが、最新のリッチなグラフィックタイトルではチラホラ現れている。また技術不足で最適化が不十分な国内のタイトルも少なくない。
そのようなケースでビデオメモリがボトルネックとなった場合は、グラフィックオプションを調整し3GBに収める事で6GBと遜色ないパフォーマンスを発揮できる。
GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動
GPU-Z情報
GPUコアは「GTX1060 6G」と同じ「GP106」。ビデオメモリはGDDR5でHynix製と表示されている。
GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動
以下はアイドル時と高負荷時のGPU-ZのSensors情報。
高負荷時のコアクロック・GPU温度・ファンスピードの推移
下記のグラフはベンチの起動から終了後にアイドルに戻るまでのGPUクロックと温度とクーラーファンの挙動グラフ。クーラーはセミファンレスではないため、アイドル時でも30%程度で回っている。高負荷時でも50%と比較的静音を維持しているが、動画干渉や静音PCを求めるなら、ファン寿命とトレードオフになるが低温時には静止、高温時に稼働するセミファンレスモデルを選択した方が良いだろう。
消費電力比較
ここからはTDPが「GTX970」の165Wから150Wへど現象した「GTX1070」の消費電力にスポットを当ててみていく。6GBと比較して省電力性は如何程なのだろうか
システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。(左:アイドル 右:フルロード)
アイドル時のシステム全体の消費電力
昨今のGPUはアイドル時はコアクロックが抑えられており、消費電力も低い。GTX1060 3GBもミドルレンジながらもローエンドクラスと大差ない消費電力に抑えられている。6GBと比較するとやや高めとなっているが計測誤差の範疇だろう。
ライバルのAMDはGOU性能の上昇にあわせてアイドル時の消費電力も上昇している点は興味深い傾向だ。
高負荷時のシステム全体の消費電力
高負荷時でもGTX1060 3GBはシステム全体で200W以内に収まっており、Pascalアーキテクチャの優秀製を見せつけている。6GBより少し消費電力が低く、シェーダーユニット数の減数と比例して省電力性も高まっている様だ。
電気料金比較
以下は「1日3時間、GPU負荷100%でゲームを1年プレイした」と想定した場合の年間電気料金の比較。実際のゲームプレイ時の計測結果を元にグラフ化している。同性能のGTX980から大幅な消費電力の削減に成功しており、Pascalアーキテクチャの優秀さが垣間見える。
「Geforce GTX1060 3GB」レビューまとめ
GTX1050Tiの予算にチョイ足しで大きな性能アップ
GTX1060 3GBは6GB版と比較しても、実用範囲内の設定であれば概ね90%程度のパフォーマンスを発揮するGPUの様だ。下位モデルGTX1050Tiからの性能飛躍率は大きく、上位GTX1060 6GBとの性能差は小さい。
ビデオメモリの容量が6GBから半減した3GBとなっているため、消費量が3GBを超えるような設定の場合、メモリ容量がボトルネックとなる状況もある。しかし、そのような設定ではGTX1060 6GBでもGPU能力が維持できないケースが大半となる。
一部のゲームでフルHD60フレーム最高画質でビデオメモリの消費量が3GBを超えるケースもあるが、その場合もオプション設定を微調整することで解決できるため、FPSの計測競争では弱点が顕在化しても、実際の実用ベースではメモリ不足は問題になりにくいようだ。
PCに慣れたユーザーなら使いこなせるGPU
現時点ではビデオメモリがボトルネックとなるタイトルの割合は少なく、その場合もビデオメモリをグラフィックオプションで調整する事で6GBと大差ない性能を発揮させる事が出来る。GTX1060 3GBは実際に所有しているオーナーの評判は悪くないのも納得だ。
しかし、「3GB」という制限は絶妙で、一部のタイトルではビデオメモリがボトルネックとなり、フレームレートが落ち込む。「4GB」あればノーメンテナスで快適に遊べるタイトルが多いだけに、悩ましいところだ。
「ビデオメモリ?調整?」といったユーザーであれば、「GTX1060 6GB」がおすすめだが、自分でゲームグラフィックオプションを設定変更できるユーザーであれば、予算とデメリットを踏まえた上で、敢えて「3GB」を選択するのも全然アリだと思われる。
ある意味、GTX1060 3GBは自分の用途にあわせてチューニングも出来る自作PCユーザー向けのGPUなのかもしれない。
現在、GTX1060 6GB版はマイニングとメモリ高騰の煽りで価格が上昇している。GTX1050TIに僅かな予算追加で劇的なパフォーマンスの向上が見込める「GTX1060 3GB」もミドルレンジ帯では十分選択肢に入るGPUと見て問題なさそうだ。
自分の用途に合わせて、コスパ重視でGPUを選び、次にお得な製品が出たら、あっさり乗り換えれるのも自作PCの醍醐味なのかもしれない。
玄人志向 ビデオカードGEFORCE GTX 1060搭載 GF-GTX1060-3GB/OC/DF(amazon)
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