グラボフィックボードの価格上昇が止まらない。2017年中頃から始まったマイニングブームとメモリ需要の高まりによって、グラボの価格が高騰している。発売から2年を経て順調に価格を下げていたGTX1000シリーズも、発売当初以上の価格となり、Radeon RXシリーズはプレミア価格で2倍~3倍といった有様だ。
このタイミングで型落ちのOEMバルク品「GTX760」が大量に放出されおり、最新GPUの1/3~1/4以下の価格で手に入る。発売から5年を経たGPUは2018年現在でも使えるのだろうか。
今回はKepler世代のミドルレンジGPU「Geforce GTX760」を最新GPU「GTX1050Ti」、「GTX1060」、「RX560」、「RX570」等と比較しながらレビューしていく。
「NVIDIA Geforce GTX 760」の仕様
2世代前のKepler世代のミドルレンジGPU
2013年6月発売の「GTX760」は、現在のPascalアーキテクチャである「GTX1000」シリーズから数えると2世代前の「Kepler」アーキテクチャを採用したミドルレンジGPUだ。(800番台はモバイルOEMのみで自作市場には存在しない)
コアにはGTX680やGTX770と同じ「GK104」が採用され、フルスペックからシェーダー数などがカットされたモデルとなる。ビデオメモリは2GBと4GBが存在するが、安価に流通している製品の大半が2GBだ。
5年前のGPUという事で流石に最新ミドルレンジの「GTX1060」には遥かに劣るが、現在のエントリーモデルとなる「GTX1050Ti」や1世代前の「GTX960」と比較すると、省電力性を除くと大きく見劣りする事はない。
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グラフィックボードの価格上昇
2017年後半からマイニング需要やメモリ価格の高騰で、グラフィックボードの価格が上昇している。当初はRadeon RXシリーズのみに留まっていたが、直近ではGeforce GTXシリーズにも飛び火しており、発売直後を大きく上回る価格に留まっている。
最新GPUの価格高騰を回避需要によって、前世代のGTX900シリーズの中古市場にまで価格上昇が及ぶ有様だ。
外観・形状の特徴
GALAXY「GF PGTX760-OC/2GD5 MINI」レビュー
今回レビューに用いるグラフィックボードはGALAXYの「GF PGTX760-OC/2GD5 MINI」又は、これをOEM元にした玄人志向「GF-GTX760-E2GHD/OC/SHORT 」と思われる。
「思われる」というのはOEM用に卸されたものが、何らかの事情で大量にバルク品として流通している品を購入したためだ。放出当初は3980円程度だったが、4980円、6980円と徐々に値を上げてきている。
OEM品はメモリの足回りを性能ダウンした「GTX760」も存在するが、本品は自作市場のGTX760と同類スペックの様だ。メモリサイズは2GB版となる。
GF-GTX760-E2GHD/OC/SHORT(amazon)
インターフェース形状:PCI Express(3.0) x16
ベースコアクロック:1071MHz
ブーストコアクロック:1137MHz
メモリクロック:6008 MHz
ビデオメモリ:GDDR5 2GB 256bit
映像出力:HDMI×1/DisplayPort ×1/DVI×2
補助電源コネクタ:6pin×2
専有PCIスロット:2スロット
推奨電源容量:500W以上
カードサイズ:193mm x 124.3mm x 41.5mm
外観
形状はほぼ、GALAXYの「GF PGTX760-OC/2GD5 MINI」、玄人志向「GF-GTX760-E2GHD/OC/SHORT 」と同様に見える。シールの貼っている箇所のみ相違が若干みられる程度で、バルク品という事で梱包箱はなく、セロファン製の袋に直接収まっていた。
ショートサイズモデルながらも3本のヒートパイプと2連GPUファン構成で相応の冷却能力を維持している。専有スロットは2スロットに収まっている様だ。
中古のバルク品扱いとして購入したが、見る限り利用した形跡はなく新品未使用に見える。ただし、全ての放出品が新品未使用とは限らないので留意は必要だ。
サイズ比較
KeplerアーキテクチャのハイエンドGTX780のリファレンスデザインとの比較。ショートモデルという事でカード長がかなり短い事が確認できる。ITXケースやDELLやLenovo等のメーカー製PCケースでも問題なく収まる可能性が高い。
最新モニタから旧型モニタまで対応できる映像端子構成
映像端子は合計4つで4画面同時出力が可能だ。
ディスプレイポートは「DisplayPort 1.2」を1つ。最大解像度で3,840×2,160@60Hzまで対応できる。
「HDMI」は「HDMI1.4」に対応した1つ搭載している。3840×2160@30Hzをサポートするが、Geforce Driverを用いる事で特殊な動作モードで60Hzも一部の環境で可能だ。
この世代ではまだDVI端子が現役でDVI-DとDVI-Iの両方2つを備えいる。デュアルリンクを用いる事で2560×1600@60hzの表示が可能となっている。
デュアル仕様のクーラー
GPUクーラーはショート基盤ながらも、デュアル仕様だ。セミファンレスではないのでアイドル時でもファンは停止はしない。
補助電源・バックプレート
補助電源はリファレンスどおり6ピン×2となっている。ミドルレンジクラスの割には多い構成だが、GTX700番台のミドルレンジはKeplerのGTX680、GTX670の焼き直しといったGPUコアのため、止む終えない。
バックプレートなどは存在せず、基盤は剥き出し。カードサイズ全体にチップが構成されており、限界サイズまで短くしている事が伺える。
ゲーム系ベンチマーク
では「Geforce GTX 760」のゲーム系ベンチマークを見ていこう。2世代前のとなるKeplerアーキテクチャのミドルレンジGPUは2018年現在でも通用するのだろうか。現在のエントリーモデルであるGTX1050,GTX1050Ti、RX560との比較を中心に、GTX760の性能に迫っていく。
3DMARK TimeSpy
最新のDirectX12ゲーム性能を図る「TimeSpy」。GTX760はGTX1050やRX560にはやや届かないスコアになっているが、最新ローエンドのGT1030やRX550、最新APU「Ryzen 3 2200G」、「Ryzen 5 2400G」と比較すると1段上の性能を示している。
全体として見るとGTX760は現在でもエントリークラス群に収まっている様だ。
3DMARK Firestrike Full HD
現在主流のDirectX11のゲーム性能を図るフルHD「FireStrike」。ここではGTX950を超え、RX560に肉薄する健闘をみせる。最新ミドルレンジであるGTX1060やRX570との差は大きいが、この辺は現行のエントリーモデルであるGTX1050、GTX1050Tiでも同様だ。
FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者
PS3世代の古めのゲーミング性能を図るFF14ベンチ。Geforce最適化が強く、GTX760はRX560を大きく上回るスコアだ。「とても快適」判定を得ており、フルHDなら最高画質で遊べる事が示唆されている。
4Kになると、GTX760は勿論、現役エントリークラスのGTX1050Tiでも荷が重すぎる。4Kでプレイするなら、比較的軽量なFF14でもGTX1070クラスが欲しいところだ。
国産ライト ネットゲーム 4Kベンチマーク
ここからはエントリーモデルで需要の大きい国内ネットゲームのベンチマークを見ていく。軽量なゲームだけにGTX760であれば高画質・高解像度でのプレイが期待できる。
ドラゴンクエストX ベンチマーク
左:FullHD最高画質 右:4K最高画質
ドラクエベンチは昨今のGPUでは負荷が軽すぎてフルHDではスコアが20000程度でCPU・メモリベンチマークとなる。GTX760は高画質でも飽和点に達しており、GT1030やGTX750Ti,RX550と1段上の性能である事が示されている。
4K最高画質でもGTX760は「とても快適」判定となり、4Kでも高いフレームで快適にプレイできる事が期待される。RX560のスコアが振るわないなか、GTX760は何故かGTX1050,GTX1050Tiを上回っている。最新GPUはドライバの最適化不足なのか原因は不明だ。
ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク
GTX760は設定6の最高画質でも2万に迫るスコアに達しており、快適にPSO2が遊べそうだ。設定次第ではWQHDや4Kでのプレイも視野に入ってくる。Radeon勢は全体的にスコアが振るわず、GTX760はRX560を圧倒する形となった。
総じて、古めのDirectX9世代のゲームはGTX760は最新GPUと比較しても見劣りするどころか、有利に働くケースも少なくない様だ。
GPGPUベンチマーク
動画や3Dなどクリエイティブソフトで用いられるGPGPU性能を図る「CompBench2.0」。
項目によってアーキテクチャの得手不得手があるベンチだが、GTX760はGT1030などとは1ランク上の性能を示している。現行のエントリーGPUと比較すると若干遅れをとっているが、GT1060などのミドルレンジクラスとの差は大きく、カテゴリ的には最新エントリークラスと大差なさそうだ。
VRベンチマーク
VRMark
さすがにVRはGTX760は厳しい。Oculus Riftの最低基準であるGTX1050Tiの4000を大きく下まり、3000にも達しない。要求スペックの低いWindows Mixed realityなら軽量なソフトなら何とか・・といったところだろうか。
SteamVR Performance Test
現在のVRゲームの標準となるStemaVRのパフォーマンステスト。判定は0.3となり「使用不可」扱いだ。VRも視野にいれるなら最低でもGTX970,GTX1060、RX570,RX580クラスは欲しい。
V-ray ベンチマーク
GPUを利用したレンダリングプレビュー性能を測るVrayベンチ。シェーダー数が相応に聞くのか、GTX1050Tiと比較すると10秒強といった処理速度の差に収まっている。最新のQuadroのエントリークラスと比較すると半分程度の時間で処理が完了しており、用途によってはCG制作作業でも現役で利用できそうだ。
実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能
ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHDゲーミング性能と、数年前のPS3・Xbox360世代のゲームのFPSを計測してみた。
*以下 RX560=4GB、RX570=8GB、RX580=8GB
PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080
Witcher3 (ウィッチャー3)
現行機のオープンワールドRPGの代表作「ウィッチャー3」。リアルタイムの時間変化と大量のNPC、広大なフィールドで相応に負荷が高いタイトルだ。
GTX760は最高画質で平均30フレーム付近に達するが、ボトムが現行エントリーモデルと比較すると低い。最高画質でプレイするには厳しく、快適に遊ぶには画質オプションの調整が必要となる。最高画質で遊べないのは、最新エントリーGPUのRX560やGTX1050Tiでも同様だ。
For Hornar (フォーオナー)
GTX760は平均でも50フレーム近くに達しており、ボトムも30フレームと最高画質でもまずまずの結果となった。画質オプションを少し調整するだけで60フレーム安定も可能だ。NVIDIA GAME WORKSの影響かGTX760はRX560を上回っている。
DarkSouls3(ダークソウル3)
ダークソウル3では平均フレームレートも55に迫っており、GTX760でも高画質・高フレームレートのゲームプレイが期待できる。若干フレームレートの落ち込みが発生するが、これはGTX1050,GTX1050Tiも同様だ。
ここでもRX560を明確に上回ったパフォーマンスをGTX760は示している。エントリークラスのGT1030,RX550との差は大きい。
Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)
本作品はフルHDでもビデオメモリを最高画質で3GBを越えるため、2GBしか搭載していないGTX760,GTX1050のパフォーマンスの落ち込みが激しく、4GBを搭載しているRX560,GTX1050Tiとの差が大きい。
しかし、グラフィックオプションでビデオメモリを2GB付近の消費量に調整する事で、フレームレートを一気に向上させる事が可能だ。
PS3、Xbox360世代のゲーミング:4K
PS4、Xbox one世代の現行ゲームでは60フレームを維持するためには画質オプションの妥協が必要だった「GTX760」。前世代にあたるPS3、Xbox360とのマルチタイトルでは高画質60フレームはGTX760,現行エントリーGPUだと余裕だ。
ここからは、フルHDを超えた4Kゲーミングを視野にいれて見ていく。
METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)
小島監督によるメタルギア・ソリッドのファイナルの序章作品。4Kだと流石に60フレームとはいかない。ただし、GTX760だけでなく、GTX960,GTX1050Tiでも厳しい、PS3,PS4との縦マルチクラスの4KゲーミングはGTX1060,RX580以上のGPU性能が欲しい
LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII(FF13 ライトニング リターンズ )
和製RPGの代名詞「FF13」のスピンオフ作品。GTX760のGPU性能があれば4Kでの高画質ゲームもこなせそうだ。GTX1050Tiとの差も小さい。何故かGTX780でボトムが落ち込んだ結果となっているが、原因は不明だ。
BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)
上限フレームがなく、CPUもボトルネックになりにくいため、GPU性能の地力が出るバイオショック3。4Kは流石に重いのか、30フレームが限度となる。60フレーム付近を目指すにはグラフィックオプションの妥協か解像度をWQHDなど1段落とす必要がありそうだ。
Tomb Raider 2013(トゥームレイダー2013)
PS4・PS3との縦マルチとなるタイトル。GTX760は当時現役で最適化の成果なのかGTX1050TiやGTX960と大差ないフレームレートに収まっている。60フレームを安定させるためには画質オプションの妥協が求められる。
Skyrim (スカイリム)
前世代機のオープンワールドRPGの代表作。GTX760はタイトルがもっている最高画質でも4Kでほぼ60フレーム堅持できている事が伺える。この辺のタイトルなら4Kのみならず、WQHDやフルHD高リフレッシュレートモニタを用いたゲーミングも期待できそうだ。
2018年現在もエントリークラスに属する性能を維持しているGTX760
「GTX760」は2018年現在でも「RX560」に迫るゲーミング性能を見せてくれた。「GTX1050」、「GTX1050Ti」と比較すると少し届かないが、ゲーム体験を大きく左右するほどの差は出ていない。
最新GPUのエントリークラスは「GTX1060」「RX580」との性能差が多い。「GTX760」は全体の位置づけで見るとエントリークラスのGPU性能をギリギリ維持していると見て良さそうだ。
PS3、Xbox360世代のマルチタイトルであれば、GTX760のGPU性能があればフルHD最高画質60フレームで安定だ。4Kだとタイトルによっては、最高画質60フレームが可能だが、末期のPS4との縦マルチが存在するようなタイトルでは、画質オプションか解像度で妥協が必要となる。
GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動
GPU-Z情報
GPUコアは「GTX680」と同じ「GK104」。ビデオメモリはGDDR5でHyrix製と表示されている。製造プロセスは28nmでGTX900シリーズと同じだ。
GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動
以下は高負荷時のGPU-ZのSensors情報。
高負荷時のコアクロック・GPU温度・ファンスピードの推移
ショートカードという事で冷却性が気になるところだが、GPUコア温度は最高でも70℃代前半に留まっており、コアクロックも1175Mhzを中心に推移・維持出来ている。
消費電力比較
ここからは「GTX760」の消費電力にスポットを当ててみていく。2世代前のアーキテクチャとなるKeplerは最新Pascal世代とどの程度の差となって現れるのだろうか。
システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。(左:アイドル 右:フルロード)
アイドル時のシステム全体の消費電力
近年のビデオカードはアイドル時の消費電力が抑えられている。GTX760も最新世代のGPUと比較すると10W程度と高い。GTX960と水準は同程度なので、どちらかというと最新PscalアーキテクチャのGTX1000番台が優秀過ぎるといったところだろうか。
高負荷時のシステム全体の消費電力
高負荷になるとGTX760は最新エントリーモデルであるGTX1050Tiと比較すると100W近い消費電力の増加となる。同程度の性能のRX560とは100Wの差となり、ワットパフォーマンスとう観点では最新GPUに大きく遅れを取る事になる事が伺える。
電気料金比較
以下は「1日3時間、GPU負荷100%でゲームを1年プレイした」と想定した場合の年間電気料金の比較。最新エントリーGPUのGTX1050TiやRX560と比較すると年間で、1500円から2000円程度の差となる。
ネットゲームなどで長時間付けっぱなしにする様な用途だと大きな料金差となるが、週末に軽くゲームをプレイする程度なら、ほとんど差を気にしなくても良さそうだ。
「Geforce GTX760」レビューまとめ
妥協しながらならも使えるエントリークラスを維持
GTX760は現行のミドルレンジGPUと比較すると、流石に大きく見劣りするが、GTX1050TiやGTX1050,RX560と比較すると同程度かやや落ちる程度に留まっている。
Pascalアーキテクチャはミドルレンジ以上のGPUの性能飛躍率は高いが、エントリークラスはそこまでインパクトはなかった。そのため2世代前のミドルレンジGPUである「GTX760」とゲーム体験を大きく左右する程の性能差は出ていない様だ。
価格次第では「繋ぎ」として有りか?
GTX1050やGTX1050Tiが予定どおり、値下がりしていれば、ワットパフォーマンスやビデオボード事態の寿命を踏まえるとGTX760を指名買いする意味はない。しかし、最近の高騰を踏まえると、GTX760の新品に近い品が税込み4000円~6000円で手に入るなら悪くない選択肢に見える。
グラフィックボードは部品点数が多く、長く使われた中古品は故障のリスクが高い。中古品を購入する場合は、1ヶ月程度の保証があるショップを利用した方が良いだろう。
グラフィックボードの価格高騰と次世代GPUの足音
現行のPascalアーキテクチャの「GTX1000」シリーズの発売から2年が経ち、そろそろ次世代GPUの噂も具体的になってきた。Radeonシリーズから端を発したグラフィックボード全体の高騰を踏まえると、5,000円前後で状態の良いGTX760が手に入るのであれば、次世代GPUまでの「繋ぎ」として利用するのも有りなのかもしれない。
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