安価なH110マザーボードでサポートされる「Celeron Dual-Core G3930」。プロセッサ価格も3000円台に突入し、デスクトップ用としては最安値クラスのCPUとなっている。今回は「Celeron G3930」の基本性能と、「GT1030」,「GTX1050Ti」,「GTX1080」などのグラフィックボードを追加した際のゲーミング性能を中心にレビューしていく。
IntelデスクトップCPUの中でもローエンドに位置するCPUで、ゲームは動作するのだろうか。
Celeron Dual-Core G3930の仕様・概要
「遅い」から「使える」に評価が変ってきた「Celeron」
CeleronシリーズはPentiumより更に下位に位置するバリュープロセッサとなる。名称は「Celeron Dual-Core 」の冠となっており、その名のとおり、デュアルコアプロセッサ構成となる。
昔は「セレロン=遅い」といったイメージだったが、近年のプロセッサ速度の向上に伴い、ゲームやエンコードといったヘビーな作業を要求しなければ、「十分使えるCPU」という評価も増えてきた。
Celeron G3930の仕様
第7世代プロセッサ「Kabylake」世代で2コア4スレッドと大幅に性能アップした「Pentium G」だが、「Celeron G」は2コア2スレッドの据え置きだ。
基本的には第6世代「G3900」からベースクロックが+100Mhz程度上乗せされた程度で他に大きな変化は見られない。
ソケットもLGA1151プラットフォーム据え置きで、対応チップセットは「H110」、「B150」,「H170」、「Z170」に加えて「B250」、「H270」、「Z270」と幅広い。最新の第8世代プロセッサに対応する「H310」、「B360」、「Z370」は未対応となっているので留意が必要となる。
価格
発売当初は5,000円を超えてたCeleron G3930だが、1年以上経て徐々に価格を下げてきており、現在ではCeleronラインナップの中でも最安値クラスの価格となっている。H110のマザーボードの価格も低下しており、トータルコストは第8世代CPUより格段に低い。
とはいえ、ローエンド帯は価格差が小さく、スレッド数が倍になる「Penitum G4560」との価格差は3,000円程度といったところだ。1世代前の「G3900」との価格差は殆どなくなってきており、店舗によっては逆転する状況も出始めている。
外観・パッケージ
パッケージデザインはPentium G3900から大きな変化はない。同梱物はCPU本体・マニュアルに加えて、純正リテールCPUクーラーが付属する。
付属のCPUクーラーも前モデルと変化はなく、9cmのファン、アルミニウム製ヒートシンク、PMW制御対応となっている。
クーラー底面にはグリスも予め付着しているので、装着に必要なCPU,クーラー、グリスと3点全てが揃っている。OCに対応していなく、TDP51Wは程度、コスパ重視のプロセッサなので、全てそのまま利用して問題ないだろう。
CPU基本性能・ベンチマーク
ではゲーミング性能の前に、Celeron G 3930の基本性能を見ていこう。
Cinebench R15
・シングルスレッド性能
AMDのプロセッサと比較するとシングルスレッド性能の高いintelプロセッサ。ローエンド帯でも同様に、Celeron G3930がAPUとなる「AMD A」シリーズを圧倒している。 とはいえ、2.9Ghzしかないので、シングル最速のi7-8700Kなどと比較すると60%程度の値にとどまる。
前世代のG3900と比較すると、クロック分+αの伸びを見せているが、体感できるほどの性能アップとまでは行かない。Sandy世代のi5-2400にまだ届いてない状態だ。
・マルチスレッド性能
2コア2スレッドという事でマルチスレッド性能は厳しい。「G3930」は「i3-2100」以下といったところで、同世代となる1ランク上位の「G4560」との差は大きい。
Celeron同士で見ると、ここ数年で性能差はほとんど誤差といったところだ。ようやく「Pentium G3258」の背中が見えてきた程度に留まっている。
3DMark TimeSpy CPUスコア
3DMarkのCPU部分のベンチマークテスト。Physicsなどの物理演算や最適化のオクリュージョンカリング、プロシージャル生成など、主にゲームで用いられるCPU演算性能に指標となる。
2コア2スレッドは流石に厳しいのか、Pentium G4560と比較すると大きな差をつけられている。PS4、XboxOneのマルチコアに合わせて、相応にマルチスレッド化が進んだ昨今のゲームの影響が懸念される。
ゲーム系ベンチマーク
ではCeleronG3930のゲームベンチマークを見ていこう。ここからはG3930とPentium G4560,Core i7-6700Kに各GPUを載せた値で比較していく。
比較にはマザーボード・メモリ・ストレージ類は完全に一致させており、CPUだけ差し替えて計測した結果となっている。全GPUは厳しいので「CeleronG3930」と「PentiumG4560」はGT1030,GTX1050Ti、GTX1080Tiの3種のみに絞っている。最上位のGTX1080Tiからボトルネックラインを探るといった具合である。
*以降表記のないGPUはCore i7-6700K構成のスコア
3DMARK TimeSpy
最新のDirectX12ゲーム性能を図る「TimeSpy」。Celeron G3930+GTX1080Tiの場合、CPUがボトルネックとなり、i7+GTX1060に少し性能を足した程度までパフォーマンスにスポイルされている事が確認できる。
GTX1050Tiクラスであれば、GPUがボトルネックとなるのか、トータルスコアの差は小さく、CPUスコア差の範疇に収まっている様だ。
3DMARK Firestrike Full HD
現在主流のDirectX11のゲーム性能を図るフルHD「FireStrike」。CPUのボトルネックがより顕著に現れ、G3930のシステムはGTX1080Tiを搭載しても、「i7-6700K+GTX1060 3GB」以下のパフォーマンスに制限されている。
GTX1050TiでもCPUボトルネックでGPUが伸び悩み、GT1030クラスでようやく適正スコアに収まる具合だ。
FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者・蒼天のイシュガルド
FullHD
前世代のゲーミング性能を図るFF14ベンチ。「G3930+GTX1080Ti」は「i7-6700K+GTX1060 3GB」以下までスコアが落ち込む。GTX1050TiでもCPUのボトルネックが現れているが、その差は小さい。GT1030程度であれば、CPUのボトルネックは現れていない。
4K
4Kになると相対的にCPUの支配率が低くなり、GPU性能が先に頭打ちとなる。Celeron+GTX1080Tiでも相応のスコアが発揮できている事が伺うえる。60フレーム以下で、CPU負荷が低いゲームであれば、「G3930」でもGPU性能を引き出せる事が示唆される。
国産ライト ネットゲーム ベンチマーク
軽量なGPUでも動作する国内ライトオンラインゲーム系のベンチマーク。ここでは4Kやゲーミングモニタによる高フレームレートをターゲットに見ていく。尚、このタイプのベンチマークは負荷が低すぎて、高スコアになるとGPUの性能指標にはなりにくい。あくまで該当ゲームの動作指標と捉えた方が良さそうだ。
ドラゴンクエストX ベンチマーク
負荷が軽量な国内ネットゲームのベンチマーク。Wiiとの互換タイトルであり、GPU負荷が低く、CPUやメモリに依存する傾向が強い。
左:FullHD最高画質 右:4K最高画質
FullHD最高画質
フルHDではGPU負荷が低く、殆どCPU・メモリベンチマークとなる。Celeron G3930はCPUがボトルネックとなり、GTX1080TiでもGTX1050Ti以下のスコアしか出ていない。60フレームを大幅に超える高いフレームレートでは、CPUボトルネックが顕著に出るようだ。
4K最高画質
4KになるとGPU性能の支配率が高くなる。G3930はGTX1080Tiでもi7+GTX1070以下のスコアにとどまる。GTX1050Tiであれば、CPU性能がボトルネックとならずに、適正なスコアを出せている事が伺える。
ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク
フレームレートが高くなるPSP2ベンチでもCPUがボトルネックとなる傾向が顕著に出ている。G3930+GTX1080Tiはi7+GTX1050Tiの半分程度のスコアだ。CPUがボトルネックとなって、GPUの性能を殆ど発揮できていない。
CPU内蔵グラフィック性能比較
Celeron G3930のCPU内蔵GPU(iGPU)はintel HD610となり、HD630と比較するとグラフィック性能は落ちるが、GT710などのローエンドGPUより性能は高い。
流石に最新APUとなるRyzen Gには大きく劣るが、GPU性能を必要としない作業なら十分こなせる性能は持っている。
iGPU、APU,ローエンドdGPUのグラフィック性能比較
実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能
ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていこう。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHD/4Kゲーミング性能を、G3930と各GPUと組み合わせて、Core i7とのシステムと比較してみた。
*表記のないGPUはCore i7-6700K構成のスコア
PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080 & 4K
Witcher3 (ウィッチャー3)
今世代のオープンワールドRPGの指標となるウィッチャー3。広大なフィールドとリアルタイムで処理される多くのNPC、オブジェ類で相応に負荷が高いタイトルだ。
Celeron G3930はCPUがボトルネックとなり、高いグラフィックボードを載せても全くフレームレートが伸びない事が伺える。Pentium G4560と比較すると最小FPSの落ち込みが激しく、近年のマルチスレッド化したゲームにおいては、2コア2スレッドでは荷が重い事が伺える。
4KでもCPUボトルネックが顕著に出ている。G4560ではそこそこのパフォーマンスを発揮していたが、G3930ではCPUが足を引っ張って、稀に秒間10フレーム程度まで落ち込む局面が少なくない。
DarkSouls3(ダークソウル3)
ダークソウル3は上限フレームレートが60フレームに固定されており、一定のGPU性能以上は上限が固定される。G3930はCPU負荷の軽いシーンでは相応にフレームレートが伸びているが、CPU負荷が高まるとフレームレートは一気に落ち込む。
GPU性能に限らず、秒間10フレーム前後まで落ちるシーンがあり、ガクガクしたプレイ感覚で、とても快適にプレイできるとは言えない。
4Kでも同様で、2コア2スレッドのG3930のCPU性能がボトルネックとなり、ボトムフレームが大きく下がる。平均フレームレートで見ると、一見プレイできそうだが、実際のゲームプレイは困難だ。
Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)
PS4初期のタイトルのため、フルHDだとフレームレートが高くなるタイトル。上位GPUDえはG3930はCPUがボトルネックとなってフレームレートが伸び切っていない。しかし、GTX1050Ti程度であれば、相応にGPU性能を発揮できている様だ。
CPUに負荷が掛かっていないのか、GPU負荷の支配率が高まる4KだとG3930のボトルネックが顕在化していない。上位GPUでは若干の差が確認できるが、下位GPUでは誤差の範疇だ。
For Hornar (フォーオナー)
2コア4スレッドのG4560ではCPUのボトルネックがあまり顕在化していないが、2コア2スレッドのG3930は、CPUボトルネックが顕著にあらわれている。G3930はボトムフレームでも40フレームを維持しているが、落ち込みが激しいため、カクつきが目立ちやすい。
4Kだと他タイトル同様にGPUの支配率が高まり、G3930でもCPUのボトルネックは殆ど現れない。ほとんどGPU性能の指標に近いパフォーマンスが発揮できている事が確認できる。
PS3、Xbox360世代のゲーミング:4K
ここからはPS3・Xbox360世代のゲームにおける4Kゲーミング性能でG3930のボトルネックと探っていく。
METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)
PS4とのマルチタイトルでもあり、相応に負荷が高いタイトルとなるメタルギアソリッドV。G3930だと最小で45フレーム程度まで落ち込むが、なんとかプレイに支障がない範囲でとどまっている様だ。
LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII(FF13 ライトニング リターンズ )
JRPGの代名作「FF13」のスピンオフ作品。稀にCPUがボトルネックとなるのか30フレームまで一気に落ち込む局面が見られる。60フレームを下回ると、一気に30フレームで固定しようとするゲームタイトル側の挙動によるものが大きい様だ。
BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)
上限フレームがなく、CPUもボトルネックになりにくいため、GPU性能の地力が出るバイオショック3。フレームレートが高くなりすぎると、G3930は伸びない。しかしボトムでも50フレームを維持しているため、プレイ不可というわけではない。フレームレートの上下が激しいため上限フレームを60に固定してプレイした方が快適度は上がりそうだ。
Tomb Raider 2013(トゥームレイダー2013)
PS4・PS3との縦マルチとなるタイトル。CPUボトルネックが顕在化しないのか、G3930でも上位CPUと差は出ていない。ただし、ベンチマーク上では十分プレイ可能のように見えても、実プレイではバックグラウンドのCPU動作でカクつく局面も少なくない。
Skyrim (スカイリム)
前世代機のオープンワールドRPGの代表作。時折、G3930はフレームの落ち込みが現れるが、概ね40フレームは維持しており、大きな支障にはなっていない。CPU負荷が低い、数年前のゲームであれば、G3930でも60フレーム付近に達する事が伺える。
ゲーミングにおいて2コア2スレッドの制限は大きい
PS4,XboxOneのコンシュマーゲームでもマルチコア化が進んでいるためか、現世代のマルチタイトルではG3930のマルチスレッドCPU性能がボトルネックとなって、フレームレートの大幅な落ち込みが発生するようだ。
ピーク性能や平均FPSはパフォーマンスが出ている様に見えても、最小FPSが大きく低下するため、強いカクつきを知覚できてしまい、快適にプレイできるとは言い難い。
PS4,Xbox One世代のマルチタイトルは、Celeronでのプレイは困難と見たほうが良いだろう。
PS3、Xbox360世代のマルチタイトルであれば、CPUがボトルネックとなりにくい。概ね60フレームまでをターゲットにすれば、タイトルによっては何とかプレイできそうだ。
しかしOSがバックグラウンドで何らかの動作が発生する毎に、フレームレートが落ち込むケースがある。G4560では快適だったゲームでも、G3930ではCPU性能が足りない印象だ。
消費電力比較
ここからはG3930の消費電力にスポットを当ててみていく。システムは以下に統一し、CPUとGPUのみ差し替えた計測結果となっている。
アイドル時のシステム全体の消費電力
近年のCPUおよびビデオカードはアイドルはクロックが低下し、消費電力が抑えられている。CPUの違いによって大きな消費電力の差は生まれていない。上位GPUを搭載しても、アイドル状態であれば、CPUによる明確な差異は確認できなかった。
高負荷時のシステム全体の消費電力
TDP51WのCeleron G3930はグラフィックボードを搭載しない場合は省電力性が際立つ。とはいえTDP54WのPentium G4560との差は誤差の範疇だ。
GPU性能が高まると、CPUによって消費電力の差が生まれてくる。しかし、これはG3930のCPUがボトルネックとなって、GPUが100%稼働していないためと見て良いだろう。
Celeron G3930ゲーミングレビューまとめ
ゲーミングは厳しい2コア2スレッドCPU
近年のゲームは相応にマルチスレッドを利用するため、2コア2スレッドのCeleronではゲーミングは厳しいようだ。CPU負荷の低い、PS3世代の初期のゲームであれば何とか60フレームでプレイ可能ではあるが、バックグラウンドで何らかのOS動作が発生する度にカク付きが発生し、快適性は大きく損なう。
ゲーミング目的で「Celeron G3930」にグラフィックボードを搭載するのであれば「GT1030」が限界といったところだろうか。「GT1030」以上のGPUを搭載するのであれば、相応の性能を持ったCPUを用意したい。
APUという選択肢
格安ゲーミングが目的であれば、2000円程度の追加でPentium G4560にアップデートすれば、快適性が一気に向上する。消費電力も大差ないので、Celeronに拘らなければ、2コア4スレッドのPentium Gを視野に入れたほうが良いだろう。
また、Celeron+GT1030の価格はRyzen 3-2200Gとほぼ同等となる。AMDのマザーボードであれば4000円代も少なくない。ローコストなゲーミング自作PCであれば、AMDのAPUも検討材料に入れるのも悪くないかもしれない。
格安ゲーミングPC構成例
・関連記事