買い時到来!「Radeon RX 590」レビュー。価格下落でコスパ上昇したAMDの刺客はNVIDIAを脅かす存在となれるのか

「Radeon RX590」は2018年11月にAMDが投入した新GPUだ。NVIDIAの「GTX1060」と「GTX1070」の隙間を狙ったミドルレンジクラスだが、リリース時の国内価格の高さがネックとなり、評判は著しくなかった。

 しかし、発売から時を経て市場価格が下落し、当初のAMDの目論見どおり、NVIDIAの急所を捉えるグラフィックボードとなりつつある。今回は買い時が到来しつつある高コスパGPU「Radeon RX 590」をレビューしていく。

「AMD RADEON RX590」の仕様

AMD初の12nmプロセスGPU

RTX590はAMDとしては初めて製造プロセス12nmとなるGPUだ。シェーダー数などのスペックはRX580から据え置きとなっているが、プロセルルールをシェリンクした分をGPUクロックの向上に割り当てており、ブーストクロックは200Mhzの向上を果たしている。

メモリはGDDR5のままで、容量も8GBと「GTX1060」の6GBよりアドバンテージがある。クロックの大幅な上昇のトレードオフで、TDPはRX580の185Wから225Wへ上昇しており、消費電力は気になるところだ。

NVIDIAの空白を捉えた市場価格

2年前からはじまったマイニングブームの余波でミドルレンジ帯のグラフィックボードは高止まりしたまま推移しており、「RTX」シリーズの値上がりも相まって、ミドルレンジクラスのグラフィックボードは停滞気味だ。

RX590も当初は北米市場の価格より高い価格で、国内流通し始めたが、発売から時を経て大幅に価格が下落している。最安値ではGTX1060を下回りつつあり、ゲームの付属キャンペーンと相まってお買い得感は高まりつつある。

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RX590の基礎GPU性能

詳細なベンチマークを見る前に、まずは「Radeon RX 590」の基礎GPU性能を把握しておこう。(他のベンチマーク、各種ゲームのFPS比較の詳細は後述している)

3DMARK Firestrike Ultra

現行の4Kゲームの性能指標となるDirectX11ベースの「Fire Strike Ultra」。「RX590」はライバル「GTX1060」を上回り、1ランク上の「GTX1070」の背中を捉えるパフォーマンスを示している。AMDが謳う通り、ミドル~ミドルハイの間にスッポリ収まるGPUという点に大きなギャップはない様だ。

外観・形状の特徴

「SAPPHIRE NITRO+ Radeon RX 590 8 GB SE」レビュー

今回レビューに用いるグラフィックボードはSapphire社の「NITRO+ Radeon RX 590 8 GB Special Edition」だ。Sapphire社のRadeonラインナップでも上級に位置する「NITRO+」シリーズの最新作となる。


サファイア NITRO+ RADEON RX 590 8G GDDR5 SPECIAL EDITION(amaozn)

インターフェース形状:PCI Express(3.0) x16
ブーストクロック:1560 MHz
メモリデータレート: 2100 MHz
ビデオメモリ:GDDR5 8GB
映像出力:HDMI2.0b×2/DVI-D×1/Displayport1.4×2
補助電源コネクタ:8ピン×1 6ピン×1
専有PCIスロット:2スロット
カードサイズ:240mm x 120mm x 42mm


付属品・梱包

最近のグラフィックボードの傾向として、補助電源変換ケーブルやDVI変換コネクタは付属しない。本製品も付属品はドライバCDに簡易マニュアルのみとなっている。

外観

RX480,RX580のニトロシリーズはブラックカラーだったが、RX590は珍しくブルーカラーとシルバーで大胆に配色されている。落ち着いた明るめのブルーで質感と相まって、派手な配色だが悪くない。

専有PCIスロットは2スロットとなっており、4本貫いているヒートパイプが確認できる。

SapphireのロゴはブルーLEDで点灯する。ファンのLEDと相まってPCケース内のドレスアップにも拘る自作ユーザーの需要もキャッチできそうだ。

サイズ比較

リファレンスデザインとなるNVIDIAの一般的なグラフィックボードとのサイズ比較。24cm X 12cm X 4.2cmということもあり、横幅はかなり広めだ。スリムPCケースなどを利用している方は留意が必要となる。

VR利用にも便利な映像端子構成

「HDMI」は4K/60Hz映像出力、HDR対応、横長の変則アスペクト比モニタに対応した「HDMI2.0b」に対応した最新仕様を2基搭載している。VR機器を利用しているユーザーには嬉しい構成だ。

2基のディスプレイポートのバージョンは規格上では8K-60Hzや4k-120Hz、HDRをサポートする「DisplayPort 1.4a」。古いモニタを利用しているユーザーも安心のDVI端子搭載だ。

デュアルXクーラー

GPUファンは直径9.5cm冷却ファンを2つ搭載。2×8mmと2×6mmのヒートパイプと大型ヒートシンクを備えており、強力な冷却能力を持っている。

GPUファンにはブルーLEDが搭載されており、ファンが停止すると同時に消灯する。セミファレンス仕様なので、GPU温度が低い低負荷時の静音性は高い。

補助電源・バックプレート

リファレンス・デザインでは補助電源は8ピン×1で収まっているが、OCモデルである本機は8ピン×1+6ピン×1に増量されている。補助電源の位置は、内部に若干奥まっており、補助電源ケーブルとケースの干渉を緩和させる工夫が見える。

Nitroのロゴが配置された分厚いバックプレートから電源回路の熱を放出し、基盤の「たわみ」や歪みを防ぐ。このクラスのグラフィックボードなら当然ほしい。

ゲーム系ベンチマーク

では「Radeon RX 590」のゲーム系ベンチマークを見ていこう。NVIDIAに支配されたゲーミングPCのグラフィックボード市場で、AMDの新ミドルレンジGPUは一矢報いることが出来るのだろうか。

3DMARK TimeSpy 

最新のDirectX12ゲーム性能を図る「TimeSpy」。元々、RadeonはDireceX12に強い事もあり、「RX590」は「GTX1060」を圧倒している。OCモデルという事もあり、上位モデルのGTX1070に迫るスコアを叩き出している。

3DMARK  Firestrike Full HD

現在主流のDirectX11のゲーム性能を図るフルHD「FireStrike」。ここでも「RX590」はライバルNVIDIAの「GTX1060」を大幅に上回り、「GTX1070」に迫るパフォーマンスを示している。「Vega56」と「RX580」の中間という営業文句に偽りはなさそうだ。

FinalFantasy XVベンチマーク

最新の和ゲー代表となるFF15のベンチマーク。「RX590」はフルHDでは十分プレイ可能なスコアに達しており、設定を調整することで快適なプレイが期待できる。不利な仕様下でもGTX1060を僅かに上回っており、最新ゲームでもNVIDIAのグラフィックボードと比較しても見劣りしない事が示唆される。

4Kを快適に動作させるにはハイエンドクラスが必要となる。RX590も荷が重く、NVIDIA WORKSということもあり、ライバルのGPU陣と比較すると苦戦気味だ。

FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者

FullHD 最高品質

 

PS3世代の古めのゲーミング性能を図るFF14ベンチ。RX580ではGTX1060に苦戦していたが、RX590では同レベルに達している。NVIDIAに最適化されたゲームにおいても、「RX590」は十分戦えるグラフィックボードと見ていいだろう。

4K 最高品質

「RX590」は4Kでも「快適」判定を得ており、画質設定次第では4Kでのプレイも視野に入ってくる。Radeonに不利なベンチマークだが、ここでも逆境の中、GTX1060を上回る結果となった。

国産ライト ネットゲーム 4Kベンチマーク

ここからは国内ネットゲームのベンチマークを見ていく。これらのベンチは負荷が軽すぎてハイエンド帯ではフレームレートが飽和する。純粋なGPU性能というより、ゲーム動作を図る指標程度に捉えておいた方が良いだろう。

ドラゴンクエストX ベンチマーク

左:FullHD最高画質 右:4K最高画質

フルHDではベンチマークの負荷が軽すぎて、GTX1050Ti、RX560以上ではスコアに差は出ないが、「4K 最高画質」では相応にGPU性能がスコアになって現れる。古めのゲームに対してのドライバの最適化が進んだのか、RX590のスコアはGTX1070と遜色のない値に達した。

ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク

Radeonが俄然不利となるPSO2ベンチ。やはりRX590も苦戦気味だが、フレームレートレベルでは十分快適に遊べるスコアには達している。とはいえPSO2での用途がメインならGeforceが無難だろう。

VRベンチマーク

VRMark

VRレディとなる「RX590」は基準値となる5000を余裕でオーバーする8000超えに達した。GTX1060 6GBを圧倒しており、VR性能でもGTX1070に迫る性能を示唆している。

より高負荷となるBlueRoom。内部解像度を大幅に向上させるような用途の基準となるが、流石にRX590では荷が重い。1ランク上のVR体験を求めるならGTX1080、RTX2080以上のGPU性能が欲しい。

SteamVR Performance Test

現在のVRゲームの標準となるStemaVRのパフォーマンステスト。RX590はVRレディとなる8.4となり、RX580の7.2から大きく飛躍した。GTX1060には少し及ばないが、現状のSteam VRのゲームの大半が快適に動作することが期待できる。

「テストされたフレーム」に注目すると「VRレディ」以上のGPU性能の差が浮き上がってくる。横並びとなったミドルレンジ以下から1つ頭を抜けつつある。軽いVRゲームでは内部解像度を向上させる選択肢もありそうだ。

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実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能

ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHDゲーミング性能と、数年前のPS3・Xbox360世代のゲームのFPSを計測してみた。

PS4・XboxOne世代の最新ゲーム:1920×1080 & 4K

バトルフィールドV

レイトレースにいち早く対応したバトルフィールドV。ここではレイトレースをオフにした最高品質のグラフィック性能を見ている。フルHDで最高の画質でもRX590は60フレームで安定しており、通常のゲームにおいても、GTX1060を凌駕した性能が確認できる。

  流石に4KはRX590には荷が重く、RX590では30フレームを維持する事さえ困難となる。このクラスのゲームで高画質4Kを狙うならGTX1080Ti,RTX2080以上のGPU性能を持ったグラフィックボードが欲しい。

アサシングリード オデッセイ

広大なオープンワールドとリッチなグラフィックで処理も重いアサシングリードオデッセイ。フルHDでもタイトルのもつ最高の画質オプションでは重く、RX590で60フレームを維持するためには画質オプションの若干の調整が必要となる。

4Kだとタイトルの最高画質オプションでは現行のハイエンドでも60フレームを維持することが難しい。画質オプションを調整する事でRTX2080Tiで何とか・・・といったレベルなので「RX590」では勿論4Kは諦めるしかない。

PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080

Witcher3 (ウィッチャー3)

現行機のオープンワールドRPGの代表作「ウィッチャー3」。RX590のGPU性能があれば最高画質でも60フレームでのゲームプレイが視野に入ってくる。RX590はミドルレンジの敷居値を超え、一つ頭を抜けている。

流石にRX590では最高画質4Kは厳しいが、GTX1070に肉薄する健闘を見せており高負荷時の粘り強さを垣間見せる。画質オプションを大幅に下げる事で4Kゲーミングも不可能ではなさそうだ。

For Hornar (フォーオナー)

RX590はフルHDでタイトルのもつ最高画質でも60フレームを維持しており、画質設定次第では高リフレッシュレートのゲーミングモニタによるプレイも視野に入ってきそうだ。Vega56やGTX1070との差は埋めがたいが、RX580から着実な性能アップを示した。

4Kでは荷が重いのは他ゲームと同様だが、ミドルレンジ帯では頭ひとつ抜けたフレームレートを叩き出しており、画質設定を大幅に下げることで何とかプレイする事もできそうだ。

DarkSouls3(ダークソウル3)

上限のフレームレートが60フレームに固定されているダークソウル3。ミドルレンジ以上ではフレームレートが飽和しており、RX590も最高画質60フレームでのゲーミングプレイが可能となっている。

最高画質でも平均40FPSを維持しており、画質オプション次第では4Kでの60FPSも視野に入ってくる。やはりミドルレンジ帯では超えれなかった壁を突破している感があり、頭ひとつ飛び出ている。

Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)

PS4世代でも比較的初期のタイトルで負荷も軽い。平均フレームレートは120FPSに達し、高リフレッシュレートのゲーミングモニタを用いたプレイも視野に入ってくる。

RX590は4Kでも平均40フレームに達し、画質オプションを調整する事で十分60フレームを狙えるスコアだ。NVIDIA Game Work対応という事でRadeon勢は苦戦しているが、メモリ容量がボトルネックとなり脱落した3GB版のGTX1060は超えている。

PS3、Xbox360世代のゲーミング:1920×1080

ここからは前世代にあたるPS3、Xbox360とのマルチタイトルのフルHDゲーミング性能を見ていく。

METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)

小島監督によるメタルギア・ソリッド最終作品の序章。RX590は若干のボトムフレームレートの落ち込みこそあるが、殆ど60フレームを維持している。若干の画質オプション調整で60フレーム安定も狙えそうだ。

BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)

上限フレームがなく、CPUもボトルネックになりにくいため、GPU性能の地力が出るバイオショック3。この世代のゲームでもRX590は順当にGTX1060を凌駕している。

殆どのタイトルでGTX1060を明確に上回る実ゲーム性能

「RX590」は現行世代の殆どのゲームで「GTX1060 6GB」を上回る性能を示しており、AMDのアピールどおり、ミドルレンジとミドルハイの丁度中間に位置するポジションに収まっている。最新のゲームでも多くのタイトルで、フルHDなら高画質で60フレームを安定させる事ができるGPU性能とみて良さそうだ。WQHD以上では画質の妥協が必要となるが、クオリティとのトレードオフでプレイも不可能ではない。

PS3、Xbox360世代のマルチタイトルであれば、RX590のGPU性能があれば高画質4Kゲーミングが視野に入ってくる。古い設計のゲームでもGTX1060を超えるパフォーマンスを安定して発揮することが期待できる。

GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動

GPU-Z情報

GPUコアはPolaris30。メモリはGDDR5でMicron製と表示されている。製造プロセスはAMD製GPU初の12nmだ。

GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動

以下は高負荷時のGPU-ZのSensors情報。

高負荷時のコアクロック・GPU温度・ファンスピードの推移

セミファンレスモデルとうことでGPU温度が45度を下回るとファンは完全停止状態となる。高負荷時でも1000RPM前後と低速回転だが、ここまでファンの速度が緩いと、若干冷却不足気味でGPU温度は徐々に上昇していた。

Watmanで若干の調整を行うことでGPUの温度は劇的に低下するので、気になるなら多少調整しても良いのかもしれない。

消費電力比較

TDPが大幅に上昇したRX590の消費電力は若干気になるところだ。ここからはRX590のワットパフォーマンスを中心にチェックしていく。

*システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。(左:アイドル 右:フルロード)

アイドル時のシステム全体の消費電力

最近のビデオカードはアイドル時はクロックを下げて消費電力も抑えられているが、RX590はOCモデルという事もあってか妙に高い結果となった。計測誤差も考えられるが、原因ははっきりしない。この辺はドライバの成熟と共に改善するかもしれない。

高負荷時のシステム全体の消費電力

元々、ワットパフォーマンスにおいてNVIDIA製GPUに遅れを取っていたRadeon勢だが、RX590も例外ではなく、競合となるGTX1060と比較すると100W以上高い値を示している。12nmにシェリンクした部分をクロックに全振りした代償は小さく無い様だ

電気料金比較

以下は「1日3時間、GPU負荷100%でゲームを1年プレイした」と想定した場合の年間電気料金の比較。RX590はフル稼働させると、年間でGTX1060と比較した場合1500~2000円近い料金差となる。

とはいえ、社会人で毎日3時間もゲームに費やす事は難しい。睡眠時間を削ってプレイするヘビーゲーマーやオンラインゲームでゲームを起動したままPCを常時可動するような用途でない限り、致命的な料金差ではないのではないだろうか

「Radeon RX590」レビューまとめ

GTX1060とGTX1070の間に収まる順当な性能向上

AMDのミドルレンジ帯はRX480→RX580→RX590と大きなアーキテクチャの変更を行わずにクロックアップとシェリンクのみでマイナーアップデートしている。今回のRX590も12nm版RX580OCといった具合だが、GTX1060の競合となるRX480から2段階の進化を経て、絶対性能では明確に優位に立つことができたようだ。

ベンチマークだけでなく、実ゲーム性能においてもGTX1060とGTX1070の中間に位置するポジションに収まり、AMDの目論見どおり、ゲーミンググラフィックボードのボリュームゾーンをカバーする製品に仕上がっている。

価格低下でミドルレンジの新しい選択肢

発売当初はご祝儀価格と国内代理店税と相まって、微妙な評価に留まったRX590だが、発売から時間を経て価格も順当に下落し、コストパフォーマンスに優れたグラフィックボードとなりつつある。ワットパフォーマンスではNVIDIAのミドルレンジ帯に負けるが、自作PCユーザーであれば自分で調整して改善することも不可能ではなく、ライトゲーマーであれば決定的なマイナス要素にはならない。

NVIDIAのRTXシリーズは高価格で推移しており、ミドルレンジ帯が手薄だ。「Radeon RX 590」は価格低下で新しい選択肢となれるのかもしれない。

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