密かに発売され、消えたマイナーGPU「GeForce GT 740」レビュー。5年目のエントリーモデルを最新製品と性能比較

「GT740」は2014年5月に発売された「Kepler」アーキテクチャのエントリーGPUだ。ヒットグラフィックボードとなった「GTX750Ti」の影に隠れ、ひっそりと発売された事もあり、多くの自作PCユーザーには馴染みの薄い製品なのではないだろうか。しかし、OEM向けに一定の流通量もあったためか、中古市場の見かける事も少なくない。今回は、そんなマイナーGPU「Geforce GT 740」をレビューしていく。

「NVIDIA Geforce GT740」の仕様

Keplerアーキテクチャのエントリーモデル

GT740は700番代のゲーミングではないラインナップとなる「GT」シリーズの冠のエントリークラスのGPUだ。いち早く900番台のアーキテクチャ「Maxwell」を採用した、「GTX750Ti」と違い、旧来型の「Kepler」アーキテクチャとなり、「GK208」となった下位モデル「GT730」より古いコアとなる「GK107」が採用されている。

シェーダープロセッサ数は384と現行ローエンドの「GT1030」と同等になるが、クロックは993Mhzと低く、製造プロセスも28nmと旧世代となるためTDPは64Wと高い。

メモリはGDDR5版とDDR3版の双方が存在しているが、市場に流通しているモデルの大半はDDR3版だ。メモリ容量は1GBと2GBが存在するが、こちらも1GB版も少なくないため留意が必要となる。

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現行ローエンド、エントリーモデルとの価格差

「GT740」は既に終売しており、流通は中古市場のみとなる。現行のローエンドは「GT710」、「GT1030」が現役で、在庫で「GT730」が残っている状況だ。「GT740」は型番が古く見えることもあり、中古でも価格差が激しく、安い店舗ではジャンク同様の投げ売り価格だが、専門店では相応の値付けとなっている。

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外観・形状の特徴

「ZOTAC GeForce GT 740 2GB DDR3 1slot」レビュー

今回レビューに用いるグラフィックボードはZOTAC社の「GeForce GT 740 2GB DDR3 1slot」のOEM版だ。命名どおり、1スロットのコンパクトサイズで小型PCをターゲットいれた製品となる。中古市場でOEM品として大量放出されており、GT740搭載グラフィックボードとしては比較的良く見かける製品だ。


ZOTAC ZOTAC GeForce GT 740 2GB DDR3(amaozn)

インターフェース形状:PCI Express(3.0) x16
コアクロック:993MHz
メモリデータレート: 1,782 MHz
ビデオメモリ:DDR3 2GB 128bit
映像出力:mini‐HDMI×1/VGA×1/DVI-D×1
補助電源コネクタ:なし
専有PCIスロット:1スロット
カードサイズ:144.78mm x 111mm x 35.31mm


外観

形状は1スロットカード。GPUファンやヒートシンクは廉価なGT710,GT730モデルに備わっているものと違いはないが、ヒートシンクは相応に面積が増えている。

高さも1スロット枠に収まっており、ITXケースなどでも無理なく収まる。拡張カードスロットの空き枠が厳しい場合でも利用しやすいだろう。

サイズ比較

同700番代のハイエンド「GTX780」のリファレンスカードとの比較。1スロットでありながらもショートサイズでもある本製品。カード長14.4cm、幅11.1cm、高さ3.5cmでコンパクトなPCケースでも搭載しやすい。

旧型モニタ仕様の映像端子構成

「HDMI」はVer 1.0なので4K(3840 × 2160)だとリフレッシュレートは30hzに留まる。VGA端子が備わっており、旧型モニタ向けの構成で、4Kモニタなどを用いる環境では厳しい。

デュアル仕様のクーラー

GPUは小型ファン1基で冷却しており、この頃のZOTAC製品で採用されてたオレンジをポイントカラーとしたデザインだ。ファンの素材はOEM用は不透明オレンジ、自作ショップ流通用はクリアオレンジといった微妙な違いがあるようだ。

補助電源なし・バックプレートなし

TDP64Wという事で補助電源は不要だ。このクラスは軽量なのでバックプレートは勿論つかない。軽いので特に問題ないだろう

ゲーム系ベンチマーク

では「Geforce GT 740」のゲーム系ベンチマークを見ていこう。5年目を迎えるエントリーGPUは現行世代と比較すると、どのようなポジションに位置するのだろうか

3DMARK  Firestrike Full HD

現在主流のDirectX11のゲーム性能を図るフルHD「FireStrike」。DDR3版GT740ということでGDDR5版GT740と比較すると20%程度性能がスポイルされている。この辺の世代は同GPU名でも「Kepler」、「Fermi」,「DDR3」、「GDDR5」版と様々な仕様が混在しており、型番どおりにGPU性能がスケールしない点も留意が必要だ。

3DMARK TimeSpy 

最新のDirectX12ゲーム性能を図る「TimeSpy」。一応最新のiGPUより僅かに高いパフォーマンスを示しているものの、最新のローエンドdGPU「GT1030」やAPU「Ryzen 2400G」の半分以下にとどまる。近年のiGPUやAPUのグラフィク性能は高い。「GT740」は第3世代Core iシリーズ以前のアップデードが限界といったところだろうか。

FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者

PS3世代の古めのゲーミング性能を図るFF14ベンチ。最高画質では「GT740」には荷が重く、60フレームを目指すのであれば画質オプションの妥協が必要になる。ここではGDDR5を搭載したGT730に遅れを取る結果となってしまった。

国産ライト ネットゲーム 4Kベンチマーク

ここからはエントリーモデルで需要の大きい国内ネットゲームのベンチマークを見ていく

ドラゴンクエストX ベンチマーク

左:FullHD最高画質 右:4K最高画質

ドラクエベンチは昨今のGPUでは負荷が軽すぎてフルHDでは20000スコアを超えたあたりでCPUベンチマークとなり飽和する。GT740でも「とても快適」判定を得ることができ、このクラスのゲームであれば高画質と快適性の両立を図ることが期待できる。

「GT740」でも4Kは流石に厳しく、快適にプレイ可能なフレームレートを維持するには画質で大きな妥協が必要となる。DirectX9世代といえども、4Kをターゲットにするなら最低でもGTX1050Tiクラスはほしい。

ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク

比較的軽量なオンラインゲームとなるPSO2だが最高画質ではGT740でも荷が重い。とはいえ画質オプションを調整することで劇的に軽くなるのでプレイは十分可能だ。

VRベンチマーク

VRMark

GT740ではVRは厳しい。1000を切っているため、Windows MRの軽量モードやOculus Riftの45FPSモードの動作も困難となる。VRAM容量の影響かFermiのハイエンドGTX480のスコアが大きく落ち込んでいる。


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実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能

ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHDゲーミング性能と、数年前のPS3・Xbox360世代のゲームのFPSを計測してみた。

PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080

Witcher3 (ウィッチャー3)

現行機のオープンワールドRPGの代表作「ウィッチャー3」。最高画質だとGT740には荷が重く10フレームを維持する事さえ困難だ。PS4の性能が上位のGTX750Tiに近いので、それをターゲットにしたPS4世代のゲームは基本的に厳しい。

For Hornar (フォーオナー)

「GT740」はDDR3メモリがボトルネックとなっているのか下位モデルのGT730に劣った結果となってしまった。アクション重視のタイトルで画質設定を下げても快適なプレイは厳しい。

DarkSouls3(ダークソウル3)

なんとか「GT730」より高いパフォーマンスを維持しているものの、快適なプレイは厳しい。GTX750Tiなら一気にフレーレートが出ることから、PS4世代の最適化の基準がこの辺になるようだ。

Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)

全体的にGT730より高いフレームレートを維持しているが、DDR3版GT740はボトムフレームの落ち込みが激しい結果となった。1.5GBのGTX480はGPU性能ではGT740を上回っているがVRAM容量がボトルネックとなりパフォーマンスを発揮しきれていない。

PS3、Xbox360世代のゲーミング:1920×1080

ここからは前世代にあたるPS3、Xbox360とのマルチタイトルのフルHDゲーミング性能を見ていく。

METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)

小島監督によるメタルギア・ソリッド最終作品の前奏曲タイトル。GT740はHigh画質では30フレーム維持は厳しい。画質オプションを最適化することでプレイ可能となる。ここでもGDDR5版GT730と大差ない結果となっており、DDR3メモリが足を引っ張ってることが浮かび上がっている。

LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII(FF13 ライトニング リターンズ )

JRPGの代表作FF13のスピンオフ「Lightning Return」。本タイトルは60フレームを維持できない場合はタイトル側の処理で強制的に30フレームに固定されるため、GT740も30フレームに貼り付けられている。GT740でも一応PS3版より高画質にプレイ可能だ。

Tomb Raider 2013(トゥームレイダー2013)

PS4・PS3との縦マルチとなるタイトル。「GT740」はHigh画質でも平均FPS25に達しており、画質オプションを調整することでなんとかプレイ可能だ。やはりDDR3のハンデは大きく、下位モデルのGT730に届いていない。

Skyrim (スカイリム)

前世代機のオープンワールドRPGの代表作。Ultara Highでは相応に負荷が高く、GT740では30FPSを維持できない。しかし画質オプションを調整する事で劇的にパフォーマンスは改善する。適切な設定可ではGT740でも十分遊べると見て問題ない。

PS4のマルチタイトルは厳しいGT740のGPU性能

PS4がGPU性能ではGTX750Ti相当であるということもあり、最適化ターゲットの都合、GT740では現行世代のゲームをプレイするにはGPUパフォーマンスが足りないようだ。またコンシュマーゲーム機でもGDDR5が採用されている状況下、DDR3版ではメモリ帯域が足りないのかフレームレートが伸び悩む局面も少なくない。

PS3、Xbox360世代のマルチタイトルであれば、「GT740」のGPU性能でも最高画質に拘らなければ、十分快適に遊べる。Steamでセールされている格安の古いタイトルを遊びたい程度の需要であれば、GT740でも満たせそうだ。

GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動

GPU-Z情報

GPUコアはKepler「GK107」。後期版「GT640」や「GT730」が「GK208」である事を踏まえると微妙に前のコアという事になる。

GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動

以下は高負荷時のGPU-ZのSensors情報。

高負荷時のコアクロック・GPU温度・ファンスピードの推移

クロックはアイドル時は324Mhz、ロード時は992Mhzの2段階推移のようだ。Fanスピードは32%付近固定で誤差程度の範囲しか変動しない。GPU温度は50度付近で安定しており、小型ファン1スロットでも十分許容できる冷却能力を持っているようだ。

消費電力比較

ここからは「GT740」の消費電力にスポットを当ててみていく。

システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。(左:アイドル 右:フルロード)

電気料金比較

以下は「1日3時間、GPU負荷100%でゲームを1年プレイした」と想定した場合の年間電気料金の比較。GT740はエントリーモデルらしく、消費電力は控えめだ。

「Geforce GT740 」レビューまとめ

ゲーミングにおいては限られた用途となるGPU

「GT740」は当時としてもゲーミングを冠とした「GTX」シリーズではないという事もあり、現行ゲームでは通用しないグラフィックボードの様だ。PS3世代の古いゲームであれば、十分プレイ可能なGPU性能をもっているが、近年のPS4とのマルチタイトルは動作は困難となる。

Sandy世代の古いサブPCの延命程度が「GT740」の用途としては限界といったところだろうか。

PCケース内の制限で「1スロット」「ロープロファイル」「ショートカード」「ファンレス」のすべてを賄いつつ「GTX750Ti」に迫る「GT1030」であれば、プレイ可能なゲームの幅は大幅に広がる。ゲームが目的で予算が許すのであれば、最新GPUを選択肢に入れたほうが良いだろう。

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