「Geforce GTX 770」は2013年5月発売のKeplerアーキテクチャのGPUだ。GTX600シリーズのマイナーアップ世代という事もあり、知名度は低いが中古市場でも相応に搭載グラフィックボード流通しており、価格も安価だ。この3世代前となるミドルハイレンジは2019年末でも使えることが出来るのだろうか。今回は発売から6年を経たGPU「GTX770」をレビューしていく。
「Geforce GTX770」の仕様
GTX680と同じGPUコアを持ったハイミドル
GTX770はGTX680と同じGK104コアを採用した2013年発売のミドルハイレンジGPUだ。メモリの足回りに若干の改良が加えられているが、スペックは概ねGTX680と大差ない。
GTX1650と比較するとシェーダープロセッサ数は倍の1536を搭載しているが、GPUのクロック差は大きい。TPDは3倍程度高く、ワットパフォーマンスだけでなく、搭載電源にも留意が必要となる。
GTX770は中古市場で豊富に流通しており、2019年以降の値下がり幅は大きい。安価な中古品であれば新品のGTX1050Tiの半値以下、GTX1650なら1/3以下となる。ワットパフォーマンスに大きな差があるため、単純な比較はできないが、経年劣化を踏まえると、このレンジのグラフィックボードと比較することになるだろうか。
GeForce GTX770の基礎GPU性能
詳細なベンチマークを見る前に、まずは「GTX770」の基礎GPU性能を把握しておこう。(他のベンチマーク、各種ゲームのFPS比較の詳細、消費電力比較は後述している)
3DMARK TimeSpy
最新のDirectX12ゲーム性能を図る「TimeSpy」。GTX770はGTX1050Tiとほぼ同等のパフォーマンスを示しており、AMDのRadeon RX560を完全に上回っている。GTX1650と比較すると流石に厳しいが、3世代の前のミドルレンジという事を踏まえると健闘していると言えそうだ。
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外観・形状の特徴
「N770GTX Twin Frozr 4S OC」レビュー
今回レビューに用いているのはMSI社のN770GTX Twin Frozr 4S OCだ。Gamingを関するOCモデルとなっており、GTX770の中でも中古市場で良く見かける製品となる。
MSI N770GTX Twin Frozr 4S OC グラフィックスボード
インターフェース形状:PCI Express(3.0) x16
ブーストクロック:1111MHz
ベースクロック:1058 MHz
メモリクロック: 7010MHz
ビデオメモリ:GDDR5 2GB
映像出力:HDMI1.4a×1/Displayport1.2×1/DVI×2
補助電源コネクタ:8ピン×2
専有PCIスロット:2スロット
カードサイズ:260mm x 126mm x 38mm
サイズ比較
リファレンスデザインとなるNVIDIAの一般的なグラフィックボードとのサイズ比較。260mm x 126mm x 38mmということでカード長は一般的なグラフィックボードとほとんど変わらない。横幅が若干広いため、スリムタイプのタワーケースを利用している場合は留意が必要とな
スタンダードな映像端子構成
映像端子には、DisplayPort×1.2、HDMI×1.4a、DVI-D×1、DVI-I×1という、この世代のグラフィックボードではスタンダードな構成だ。HDMIのバージョンは1.4aであるため、4K表示の60hzには対応していない。4K60Hzを表示したい場合はDisplayportを利用することになる。
GPUファン
GPUファンは10cmを2基構成で、TwinFrozr 4sを採用。銅製ベースのヒートシンクで高負荷時でも35dbという動作音をアピールとしている。
補助電源
補助電源は8ピン×2というミドルレンジらしからぬ構成となっている。型番こそは70番だが消費電力は80番相当と見たほうが良さそうだ。推奨電源ユニットは本製品には記載されていないが、GTX770で8ピン×2となると最低でも600W以上、余裕を持って700Wはほしい
ゲーム系ベンチマーク
では「GTX770」のゲーム系ベンチマークを見ていこう。6年目となるミドルレンジGPUは現在の戦えるのだろうか
3DMARK Firestrike Full HD
現在主流のDirectX11のゲーム性能を図るフルHD「FireStrike」。ここではGTX770はGTX1050Tiを圧倒しており、GTX1650に迫るスコアをたたき出している。PS4とのマルチタイトルゲームであれば最新のエントリーモデルに近いパフォーマンスを発揮することが期待できる。
FinalFantasy XVベンチマーク
スクウェア・エニックスの看板タイトルとなるFF15のベンチマーク。ここではGTX1050Tiにわずかに届かない結果となった。判定は「やや重い」だが、グラフィックの画質オプションを調整することでフルHDであればPS4以上の画質を維持できそうだ。
*軽量品質にグラフィックオプションを落とすと「やや快適」程度に収まる。
FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者
FullHD 最高品質
PS3世代の古めのゲーミング性能を図るFF14ベンチ。古い設計で相性が良いのかGTX770はGTX1050 Tiを圧倒しており、最新エントリーモデルGTX1650の背中をとらえている。ライバルAMDのRadeonと比較してもRX560というより格上のRX570に近いスコアだ。
4Kでも傾向に大きな差はなさそうだ。流石に荷が重すぎるため、現行のエントリークラスですら厳しい。
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国産ライト ネットゲーム 4Kベンチマーク
ここからは国内ネットゲームのベンチマークを見ていく。これらのベンチは負荷が軽すぎてハイエンド帯ではフレームレートが飽和する。純粋なGPU性能というより、ゲーム動作を図る指標程度に捉えておいた方が良いだろう。
ドラゴンクエストX ベンチマーク
左:FullHD最高画質 右:4K最高画質
古いグラフィックエンジンとすこぶる相性が良いのかGTX770はGTX1050Tiを圧倒しており、GTX1650すらも上回る結果となった。4K最高画質でも10000を超えいるため、ドラクエ10程度なら、この辺の中古グラフィックボードでも4Kモニタを利用して十分快適に遊べそうだ。
ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク
PSOでもドラクエ10ベンチに近い傾向を示しており、GTX1050Tiを上回っている。Geforceに最適化されているためか、ライバルRadeonのエントリークラス以下のスコアはすこぶる振るわない。このクラスのベンチマークではGPU性能がスケールした結果とならない様だ。
VRベンチマーク
VRMark
VRの性能を図るVRMark。軽量なOrangeRoomでもGTX770はVRレディの水準となる5000には届かない。オキュラスリフトやWindowsMixed Reality対応機器の軽量モードであれば何とか遊べない事はなさそうだが、快適にVRを体験したいのであれば、1ランク上のGPUを用意したい。
SteamVR Performance Test
現在のVRゲームの標準となるStemaVRのパフォーマンステスト。GTX770はVRレディ以下の3.8にとどまっており、やはりVRは厳しそうだ。VRが目的であればGTX1660程度の性能は欲しい
実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能
ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHDゲーミング性能と、数年前のPS3・Xbox360世代のゲームのFPSを計測してみた。
PS4・XboxOne世代の最新ゲーム:1920×1080 & 4K
バトルフィールドV
レイトレースにいち早く対応したバトルフィールドV。ここではレイトレースをオフにした最高品質のDirectX12のグラフィック性能を見ている。GTX770は最高画質でも平均30FPS付近を維持している。画質オプションを60FPS維持できるように調整すれば十分プレイできそうだ。
アサシングリード オデッセイ
広大なオープンワールドとリッチなグラフィックで処理も重いアサシングリードオデッセイ。最高画質はさすがに荷が重い。性能では下となるGTX660と大差ない結果を踏まえると2GBというビデオメモリ容量がボトルネックとなってる可能性が高い。
PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080& 4K
Witcher3 (ウィッチャー3)
オープンワールドRPGの代表作「ウィッチャー3」。ここではGTX770はベンチマークに近い性能を示しており、GTX1050Tiを上回る結果を見せた。最高画質でも平均40FPSに達しており、PS4等のコンシュマー機では味わえないゲーム体験が期待できる。
For Hornar (フォーオナー)
ここではGTX770はGTX1050以上GTX1050Ti未満に留まっている。とはいえ平均フレームレートは55FPSに達しており、画質オプションを少し調整するだけで60FPS安定が狙えそうだ。対人メインの本作でも十分楽しめる可能性が高い。
DarkSouls3(ダークソウル3)
上限のフレームレートが60フレームに固定されているダークソウル3。GTX770のGPU性能があれば最高画質でも60FPSを維持できている。フルHDであれば最新GPUと比較してもゲーム体験に差は出ない。
Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)
PS4世代でも比較的初期のタイトルで負荷も軽いバットマン アーカム・ナイト。ここでもGTX770はGTX1050以上GTX1050Ti未満に収まっている。平均フレームレートは60FPSに迫っており、フルHDであれば高画質と快適性の両立も期待できる。
PS3、Xbox360世代のゲーミング:4K
ここからは前世代にあたるPS3、Xbox360とのマルチタイトルの4Kゲーミング性能を見ていく。
METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)
小島監督によるメタルギア・ソリッド最終作品の序章。GTX770はフルHDではオーバースペック気味で更なる高画質グラフィックオプションも狙えそうだ。
GTX770は30フレームをターゲットにすれば、4Kでも高画質を維持できそうだ。古いゲームの場合、最新GPUの伸び率が鈍いため、コストに見合った対価を受けずらい。
BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)
上限フレームがなく、CPUもボトルネックになりにくいため、GPU性能の地力が出るバイオショック3。フルHDであればGTX770のフレームレートは120FPSを軽く超えている。高リフレッシュレートのゲーミングモニタを用いたプレイも視野に入りそうだ。
GTX770は4Kでも40フレームに届きそうなパフォーマンスを示している。画質オプションを適切に設定することで4K60フレームも不可能ではなさそうだ。
タイトルによってはGTX1050Tiを上回る局面も
GTX770はフルHD環境であれば、最新ゲームでは画質オプションを微調整することで30フレームをターゲットにプレイすることが出来るパフォーマンスを持ったGPUとみて良さそうだ。超ヘビー級のゲームでなければ、画質オプションを追い込むことで60フレームでのプレイも視野に入ってくる。
PS3世代のマルチタイトルとなる古めのゲームであれば、フルHDでゲーミングモニタを用いたハイフレームレートのプレイも可能となってくる。4Kとなると、この世代のゲームでも厳しく、30フレームをターゲットにするしかない。
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GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動
GPU-Z情報
GPUコアはGTX680とおなじGK104が採用されている。メモリはGDDR5でSamsong製のようだ。OCモデルということでBoostクロックが1137Mhzに底上げされている。
GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動
以下はアイドル時(左)と高負荷時(右)のGPU-ZのSensors情報。
消費電力比較
ここからは古いグラフィックボードで懸念点となるワットパフォーマンスを中心にチェックしていく。
高負荷時のシステム全体の消費電力
GTX770は最新GPUと比較すると流石に消費電力が高く、ワットパフォーマンスは大きく劣る事となる。GTX1650と比較すると100W近い値を示しているが、RadeonのRX570と同程度の消費電力にとどまっており、十分実用の範囲内ではある。
電気料金比較
以下は「1日3時間、GPU負荷100%でゲームを1年プレイした」と想定した場合の年間電気料金の比較。実際には多くの人は1日3時間もゲームプレイは困難なので年間ベースでみると大きな差にはならない。金額ベースでみると中古のGTX770の価格を踏まえると、そこまで悪くなさそうだ。
「Geforce GTX 770」レビューまとめ
Geforce GTX770は概ね、GTX1050Ti相当のGPU性能をもっており、現行ゲームでも画質オプションを適切に設定することでプレイは可能なパフォーマンスを発揮するようだ。ただし、ビデオメモリが2GBという事もあるので、ボトルネックとならないように消費ビデオメモリを留意して設定を行う必要がある。
流石にGTX1650との差は大きいが、価格を踏まえるとカテゴリが全く別と言って良いだろう。次世代GPUまでの繋ぎや格安ゲーミングPC用途として中古GTX770をあえて選択する選択肢もなくはなさそうだが、最新のヘビーゲームではビデオメモリが2GBでは少し荷が重い。予算に余裕があるならGTX1650に突撃したほうが満足度は高くなるだろう。
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