「AMD Radeon RX550」はローエンドグラフィックボードの定番となれるのか

殆どリネームとなったAMDのRadeon RX500シリーズで唯一のトピックといえるローエンドGPUの「RX 550」の追加。最新アーキテクチャによる「補助電源なし」の低消費電力GPUとしてローエンドグラフィックボードの新しい定番となれるのだろうか。測定したベンチマークを元に競合GPUと比較していく。

ハイエンドより迷う?奥が深いローエンドグラボ選び

ローエンドクラスのグラフィックボードは価格は安いが、バリエーションや性能の振れ幅が大きい。「ファンレス」、「1スロット」、「ロープロファイル」など形状も様々で、用途や目的も「4K動画」や「マルチモニタ」、「ネットゲーム」、「低消費電力PC」、「故障したビデオカードの代替」など人それぞれだ。

ハイエンドは毎世代で一番早いGPUを選ぶだけなので、案外シンプルだ。筆者も前世代は「GTX980TI」、今世代は「GTX1080TI」と特に深く考えずにチョイスしている。

しかし、ローエンドGPUはハイエンド以上に悩む。消費電力や形状・価格など純粋な性能だけでは測れない用途の基準もあるからだ。「Radeon RX 550」もそんなローエンドGPUの1つだ。

「Radeon RX500」シリーズで唯一のトピックとなる「RX 550」

基本的にRX400シリーズのリネームとなっているRX500シリーズ。殆どのモデルではコアクロックの微増と消費電力の増大となっており、AMDファンの落胆は大きい。その中で少ないトピックとなるのは下位シリーズのRX560とRX550と言える。

RX 560はシェーダー数が微増となりRX460からの性能アップが期待できる。RX550は新規に追加されたラインナップで、AMD Radeonシリーズのローエンドクラスのグラフィックボードの更新が期待されている。果たしてRX550の性能はどの程度のものなのだろうか。

競合するローエンドクラスGPUとのスペック比較

価格帯で競合するGPUとのスペック比較が以下となる。

GTX1050TIは補助電源なしで1スロットからLowProfile、ファンレスと多用なバリエーションを持つ。GT730はNVIDIAの現行ローエンドで価格も5000円代と最安値。GT1030はPascalアーキテクチャによる新GPUだ。

TDPを踏まえるとRX550の事実上のライバルはGT1030といったところだろうか。

ローエンドGPUクラスのベンチマーク比較

RX550には高いゲーミング性能を求めるケースは少ない。しかしGPGPUを用いた作業やネットゲームなどの用途を踏まえると、GPU性能は高いに越したことはない。

普段重いゲームはプレイしないが、暇つぶしにライトなゲームくらいなら興味があるというニーズも無視できないだろう。というわけでRX550の性能を価格的に競合するGPUとベンチマーク結果を並べてみる。

尚、今回のゲームベンチマークに用いているXFXのRX550は国内では正式な発売は未だのモデルとなっている。この製品に関する詳細な評価記事は後日アップ予定だ。ここではRX550の基本性能に焦点を当てていく。

RX 550ベンチマークテスト

GPGPU性能

まずはRX550のGPUの基礎体力を見ていこう。OpenCL,CUDAを用いたGPGPUベンチマーク「CompBench」の各GPU性能の比較グラフが以下になる。

GPGPUにおいてはシェーダー数の影響が強く、RX550はGTX750Tiにやや遅れを取る結果だ。もちろんGTX1050Tiには遠く及ばない。GTX1050やGTX1050TIとはGPU性能ではカテゴリが違うと見て良いだろう。GT1030とはほぼ互角となっている。

競合するのは全世代のGTXローエンドと現役のGTシリーズ、iGPUといった所だ。

個別に見ても大きな変化はない。NVIDIAのCUDAとRadeonのOpenCLで得意不得意は多少あれど、GTX750Ti未満、GT730以上といった所だ。RX460からシェーダーをカットしている点を踏まえると順当な結果と言えるだろうか。

ゲーミングベンチはGT1030より少し有利

3DMark FireStrike FullHD

DirecrtX 11の性能指標となるFireStrke。GPGPUの結果と大きな差異はなく、GTX750Tiには少し及ばない程度で収まっている。GTX1050Tiの概ね半分といったところで土俵が違う事が分かる。NVIDIAの対抗製品となる「Geforce GT 1030」と比較すると少し有利な具合だ。

前世代のNVIDA側のローエンドGPUになる「GT730」からのアップグレードでは大きなゲーミング性能の向上が期待できる。

3DMark TimeSpy

DirectX12に強いRadeonらしく、TimeSpyではGT1030とは明確な差を付けており、GTX750Tiと同等のパフォーマンスを発揮している。RX550で先進のDirectX12対応ゲームをプレイするシチュエーションは少ないと思われるが、最新のアーキテクチャであるPolarisらしい結果だ。

FF14紅蓮のリベレーターベンチ

NVIDA有利な蒼天の後継になるFF14ベンチ。フルHD最高画質DriectX11における結果を見ても、GTX750Tiには届かないという傾向に代わりはない模様。GT1030とは互角といったところだ。Radeonが不利なベンチマークで同価格帯のローエンドという事を踏まえると検討している。

実ゲーム性能

実ゲームでのパフォーマンスも総じてベンチマーク結果に準ずる様だ。GTX750TI未満といった性能なのでGTX1050やGTX1050TIとは製品カテゴリ事態が違うといって良いだろう。ゲーム用途としては、あくまでライトなネットゲーム、旧型ゲーム向けGPUだ。

しかし画質レベルを調整する事でPS4の世代のゲームでもプレイが可能なパフォーマンスを見せてくれる。GT730とは次元が違うと言って良く、遊べるゲームの幅は広くなっている。

消費電力は魅力だが最大のボトルネックは価格か

低消費電力

RX550はGPU性能に関しては概ねGTX750Ti以下といった程度だったが、このグレードの製品は消費電力も大きな判断基準となる。

下記は条件を同じにして、筆者の環境で測定した高負荷時のシステム全体の消費電力比較。低消費電力が売りのモデルであるRX560と比較しても20W近く低いワット数を示している。

iGPUやAPUでは足りないが、少しGPUパワーかAMDの付加機能を用いたいといった要求には答えてくれる。「補助電源なし」「Fluid Motion対応」「低い消費電力」といった特徴の優先度次第といった事ところだろうか。

消費電力と動作支援の優先度によって評価が別れる価格

現在の「RX550」の価格は下落した「RX460」と比較しても同程度で、上位GPUになる「RX560」との価格差も小さい。現状のモデルではサイズや形状でも競合と比較しても魅力が薄い様に思える。

5000円台で購入できるGT730とは比較対象にならず、GTX1050と競合するような価格設定なので、純粋にGPU性能だけを見た場合には選択しずらいグラフィックボードだろう。付加価値にどの程度重きを置くかによって評価は分かれそうだ。

しばらくは価格下落とバリエーション展開待ち

価格が落ち着き次第、新しいローエンドの選択肢に

現在、国内では「Radeon RX550」は2スロット専有のショートカードタイプのみが販売されている。GPU性能を踏まえると、この形状で現在の価格は高い。需要と流通量が少なく、初値のご祝儀のプレミア価格状態だ。もう少し価格がこなれてこないと数は動かないだろう。

多様なモデルバリエーションの国内販売は今回はあるのか

ローエンドモデルにおいては1スロットやロープロファイル展開がなければ厳しい。海外ではXFX社から1スロットモデルである「RX­550P2TFG5」とLowProfileモデルになる「RX-550P4LFG5」がリリースされている。国内では代理輸入か、自分で取り寄せるしかなく、とても高い。

RX400シリーズでは放置されていた状況だけに、現実的な価格で流通可能な正式な国内展開が待たれる。

競合のGeforce GT1030にはないRX 550の強み

NVIDIAの競合ローエンドGPUにあたる「Geforce GT1030」とあわせて、現時点ではRX550は様子見といったところだろうか。GT1030の方はTDP30Wでロープロファイル&1スロットがメインで展開されている。RX550も国内のバリエーション展開をしないとシェア奪還は難しそうだ。

しかし「Radeon RX550」はAMDにしかない動画再生支援機能「Fluid Motion」やフレームをモニタと同期させる「AMD Freesync」など、Geforceにはない魅力もある。価格さえ低下すれば十分ローエンドGPUの選択肢として定番のグラフィックボードになるチャンスもあるだろう。

ハイエンドやミドルレンジが注目されがちなグラフィックボードだが、ローエンドGPUの需要も大きい。店頭でも設置面積はハイエンドより大きい店舗も少なくない。

長らくローエンドクラスは停滞しているのでAMDの「Radeon RX 550」とNVIDIAの「Geforce GT 1030」の登場で活気づいて欲しいところだ。

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