OCで下克上「Geforce GTX 1050 2GB」レビュー。1万円ちょいで買えるエントリーGPUの実力

PascalアーキテクチャのGTXを冠するグラフィックボードで最安値の「GTX 1050」。上位モデルの「GTX1050Ti」の影に隠れがちだが、オーバークロックを活用することで上位GPUに引けを取らないパフォーマンスを発揮するケースもある。今回は、そんな1万円ちょいで購入可能な高コスパのエントリーGPUをレビューしていく。

「NVIDIA Geforce GTX1050」の仕様

Pascalゲーミングモデル最安値となるGTX1050

「GTX1050」は「GTX1050Ti」のコアと同じ「GP107」を採用したエントリーGPUだ。シェーダープロセッサ数がフルGP107の「768」→「640」にカットされ、ビデオメモリ容量も4GB→2GBと半減しているが、クロックは逆にベースで1290Mhz→1354Mhz、ターボで1392Mhz→1455Mhzと高めに設定されている。

TDPは75Wで前モデルとなる「GTX750Ti」の60Wと比較すると、微増しているが、「GTX1050」「GTX1050Ti」両者ともにリファレンスモデルは「補助電源なし」でも動作している。ライバルのAMD「Radeon RX 560」と競合となっており、価格・スペック共に近い。

上位GPU「GTX1050Ti」と価格

上位モデルのGTX1050Tiはメモリ容量が4GBという事もあり、売れ筋商品だ。GTX1050はメモリ容量が半分の2GBという事もあって、流通量・商品のモデルバリエーションともに少し劣るが、価格的には「GTX1050Ti」と比較すると3,000円~5,000円程度安い。

「GTX1050」は特価では10,000円ちょいのケースも多く、「少しでも安く済ませたい」「繋ぎでグラボが欲しい」「ネットゲーが遊べれば良い」等といった需要に答えられるビデオカードとなっている。

外観・形状の特徴

「MSI GeForce GTX 1050 GAMING X 2G」レビュー

今回レビューに用いるグラフィックボードはmsi社の「MSI GeForce GTX 1050 GAMING X 2G 」。

エントリーモデルながらも「GAMIMG X」シリーズでリリースされており、ツインファン「Twin Frozr VI」を搭載している。簡易オーバークロックユーティリティ「Gaming APP」にも対応しており、サイレント、ゲーミング、OCモードの切り替えが可能だ。


GeForce GTX 1050 GAMING X 2G(amazon)

インターフェース形状:PCI Express(3.0) x16
ベースコアクロック:1442 MHz/1417 MHz /1354 MHz 
ブーストコアクロック:1556 MHz /1531 MHz/1455 MHz
メモリクロック:7108 MHz /7008 MHz /7008 MHz
ビデオメモリ:GDDR5 2GB 128bit
映像出力:HDMI2.0b/DisplayPort 1.4/DVI
補助電源コネクタ:6ピン×1
専有PCIスロット:2スロット
推奨電源容量:300W以上


付属品・梱包

ゲーミングを謳っているモデルのためか、エントリーモデルながらも梱包はリッチだ。このクラスでは安価なダンボール梱包も少なくないが、本モデルはスポンジクッションによって綺麗に収められている。

付属品はドライバとマニュアルに加えて、ゲーミングシールが同封されていた。

外観

外観は上位GPUの「GAMING X」モデルを、そのまま一回り小さくした様な形状だ。前世代GTX900シリーズのゲーミングモデルとカラーリング構成は同じだが、デザインが微妙に変更になっている。 

特徴的な「ブラック」と「レッド」の配色とファン中央の「ドラゴン」デザインは継承されている。

側面のロゴはLEDライティング機能を備えており、エントリーモデルながらもケース内の見た目も楽しめる。

ファンのサイドに配置されているLEDも色変更が可能でPCケース内の雰囲気や気分に合わせてカスタマイズが可能だ。

サイズ比較

リファレンスサイズのGTX970と比較するとカード長は微妙に短い。

メーカー公称サイズは「22.9cm×13.1cm×3.9cm」となっており、一般的なミニタワーケースであれば問題なく収まりそうだ。

最新モニタから旧型モニタまで対応できる映像端子構成

ディスプレイポートは規格上では8K-60Hzや4k-120Hz、HDRをサポートする「DisplayPort 1.4」を1つ。「HDMI」は4K/60Hz映像出力、HDR対応、横長の変則アスペクト比モニタに対応した「HDMI2.0b」に対応した最新仕様を1つ搭載している。

エントリーモデルでは定番のDVI端子が備わっており、古いモニタにも対応できる。

後方にもエアフローが確保されており、ヒートシンクを通じて冷却効率を高める。

セミファンレス仕様のクーラー「Twin Frozr VI」

GPUファンは「トルクスファン2.0」を備えた「Twin Frozr VI」を搭載。2基のクーラーで強力に冷却する。

セミファンレス仕様となっており、GPUの温度が60度以下の場合は完全停止した「0db」を実現する。静音性を重視したユーザーも安心だ。

ヒートパイプの数は上位GPUと比較すると削減されているが、TDP75Wという事を踏まえると、必要十分な冷却能力を持っていると見て問題なさそうだ。

補助電源・バックプレート

TDP75WのGTX1050は補助電源なしでも動作するモデルが多いが、本モデルはOCによる性能アップもアピールポイントとなっており、6ピンの補助電源が1つ必要となる。

推奨電源は300Wとなっているため、極端なオーバークロックを用いない限りは「補助電源なし」モデルとシステム全体の消費電力に大差はなかった。PCレイアウトの都合で「補助電源なし」必須のユーザーは他のモデルを選択するしかない。

流石にバックプレートはなく、基盤のレイアウトを見ても余裕は後方はブランクがある事が確認できる。

ゲーム系ベンチマーク

では「Geforce GTX 1050 2GB」のゲーム系ベンチマークを見ていこう。Pascalアーキテクチャの最安値ゲーミングエントリーモデルはどの程度の性能を持っているのだろうか。

3DMARK TimeSpy 

最新のDirectX12ゲーム性能を図る「TimeSpy」。「GTX1050」は旧モデルのハイエンド「GTX680」を上回るスコアを叩き出しており、この数年のGPUの進歩を感じさせる。

リファレンスクロックではライバルAMDの「RX560」と互角といったところだが、オーバークロックする事で凌駕し、上位GPUの「GTX1050Ti」との差も小さくなっている。

3DMARK  Firestrike Full HD

現在主流のDirectX11のゲーム性能を図るフルHD「FireStrike」。リファレンスでも上位の「GTX1050Ti」との差は小さいが、OCすると殆ど誤差の範囲に収まる。「RX560」と比較すると大きく差を付けているが、上位GPU「GTX1060」の背中は遠い。

FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者

Geforceに有利な前世代のゲーミング性能を図るFF14ベンチ。ビデオメモリの影響が低いためか、オーバークロックする事で上位GPUの「GTX1050Ti」を上回るスコアを叩き出している。「RX560」とは別次元の強さを見せており、前世代の「GTX960」も超えたパフォーマンスを発揮する事が期待できる。

国産ライト ネットゲーム 4Kベンチマーク

ここからはエントリーモデルで需要の大きい国内ネットゲームのベンチマークを見ていく。上位GPUでは飽和気味なベンチマークなだけに、GTX1050のコストパフォーマンスを発揮する事が期待できる。

ドラゴンクエストX ベンチマーク

左:FullHD最高画質 右:4K最高画質

ドラクエベンチは昨今のGPUでは負荷が軽すぎてフルHDではスコアが20000飽和している。GTX1050でも20000に迫る値が出ており、OCする事で上位GPUとの差は誤差の範囲に収まる。

4K解像度でも「とても快適」判定となる「7818」で、GTX1050の性能があれば4Kモニタを用いた快適なゲーミングが期待できる。こちらもOCする事で上位GPU「GTX1050Ti」とは誤差の範囲に収まる。

ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク

フルHDの最高画質「設定6」でも22701スコアに達しており、快適なプレイが期待できる。設定を調整する事でWQHDや高リフレッシュレートのゲーミングモニタを用いたプレイも可能になりそうだ。

下位クラスの「GT1030」や「RX550」、同クラスのライバル「RX560」との差も大きい。

GPGPUベンチマーク

動画や3Dなどクリエイティブソフトで用いられるGPGPU性能を図る「CompBench2.0」。ビデオメモリの差が出ないベンチのためか、OCするとGTX1050Tiとの差は誤差の範囲に収まる。用途次第では「Ti」との性能差は体感できない可能性が高い。しかし、更に上位GPU「GTX1060」との差は価格差以上に大きい様だ。

VRベンチマーク

VRMark

Windows Mixed RealityはVRの必要スペックが低く、「GTX1050」でも満たしている。低負荷のVRベンチマーク「VRMark」オレンジルームでは上位の「GTX1050Ti」と比較しても殆ど差は出ていない。(ただし一般的なVRソフトを快適に遊ぶためには「5000」程度は欲しい。)

SteamVR Performance Test

より高いスペックを要求する「Steam VR」ではVRレディの水準に達していない。OCする事でGTX1050Tiを上回る忠実度を出しているが、必要となるスコア「6」には程遠い状態だ。SteamVR対応となるVRソフトをhtc VIVE等で楽しむためにはGTX1060 6GBクラスは欲しいところだ。

実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能

ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHD/4Kゲーミング性能と、数年前のPS3・Xbox360世代の4KゲームのFPSを計測してみた。

*以下の「GTX1050」のフレームレートは標準のゲーミングモードで計測した値となっている。

PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080

Witcher3 (ウィッチャー3)

現行機の最高クラスの評価となっているオープンワールドRPG「ウィッチャー3」。フルHDで最高画質であれば30フレーム以上で安定している。最適化もバッチリな本作ではビデオメモリの消費量も比較的少ないためか、「GTX1050Ti」と比較しても差は誤差の範疇に収まっている。

毎秒60フレームを維持するためには画質オプションの調整が必要となる点は「GTX1050」「GTX1050Ti」双方で変わらない。

For Hornar (フォーオナー)

最高画質ではビデオメモリの消費量が2GBを越えるためか、GTX1050とGTX1050Tiの差が大きく出ている。「GTX1050 2GB」を用いて「For Hornar」で安定したフレームレートを確保するためには、画質オプションを調整する必要がある。

DarkSouls3(ダークソウル3)

「GTX1050」の性能があれば、最高画質でも比較的余裕があるためか平均60フレームに迫る結果が出ている。OCモデルでは上位GPUの「GTX1050Ti」と誤差の範囲に収まるパフォーマンスが期待できる。

エフェクトやシーンによってはフレームレートの落ち込みを体感できるが、フレームレートの上限が60に固定されているタイトルのため、安定したロケーション・ステージでは上位GPUと比較してもプレイ感に大きな差異は感じない。

Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)

最高画質ではビデオメモリの消費量が相応に高いため、ボトルネックが発生し、最低フレームレートの落ち込みが「GTX1050」は大きい。2GBの「GTX1050」で快適にプレイするためには画質オプションを調整する必要がありそうだ。

ビデオメモリが同容量の「GTX680」と同じ傾向を示してる点は興味深い

PS3、Xbox360世代のゲーミング:1920×1080

最新のゲームでは60フレームを維持するためには画質オプションの妥協が必要だった「GTX1050 2GB」。ここからは前世代にあたるPS3、Xbox360とのマルチタイトルのフルHDゲーミング性能を見ていく。

METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)

事実上メタルギアソリッドの最終シリーズとなる「V」の序章となる本作。PS4・PS3との縦マルチタイトルのためビデオメモリの消費量が抑えられており、「GTX1050」のGPU性能があれば、高画質で60フレーム安定のプレイが期待できる結果となっている。

LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII(FF13 ライトニング リターンズ )

和製RPGの代表作FF13のスピンオフ。フルHDの最高画質で60フレームで安定している。このクラスの負荷であれば1万円ちょいのGPUでもオーバースペックの様だ。画質オプションを調整する事でコンソールでは体験でないWQHDプレイも十分視野に入ってくるだろう。

BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)

上限フレームがなく、CPUもボトルネックになりにくいため、GPU性能の地力が出るバイオショック3。「GTX1050」は平均フレームレートも110に達しており、画質オプションを調整する事で高リフレッシュレートのゲーミングモニタを用いたプレイも視野に入ってくる。

Tomb Raider 2013(トゥームレイダー2013)

PS4・PS3との縦マルチとなるタイトル。GTX1050の性能があれば60フレーム安定でプレイ可能だ。Steamのセールで数百円で販売される事が多いだけに、安価なグラボで格安PCゲームを堪能するのも悪くなさそうだ。

Skyrim(スカイリム)

前世代のオープンワールドRPGの代表作「スカイリム」もGTX1050のGPU能力があれば、最高画質で60フレーム安定だ。かなり余裕があるので、WQHD以上の解像度でも快適に遊べるだろう。

現行タイトルでも設定の調整で快適に遊べるGTX1050

「Geforce GTX1050 2GB」は現行タイトルでもビデオメモリが大きくオーバーしない設定であれば、コンシュマーゲームを上回る快適性で遊べる性能を持ったGPUの様だ。タイトルによってはビデオメモリがボトルネックになるケースがあるが、画質設定を調整する事でフレームレートは維持できる。

PCの事が全く分からないゲーマーであれば、4GB搭載の「GTX1050ti」の方が無難だろう。しかしビデオメモリの消費量を設定でコントロールする知識があるゲーマーであれば、「GTX 1050」は十分遊べるGPUと見て良いだろう。

PS3、Xbox360世代のマルチタイトルであれば、「GTX680」同等以上の性能を持っている「GTX1050」であれば余裕でフルHD最高画質60フレームが狙える。タイトルによっては設定をコントロールする事でWQHDや高リフレッシュレートのゲーミングモニタを用いたPCならではのプレイが可能だ。

GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動

GPU-Z情報

GPUコアは「GTX1050TI」と同じ「GP107」。ビデオメモリはGDDR5でSamsung製と表示されている。製造プロセスに14nm FinFETを採用しており、高い省電力性を実現する。

GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動

以下はアイドル時と高負荷時のGPU-ZのSensors情報。

高負荷時のコアクロック・GPU温度・ファンスピードの推移

セミファンレス仕様のため、GPUのコア温度が60度に達するまではファンスピードが0%で無音駆動を実現している。

GPUのコアクロックはスペックシートを大きく上回る1800Mhz付近を維持し、高い冷却性能の元に高クロックのPascalアーキテクチャの特徴が出ている。

ファンスピードも高負荷でも低速を維持しており、静音性は高い。

消費電力比較

ここからはTDPが「GTX1050」の消費電力にスポットを当ててみていく。オーバークロックモデルでも省電力性は維持できているのだろうか。

システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。(左:アイドル 右:フルロード)

アイドル時のシステム全体の消費電力

昨今のビデオボードはアイドル時はクロックが抑えられるため消費電力が小さい。「GTX1050」も低い水準に保たれているが、OCモデルや豪華なファン、LEDの影響か上位の「GTX1050Ti」と比較すると数w程度高い値を示している。とはいえ殆ど誤差で無視できる範疇だ。

高負荷時のシステム全体の消費電力

「GTX1050」はOCモデルながらも、少ないビデオメモリやシェーダー数が少ない影響のためか、「GTX1050Ti」と比較しても低い消費電力を維持できている。システム全体で150Wを下回る省電力性を発揮しており、高いワットパフォーマンスが期待できる。

「GTX680」と比較すると半分程度の消費電力で同程度以上の性能を実現している。

電気料金比較

以下は「1日3時間、GPU負荷100%でゲームを1年プレイした」と想定した場合の年間電気料金の比較。同性能の「GTX680」と比べると新品ゲーム1本分とまではいかないが、Steamのセール価格程度の差は出ている。

最も消費電力の高い「Vega 64」とは8,000円近い差となっており、新品の大作ゲーム1本分の価格となる。

「Geforce GTX1050 2GB」レビューまとめ

設定変更が出来るゲーマー向けエントリーGPU

「GTX1050」はグラフィックメモリが「GTX1050Ti」の4GB比較すると半分の2GBしかないため、ゲームタイトルの設定によってはVRAMがボトルネックとなり、パフォーマンスが落ちる。しかし、一部のグラフィックオプションを適正に設定する事で、ほぼGTX1050Tiを同様のフレームレートを維持する事ができる玄人向けのエントリーゲーミングGPUの様だ。

「どの設定をコントロールすればビデオメモリの消費量を抑える事が出来るか」といった事が、自分で確認・調整できる知識・スキルがあれば、ゲーム体験を大きく損なう事なく活用する事が出来るだろう。

OCモデルは自作PCならではの醍醐味も味わえる

「GTX1050」は高い冷却能力を持ったモデルであれば、オーバークロックとビデオメモリの設定次第では「GTX1050Ti」と遜色がない運用が出来て、エントリーモデルながらも遊び甲斐のあるグラフィックボードとなる。

「Geforce GTX 1050 2GB」は「コストは抑えたいが、何となく最新自作PCパーツを触りたい」、「次世代GPUまでの『繋ぎ』としてグラボが欲しい」、「Steamセールの格安PCゲームを楽しみたい」、「国産ネットゲームを快適に遊びたい」といった目的であれば、十分需要を満たしてくれそうなGPUに仕上がっている様だ。

予算に余裕があれば、メモリ容量に余裕がある「GTX1050Ti」がオススメだが、どのみちエントリーGPUの寿命は長くなく、次世代GPUが発売すると性能不足になる。価格と相談して、あえて「今を楽しむ」ためのGPUとして「GTX1050」を選択するのも悪くないかもしれない。

MSI GeForce GTX 1050 GAMING X 2G グラフィックスボード(amazon)

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