2019年の「GeForce GTX 750 Ti」レビュー。5年目を迎える名機を最新GPUと徹底比較

 「GTX750Ti」はMaxwellアーキテクチャ第1弾となる2014年2月発売のエントリーGPUだ。消費電力と価格が低く、ロープロファイル、1スロット、ショートカード、ファンレスなど様々なバリエーションのモデルが発売され、メーカーPCのアップグレードや小型PCで重宝されるロングセラーモデルとなった。かつての名機は2019年でも戦えるのだろうか。今回は5年目を迎える「Geforce GTX 750Ti」をレビューしていく。

「NVIDIA Geforce GTX750Ti」の仕様

一足早くMaxwellアーキテクチャを採用

GTX750Tiは史上初のMaxwellアーキテクチャを採用したGPUとなる。 GTX700シリーズはMaxwellの1世代前のKeplerアーキテクチャを用いたGPUだが、GTX750TiとGTX750のみ、1世代新しいMaxwellを先行採用する形となった。Maxwellアーキテクチャは、その後の改良され、GTX900シリーズで第2世代Maxwell(GM20X)として採用されている。

シェーダープロセッサ数は640、メモリも2GBとGTX1050と同等となる。ベースクロックが控えめな分、TDPは60Wの収まっており、電源ユニットが300W程度のシステムでも運用が可能だ。もちろん補助電源不要でメーカー製PCのアップグレードにも適している。

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現行ローエンド、エントリーモデルとの価格差

GTX750Tiは既にGTX1050Ti置き換わっており、中古市場でのみ流通している。価格は安ければ5000円程度で手に入り、コスト的には現行ローエンドモデルのGT1030あたりが競合となる。3倍の価格を払えば、新品のGTX1050、GTX1050Tiが視野に入るが、もはや別カテゴリと見てよいだろう。

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外観・形状の特徴

「ELSA GeForce GTX 750 Ti 2GB S.A.C」レビュー

今回レビューに用いるグラフィックボードはELSA社の「ELSA GeForce GTX 750 Ti 2GB S.A.C」。S.A.Cは「Silent Air Cooling」で静音ファンと小型ショートボードが特徴だ。ELSAは2年保証を謳っており、他社の1年保証品と比べて市場価値も高かった。


ELSA GeForce GTX 750 Ti 2GB S.A.C(amaozn)

インターフェース形状:PCI Express(3.0) x16
ベースコアクロック:1040 MHz
メモリデータレート: 5400 MHz
ビデオメモリ:GDDR5 2GB 128bit
映像出力:mini‐HDMI1.4×1/DVI-I×1/DVI-D×1
補助電源コネクタ:なし
専有PCIスロット:2スロット
カードサイズ:145mm x 111mm x 37mm


付属品・梱包

ELSAという事で他社のグラフィックボード製品と違い、ユーザーサポートの姿勢が違う。丁寧な分厚い日本語マニュアルは逆に新鮮だ。

*セットアップ方法から設定まで懇切丁寧に日本語で解説されているマニュアル

外観

形状はショートカード。カード長は14.5cm。 横幅は 11.1cm で補助電源が不要なため、フルハイト対応PCケースなら殆ど問題なく収まる。2スロットをフル占有するので、吸気のためファン側は1スロット余裕を持たせたい。

サイズ比較

リファレンスデザインとなるGTX1080Ti FEエディションとのサイズ比較。ショートサイズという事もあり、かなり短く、コンパクトPCでも利用可能なケースは多い。

旧型モニタ仕様の映像端子構成

「mini‐HDMI」はVer 1.4なので4K(3840 × 2160)だとリフレッシュレートは30hzに留まる。DVIを利用する事で「2560 × 1600」の60hzが可能となるが、映像端子の構成は「Mini – HDMI × 1」「DVI-D × 1」「DVI-I × 1」と全体的に古いモニタ向けなので留意が必要だ。

デュアル仕様のクーラー

GPUファンは直径8.5cmのS.A.C (サイレントエアクーリング)冷却ファンを1つ搭載。ヒートシンクは廉価に見えるが、GTX750TiのTDPを踏まえると必要十分なのだろう。

補助電源なし・バックプレートなし

TDP60Wという事で補助電源は不要だ。このクラスは軽量なのでバックプレートは勿論つかない。軽いので特に問題ないだろう

ゲーム系ベンチマーク

では「Geforce GTX 750Ti」のゲーム系ベンチマークを見ていこう。かつてのベストセラーとなるエントリーGPUは2019年でも通用するのだろうか。

3DMARK TimeSpy 

 

最新のDirectX12ゲーム性能を図る「TimeSpy」。「GTX750TI」は最新ローエンド「GT1030 」を僅かに上回り、ライバルAMDのローエンド「RX550」と殆ど同等だ。「DirectX12」環境下ではアーキテクチャが新しくなるほど、スコアが高めに推移している事が伺える。

3DMARK  Firestrike Full HD

現在主流のDirectX11のゲーム性能を図るフルHD「FireStrike」。現在のローエンド「GT1030」、「RX550」を明確に上回るが、「GT1050」との差は大きい。過去のハイエンド「GTX480」以上「GTX580」未満といったポジションにつけている。

FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者

PS3世代の古めのゲーミング性能を図るFF14ベンチ。「GTX750Ti」は「最高画質」で「快適」判定を得ており、フルHDであれば画質とフレームレートの両立が狙える。このクラスのゲームであればGTX750TiのGPU性能で十分遊べる事が期待できる。

国産ライト ネットゲーム 4Kベンチマーク

ここからはエントリーモデルで需要の大きい国内ネットゲームのベンチマークを見ていく。上位GPUでは飽和気味なベンチマークなだけに、GTX1050Tiのコストパフォーマンスが際立つ事が期待される。

ドラゴンクエストX ベンチマーク

左:FullHD最高画質 右:4K最高画質

ドラクエベンチは昨今のGPUでは負荷が軽すぎてフルHDではスコアが20000飽和している。GTX750Tiは「すごく快適」判定で、ゲーミングモニタを用いたプレイも視野に入ってくる。

GTX750Tiは4K解像度だと「ふつう」判定となる。最高画質で遊ぶには荷が重く、GTX750Tiで4Kゲーミングを求めると画質設定に妥協が必要となる。

ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク

GTX750Tiだと設定6では荷が重い様だ。PSOは画質設定を1段落とす事で劇的にスコアが向上する。高いフレームレートを維持しながらフルHDで遊ぶには適切な画質設定が必要になる。

GPGPUベンチマーク

動画や3Dなどクリエイティブソフトで用いられるGPGPU性能を図る「CompBench2.0」。

シェーダー数の影響が強いのか、GT1030を大きく上回る性能を示している。項目によって若干のバラつきもあるがRX550より高いGPGPU性能のあるグラフィックボードとみてよさそうだ。

VRベンチマーク

VRMark

GTX750TiにはVRは荷が重く、基準となる5000は遥かに遠い。WindowsMRの低画質モードなら何とか動く程度だ。VRが目的なら最低でもGTX1060,RX580程度は欲しい。

SteamVR Performance Test

現在のVRゲームの標準となるStemaVRのパフォーマンステスト。「使用不可」判定で、90フレーム以下のフレームが94%を占める。同性能のGPUを持つPSVRが如何に工夫してVRを動作しているかが垣間見える。

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実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能

ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHDゲーミング性能と、数年前のPS3・Xbox360世代のゲームのFPSを計測してみた。

PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080

Witcher3 (ウィッチャー3)

現行機のオープンワールドRPGの代表作「ウィッチャー3」。PS4世代という事で最高画質ではGTX750Tiだと荷が重い。画質オプションを「中」に変更することでGTX750Tiでも十分快適にプレイする事ができる。

For Hornar (フォーオナー)

ビデオメモリが2GBしか搭載していないため、GTX750Tiのボトムフレームの落ち込みが大きい。平均フレームレートは維持できているため、画質オプションを微調整して2GB以内に収まるように設定すれば画質を損なわずにFPSを維持できる。

DarkSouls3(ダークソウル3)

最高画質でも平均30FPSを維持しており、PS4以上の画質で同等のフレームレートで遊ぶ事が期待できる。画質オプションを調整する事で60FPSでのゲーミングも視野に入ってくる。

Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)

PS4世代でも比較的初期のタイトルで負荷も軽い。GTX750TiとGTX1050は2GBのメモリサイズがボトルネックとなっているためかボトムフレームが同等である点は興味深い。高い画質設定でも30FPSをターゲットにすれば十分プレイ可能だ。

PS3、Xbox360世代のゲーミング:1920×1080

ここからは前世代にあたるPS3、Xbox360とのマルチタイトルのフルHDゲーミング性能を見ていく。

METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)

小島監督によるメタルギア・ソリッド最終作品の序章。GTX750TiはHigh設定でも60フレームで安定しており、十分快適にプレイできる。GT1030では微妙に力不足だったが、GTX750TiのGPU性能があれば安定している。

LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII(FF13 ライトニング リターンズ )

JRPGの代表作FF13のスピンオフ「Lightning Return」。PS3世代のゲームという事でタイトルが持っている画質オプションを最大にしてもフルHDなら60FPSでプレイ可能だ。

BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)

上限フレームがなく、CPUもボトルネックになりにくいため、GPU性能の地力が出るバイオショック3。VeryHighでもGTX750Tiであれば平均フレームレートは60に達する。

Tomb Raider 2013(トゥームレイダー2013)

PS4・PS3との縦マルチとなるタイトル。こちらもGTX750TiのGPU性能があればHigh画質オプションで60FPS安定だ。GT1030では微妙に力が足りてない壁を突破した感がある。

現行タイトルなら30FPS、数年前なら60FPSでプレイ可能

「Geforce GTX750 Ti」はPS4,XboxOneとのマルチタイトルで画質オプションを調整することで30FPSで遊ぶ事が可能なGPU性能を維持していると見てよさそうだ。ビデオメモリの消費量が2GBを超える局面ではフレームレートが落ち込むが、グラフィックオプションを適切に調整することで回避することもできる。

PS3、Xbox360世代のマルチタイトルであれば、「GTX750Ti」のGPU性能があれば最高画質60フレームで安定だ。Steamで格安で発売されているタイトル群がお目当てなら「GTX750Ti」で十分堪能する事ができる。

GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動

GPU-Z情報

GPUコアはMaxwell第1世代の「GM107」。ビデオメモリはGDDR5でHynix製と表示されている。製造プロセスに28nmを採用。

GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動

以下は高負荷時のGPU-ZのSensors情報。

高負荷時のコアクロック・GPU温度・ファンスピードの推移

ショートカードモデルながらもGPU温度は高負荷時でも70度以下を維持している。コアクロックは1176Mhzをピークに1100~1170Mhzの間で制御されているようだ。ファンスピードは30%以下でノイズは極めて小さい。

消費電力比較

ここからは「GTX750Ti」の消費電力にスポットを当ててみていく。

システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。(左:アイドル 右:フルロード)

アイドル時のシステム全体の消費電力

最近のビデオカードはアイドル時はクロックを下げて消費電力も抑えられている。GTX750Tiも同様の機能を備えているが、最新のGPUと比較すると少し高めだ。とはいえ10W程度なので、CPUやHDDの状態によっては逆転しるう誤差程度の差と捉えて問題ないだろう。

高負荷時のシステム全体の消費電力

GTX750Tiは現行のローエンドGPUと比較しても遜色のない省電力性を示している。GPU性能を踏まえると、まだまだ現役級のワットパフォーマンスを発揮している様だ。

「Geforce GTX750 Ti」レビューまとめ

現行ローエンドクラスGPU相当の性能

「GTX750Ti」は現行のローエンドクラスにあたる「GT1030」より少し高い性能で、RX550などと殆ど同等の性能と見てよさそうだ。最新のゲームでも画質設定を十分落とすことで30FPSで遊べる。PS4やXboxOneといったコンソールゲーム機と大差ないゲーム体験を味わう事が可能だ。PS3世代のゲームであれば、ゲーム機では味わえない高解像度、高画質。高FPSで遊べる。

予算が十分に確保できるなら最新GPUの方がワットパフォーマンスは高い。次のGPUまでの「繋ぎ」として中古のGTX750Tiを狙うのも悪くないが、中古品には相応のリスクも伴う。数年間利用するつもりであれば、少し予算を加えて、現行グラフィックボードを購入したほうが良いだろう。

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