NVDIA「Geforce GTX580」は2011年に発売されたFermiアーキテクチャのGPUだ。最新モデルのハイエンド「RTX2080」から数えると5世代前となる。発売から8年を経たかつてのハイエンドグラフィックボードは2019年でも通用するのだろうか。今回はNVIDIAが苦戦したFermi時代のGPU「GTX580」をレビューしていく。
「NVIDIA Geforce GTX580」の仕様
GTX480からわずか8ヶ月後に投入
「GTX580」はNVIDIAの40nmプロセスで製造されたGF110コアとなるFermiアーキテクチャのハイエンドGPUだ。前モデルGTX480が高発熱、高消費電力、歩留まりの悪さで苦戦している中、改良モデルとして投入されたモデルとなる。当時、GTX480の発売からわずか8ヶ月後に投入されており、当時物議を醸しだした。
GF100ではフルスペック512から480に削減されていたが、GF110ではフルスペックの512で投入されている。最適化も進み、TDPも250Wから244Wと僅かに減少している。最新GPUのRTX2080のシェーダープロセッサ数が3000近い事を踏まえると、8年間で6倍に達したことが伺える。
発売から7年後に突如DirectX 12対応。そしてサポート終了
さらに発売から7年を経た2017年のNVIDIAグラフィックドライバーの「GeForce Game Ready Driver 384.76」アップデートで、Fermi世代のGPUがDirectX12に対応され、最新のAPIを利用したソフトウェアでもGPU能力の範囲内で利用が可能となった。
しかし2018年4月のドライバアップデートでFermiアーキテクチャはサポートが終了。Release バージョン390以降はドライバのサポート対象外となる。したがって、GTX400、GTX500シリーズをインストールする場合はドライババージョン390以前となる。
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外観・形状の特徴
「 MSI N580GTX Lightning 」レビュー
今回レビューに用いるグラフィックボードはMSI社の「 N580GTX Lightning」だ。
現在も継続している高クロックオーバークロックブランドとなる「Lightning」ラインナップに位置し、リファレンスモデルより1ランク高い性能を引き出すモデルとされている。発売当初は7万円以上した製品となる。
インターフェース形状:PCI Express2.0 x16
コアクロック:832MHz
メモリクロック:4,200MHz
ビデオメモリ:GDDR5 1536MB
映像出力:Dual DVI×2 / HDMI×1/DisplayPort×1
補助電源コネクタ:8ピン×2
専有PCIスロット:2スロット
カードサイズ:305x127x45mm
この時代のLightningモデルはシルバーのアルミカバーで覆われており、昨今のプラスチックベースのグラフィックボードより高級感がある。カラーはシルバー+ブラック。このデザインはGTX600シリーズのモデルでも踏襲されている。
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サイズ比較
カード長は305mmと30cmを超えており、標準的なグラフィックボードより巨大だ。横幅も12.7cmと相応のPCケースが必要となるサイズとなっている。
映像端子構成
映像端子はデュアルリンクのDVI端子が2基配置され、HDMIとDisplayPortが1基ずつ搭載されている。HDMIはサポートがフルHDの1920×1080の60Hzまでなので留意が必要となる。DisplayPortとDVIを利用すれば2560×1600まで拡張可能だ。
GPUクーラー
GPUファンは2基の9cmのデュアルファン仕様「Twin Frozr III」を採用。エアフローを向上させるためのプロペラファンを採用している。Ferimiの爆熱仕様によって、グラフィクボードの冷却性能も一気に洗練化されていった。
側面からは2本のヒートパイプが確認できる。ミリタリークラス2製品を謳っており、そのためか現在も中古市場で多くの稼働品が流通している。
補助電源・バックプレート
補助電源は8ピン+8ピン構成。OCモデルということでリファレンスモデルの8ピン+6ピンより余裕を持っている。
背面はバックプレートがない。この時代のハイエンドはまだバックプレート仕様が標準されていなかった様だ。
ゲーム系ベンチマーク
では「Geforce GTX 580」のゲーム系ベンチマークを見ていこう。8年を経た2011年当時のハイエンドモデルは2019年現在、どのようなポジションに収まるのだろうか。
3DMARK Firestrike Full HD
現在主流となるDirectX11のフルHDゲーミング性能を図る「FireStrike」。「GTX580」は最新ローエンド「GT1030」やKepler時代のエントリー「GTX750Ti」を上回る。しかし、現行のエントリーモデル「GTX1650」との差は大きく、半分程度のスコアに留まる。
3DMARK TimeSpy
2017年にFermi世代のGPUがDirectX 12に対応した事によって、「TimeSpy」がGTX580で走らせる事ができる。DirectX12の最適化はなされていないため、「何とか動く」といったところで、ローエンドの「GT1030」未満の結果となった。
FinalFantasy XVベンチマーク
JRPGの代表作FF15ベンチマーク。ここでも「GTX580」は「GT1030」以上「GTX1050」未満といったところだ。ライバルAMDの「RX560」に迫るスコアは健闘といった所だろうか。
FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者
PS3クラスの古めのゲーミング性能を図る「FF14」ベンチマーク。設計の古いゲームとの相性が良いのかGTX580は大健闘しており、GTX1050に迫るスコアを弾きだした。RX560を上回っており、かつてのハイエンドの意地を見せている。
国産ライト ネットゲーム ベンチマーク
ここからは国内ネットゲームのベンチマークを見ていく。尚このクラスのゲームの場合、負荷が軽すぎてスコアが飽和気味だ。純粋なGPU性能というより、これらのゲーム動作を図る指標程度に捉えておいた方が良いだろう。
ドラゴンクエストX ベンチマーク FullHD最高画質
ドラクエ10ベンチではフルHDでは負荷が軽すぎて、最新GPUではエントリークラス程度でスコアは飽和する。GTX580も飽和スコアに近いスコアを弾きだしており、このクラスであれば十分以上のパフォーマンスを発揮する事が伺える。4Kでは相応に負荷が高く、GPUの性能がスコアとなって現れる。GTX580は、GTX1050に迫るスコアを出しており、RX560を圧倒した結果となった。古いゲームであれば、古いアーキテクチャが有利に働くようだ。
ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク
GTX580はGTX750TiやRX560を大きく上回っており、GT1030をダブルスコア以上で圧倒している。古いゲームであれば「GTX580」は十分性能を発揮するようだ。
VRベンチマーク
VRMark
PCの一般市場には「VR」など存在しなかった時代のGPUである「GTX580」。流石に荷が重すぎて、指標となるVRレディの「5000」に達しない。フレームレートも平均55FPSでVRで必要となる90FPSには程遠い。
SteamVR Perfomance Test
SteamVRでも同様でGT1030にすら及ばない結果となった。FermiアーキテクチャのGTX480、GTX580が全くスコアが伸びておらず、古いアーキテクチャのGPUではVRは厳しい事が伺える。
実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能
ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHDゲーミング性能と、数年前のPS3・Xbox360世代のフルHDゲームのFPSを計測してみた。8年前のハイエンドは現在のゲームでも動作するのだろうか。
PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080
Witcher3 (ウィッチャー3)
PS4世代のオープンワールドRPGの傑作ウィッチャー3。GTX580は最高画質でも平均27FPSに達しており、グラフィクオプションを調整する事でフルHD30FPSをターゲットにプレイ可能のようだ。ただし、ノヴィグラドなどVRAM消費量の大きい地域では瞬間的なフレームレートの低下が確認される。
For Hornar (フォーオナー)
ここでもフルHDであれば平均30FPSに近い値に達しており、画質オプションを調整する事でフルHD30FPSをターゲットにプレイできそうだ。VRAM消費量を見ながら調整する事でフレームレートも安定している。
DarkSouls3(ダークソウル3)
ダークソウル3でも最高画質でもフルHDであれば30FPSをターゲットにプレイできそうだ。やはりエリアの境界でのフレームレートの落ち込みが激しいので、VRAM消費量が1.5GB内に収まるようにグラフィックオプションを調整する必要はある。
Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)
同アーキテクチャの「GTX480」では全くフレームレートが安定しなかったが、「GTX580」はGPU性能をスケールしたパフォーマンスを発揮している。高画質ではVRAM消費量が大きいので、画質オプションを下げることでフレームレートは安定する。
PS3、Xbox360世代のFull HDゲーミング:1920×1080
ここからは前世代にあたるPS3、Xbox360とのマルチタイトルゲーミング性能を1920×1080ドット設定で見ていく。
METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)
メタルギアソリッドシリーズの事実上の最終作シリーズとなる「V」の導入作品。GTX580は画質Highでもフレームレート60で安定している。このクラスのゲームだれば画質と快適性の両立が可能の様だ。
LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII(FF13 ライトニング リターンズ )
JRRGの代表作FF13のスピンオフ作品。このタイトルは60フレームを維持できない場合は強制的に30フレームに固定されてしまう。PS3のタイトルというだけあって、「GTX580」のGPU性能であれば余裕で60FPSで動作可能だ。
BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)
上限フレームがなく、CPUもボトルネックになりにくいため、GPU性能の地力が出るバイオショック3。DirectX9世代のゲームではGTX580はハイエンドらしい性能を見せており、GT1030やGTX750Tiを圧倒し、GTX1050やGTX1050Tiにすら迫る結果となった。
Tomb Raider 2013(トゥームレイダー2013)
PS4との縦マルチとなるタイトル。GTX580はHihgh画質でも60FPSで安定しており、GT1030やAPU Ryzen2400Gより安定したゲームプレイが可能のようだ。
VRAM消費量に気をつけることでフルHD30FPSを狙える
Geforce GTX580はPS4,XboxOneのマルチタイトルDirectX11世代のゲームでもVRAMの消費量さえ気をつければ、フルHD30FPSをターゲットにプレイが可能のようだ。ただし最新ゲームの場合、VRAM消費量が大きいため最低画質近辺までグラフィックを落とす必要がある。2016年くらいまでのゲームであれば、何とか遊べるといったところだ。
PS3世代のゲームであれば、ビデオメモリがボトルネックとならないためか、GTX580のGPU性能を存分に発揮することができる。2013年より前のゲームであれば、Steamで安売りされているタイトルをコンシュマーゲームでは味わえない高画質、高フレームで遊ぶ事が可能の様だ。
GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動
GPU-Z情報
GPUコアは「GF110」で製造プロセスは40nm。Hyrix製のメモリを搭載と表示されている。GPU-ZのDirectX Supportの表示は「11.0」表記のままで追いついていない。
GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動
以下はアイドル時と高負荷時のGPU-ZのSensors情報。
高負荷時のコアクロック・GPU温度・ファンスピードの推移
下記のグラフはベンチの起動から終了後にアイドルに戻るまでのGPUクロックと温度とクーラーファンの挙動グラフ。高熱で悩まされた前GTX480と比較すると、圧倒的に低発熱に抑え込めている。GPUクロックは上限832.5Mhzで安定している。
消費電力比較
ここからはGTX580の電力消費量にスポットを当ててみていく。前モデルGTX480は爆熱高消費電力で悩まされたFremiアーキテクチャ。改良版となるGTX580は如何程なのだろうか。
システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。(左:アイドル 右:フルロード)
高負荷時のシステム全体の消費電力
「GTX580」は現在のミドルレンジ「GTX1660Ti」を上回り、ライバルAMDの現行ミドルレンジ「RX570」に近い消費電力となった。製造プロセスが4世代前という事もあり、流石にワットパフォーマンスは低い。
電気料金比較
以下は「1日3時間、GPU負荷100%でゲームを1年プレイした」と想定した場合の年間電気料金の比較。中古で安いGTX580だが性能の近いGT1030と比較すると4000円近い価格差となる。長時間プレイする場合は留意が必要だ。
「Geforce GTX580」レビューまとめ
画質オプション次第では何とかゲームが可能
「GTX580」は1.5GBのビデオメモリがボトルネックとなる局面ではフレームレートが大きく落ち込む特性があるが、画質オプションをうまく調整することでPS4世代のマルチタイトルでもフルHD30FPSで遊べる用だ。
最新のタイトルではビデオメモリの少量が大きいため、1.5GBのビデオメモリがボトルネックとなりフレームレートが大きく落ち込む。GTX580は市場には3GBも流通している。3GB版であれば、現行タイトルでも遊べる幅は飛躍的に大きくなりそうだ。
Geforce GTX580を使う選択肢
何とか現行ゲームも動作するGTX580。しかし、ワットパフォーマンスを踏まえるとGTX580を2019年に選ぶ必然性は薄い。価格が安くお買い得に見えるが、高い消費電力を踏まえると、最新のローエンドよりコストパフォーマンスが悪くなる。
発売から8年を経ており、中古市場でもジャンクコーナー扱いが多くなってきたFremi世代のグラフィックボード。サポートの打ち切られており、そろそろ限界といったところだろうか。純粋にPCでゲームをプレイするのが目的であれば、少し背伸びをして、最新のお買い得なエントリーGPUを選んだ方が良さそうだ。
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