Polarisアーキテクチャを踏襲するとされているAMDの最新GPUになるRadeon RX 580、RX 570,RX 560。 今回は3DMARKにおけるRX580,RX570、RX560,RX550のベンチマークスコアとFF14ベンチ、DirectX12のデモとして定番ゲームの「Ashes of the Singularity」から新GPUの性能に迫っていく。
AMDの新GPU「Radeon RX580,RX570,RX560」のスペック
クロック微増と消費電力アップのRX500シリーズ
PolarisのリネームとされているAMDの新GPU「RX580,RX570,RX560」。ハイエンドの「Radeon RX VEGA」と違い、ミドルからローをカバーする普及帯シリーズと思われる。昨年リリースされたPolarisアーキテクチャを採用しており、スペック的にはコア周波数の微増に留まると想定されていた。結果的にリークされているスペックと概ね一致した形だ。
各モデルのブースト最大クロックが少し向上している程度で、RX560のシェーダープロセッサが微増している以外には大きな変更点はない。RX580は「Polaris20XTX」,RX570は「Polaris20XL」と新しいコード名を冠しているが実質リネームといって良い範疇に収まっている。RX550なるコードネーム「Lexa PPO」のローエンドが配置されているのが最大のトピックだろうか。
また製造プロセスの変更により若干の消費電力削減との噂もあったが、RX580は補助電源が8ピンである事も確認されており、ブースト時のクロックアップとのトレードオフに消費電力アップとなっている。
RX580はモデルによっては6ピン+8ピン構成となっており、OCモデルではRX400シリーズよりも消費電力が全体で約30W程度上回る傾向になる。競合するGTX1060と比較すると全体で70W~80Wと無視できない差だ。
更に下位モデルのRX540、530、520
RX500シリーズ発売の直後にAMDのホームページに更に下位版のRX540,530、520が発表されている。紹介にはノートPCが用いられておりモバイルやライトPCを想定したシリーズの様だ。「RX540」に関してはiGPUやAPUより優位な性能を期待できるかもしれない。
「530」「520」に至っては「RX」の冠が外されている。Polarisアーキテクチャではなく。1世代前のコアを用いてると想定される。RX540も含めて、何れも自作市場ではなくOEM市場向けだ。
iMacに搭載されるRadeon Pro 500シリーズ
Appleの新型iMacにはRadeon Pro 580、Pro 575、 Pro 570、Pro 560、Pro 555が搭載される事がアナウンスされている。PROと命名されているが基本的にモバイルベースで開発された低消費電力版と捉えたほうがよさそうだ。
デスクトップのRX500シリーズより少し性能はスポイルされる事が想定される。
RX500シリーズの価格とラインナップ
オンラインストアに登録されたSapphireのRadeon RX500シリーズを例に見てみると、基本的にRX400シリーズを踏襲している。RX580,570で各4GBと8GBが用意されており、各モデルにオリジナルファンを用いたOC版でグレードが存在する具合だ。
RX580は6ピン+8ピンモデルも。RX570はMiniタイプが登場
RX580ではメーカーによっては補助電源に6+8ピンを利用したOCモデルが追加されている。RX570シリーズに追加されたRX570 miniはITXケースゲーミング市場での需要は大きいだろう。
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RX560は補助電源なしが注目製品
一歩おくれて5月中旬登場となるRX 560シリーズではSapphireから「補助電源なし」モデル「PULSE RADEON RX 560 4G GDDR5」がリリースされる。RX460からのシェーダー数増加による性能底上げに期待だ。海外では「XFX」社から1スロット版のアナウンスもある。
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RX550は1スロット、ロープロファイル版の国内販売が待たれる
ローエンドのRX550は1スロットやLowProfile版も「XFX」からアナウンスされており、各メーカーも追随してくると思われる。ファンレスなどのバリエーショが出れば、GTX1050Tiですら過剰という層にハマりそうだ。
発売初週の価格(税込み)
RADEON RX 580 8GB NITRO 37,584円
RADEON RX 580 8GB PULSE 35,424円
RADEON RX 580 4GB PULSE 30,024円
RADEON RX 570 8GB NITRO 28,944円
RADEON RX 570 4GB MINI 25,704円
RADEON RX 570 4GB PULSE 23,000円
RADEON RX 560 4G PULSE OC 17,500円
RADEON RX 560 4G PULSE 16,400円
RADEON RX 560 2G PULSE OC 14,380円
RADEON RX 550 4GB 12,800円
RADEON RX 550 2GB 10,800円
Sapphire社のシリーズ初値は上記のとおり。残念ながら予想価格のとおり高値だ。RX480の上位シリーズの価格が1年かけてゆっくりと2万円台に下落していった事を踏まえると、RX500シリーズもAMDが値下げしない限りRX400同様の推移を辿るだろう。
価格がこなれてきたRX480やRX470と比較すると普通に高いなという感想だ。
AMD新GPUのDirectX 11ベンチマーク「Fire Strike」結果
DirectX11ゲーミングの性能指標となる「3DMARK FireStrike」のRX500シリーズのスコアが以下となっている。
やはりスペックどおり、RX580,RX570共にクロック分の増加に留まっているように見える。OCの上限分少し盛られた程度だ。
フル版の「Polaris11」になったRX560はシェーダー追加分の向上分は見れる。しかし対向製品となるGTX1050TIには及ばない。追加されたローエンドRX550はGTX1050とは競合しない模様。3D性能は不要だがFluid Motionは利用したいといった層を狙ったモデルといったところだろうか
RX400シリーズにもOCモデルが存在する事を踏まえると、前評判どおりRX500シリーズはポラリスリネーム程度のパフォーマンスに落ち着きそうだ。
RX580のOCモデルでもGTX1070には遠く及ばない。全体的にGTX1060以下の市場を価格で切り崩すといったRX400シリーズと大きな差異はないように見える。
DirectX12ベンチマーク「TimeSpy」でもクロック分の微増
Radeonの本来の能力を発揮するというDirectX12ベンチマークでは全体的にRX500シリーズの方がGTX1000シリーズの競合品より有利になっている。
定格ではクロック分の微増で、「RX480 OCモデル=RX580定格」程度のパフォーマンスアップといった所だろうか。「RX580 OC 8GB」が3万円を切る事があれば「GTX1060 6GB」と面白い勝負になってきそうな気配はある。
RX560は「TimeSpy」ではGTX1050を上回るスコアに達している。GTX1050TIが1万2千円程度なので、あとはRX560の市場価格次第といった所だろう。
FF14 紅蓮のリペレーターベンチでも傾向は変わらず
PS3世代の少し古めのゲームの傾向を図るベンチマークFF14ベンチでも傾向は3DMarkと大きく違いはない。NVIDIA有利なベンチマークとあって最新のRX500シリーズでも分が悪い様だ。各社のRX580 OCモデルでスコアの向上に期待したい。
AMD Radeon に有利なDirectX12の実ゲーム性能
「Ashes of the Singularity」ベンチーマークにもRX580とRX560が登録されている。「Ashes of the Singularity」は早い段階でDirectX12対応したRTSゲームであり、最新GPUのゲーム性能を図る上での一つの指標だ。DX12に強いとされているRadeonの性能を図りやすい。
RX580はGTX1070には及ばず、RX480から微増に留まる
AMD Radeon RX580のスコアを見ると、事前情報と大きなギャップはなくRX480から微増で、GTX1070には及ばない感じだ。RX560の値が低いのは、同CPU,同GPUでも数値の変動が大きいベンチマークなので誤差や環境差と思われる。
VR性能もRX400シリーズから大差はない
RX 580の特徴の一つである安価に実現するVRレディGPU。こちらもRX400シリーズと大きな進化はない模様だ。RX480で厳しいVRタイトルはRX580でも厳しいだろう。
価格次第といえる「Radeon RX580,RX570,RX560」の性能
上位モデルは性能の微増と消費電力の増大
RX500シリーズは性能は微増してるものの、RX400シリーズのリネームと言って良い上昇率で、ややインパクトに欠ける製品群になりそうだ。電力効率次第では化けるかもしれないと思われていたが、少々の性能アップと引き換えに逆に消費電力は向上してしまった。
以下は同一環境でのGPUフルロード時のシステム全体の消費電力比較。RX580のライバルとなるGTX1060との差は無視できない。あとは市場の価格次第となるだろう。
注目の下位製品群 RX560,RX550
RX560の性能アップとローエンドRX550の追加で、下位クラスは注目されそうだ。RX550はNVIDIAのラインナップでは空白だったが、NVIDIAは対抗製品をリリースしている。下位クラスでもシェア争いは激化しそうだ。
RX560は他のRX500シリーズと遅れて5月中旬に各社発売される。補助電源なしモデルも存在しており、「低消費電力」「ライトなゲーミング」+「動画重視」としての需要はありそうだ。
今のところ海外のみでアナウンスされているXFX社の1スロット版RX550,RX560の国内発売も期待したい。
RX400シリーズの在庫処分後が本当の立ち上げか
RX500シリーズの発売日は4月18日となる。このままリネーム程度の性能向上であれば、旧製品になるRX480やRX470の処分価格のコストパフォーマンスが良くなりそうだ。
実際、2月頃から各製品の値下げやタイムセールがよく行われており、値下がりが著しくお得感は強くなってきた。これらの在庫処分が終わった後が本当のRX500シリーズの立ち上げになりそうだ。
マイニングによる特需が終わり、価格がこなれてくればRX500シリーズの評価も変わってくるだろう。
本命のハイエンド「Radeon RX VEGA」
RX500シリーズはAMD的には本命のハイエンド「Radeon RX VEGA」のリリースに合わせたラインナップ拡充といった所だろう。下位機種の「RX550」なるGPUも加わっており、ローエンドからハイエンドまで揃えて、真っ向からNvidiaのシェアを削りに行く形になる。
各レンジNVIDIAのGPUよりコストパフォーマンスが高くなる様な価格付けがされたら面白くなるかもしれない。しかし、2018年に予定されている次世代GPUのNaviまでPolaris&Vegaで引っ張るなら、市場のシェアに大きな変化はなさそうだ。
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