「Geforce GTX680」は2012年に発売されたNVDIAのKeplerアーキテクチャのハイエンドGPUだ。発売から6年を経ており、GTX1080から3世代前のグラフィックボードとなる。発売当時は5万円以上の価格だったハイエンドクラスだが、現在は中古で安価に流通している。
2018年現在、かつてのハイエンドGPUはどの程度のポジションに位置しているのだろうか。今回は6年目のハイエンド「GTX680」を最新GPUと比較しながら、改めてレビューしていこう。
「NVIDIA Geforce GTX680」の仕様
Fermiから飛躍的な進化となったKeplerアーキテクチャ
「GTX680」は28nmのプロセスルールで製造された「Kepler」アーキテクチャのハイエンドクラスGPUだ。前世代となる40nmプロセスルールのFermiアーキテクチャ「GTX480」は高熱・高消費電力で不評となり、NVIDIAは改良版の「GTX580」を即座に投入する事態となった。
その後、後継機となるGTX680では28nmによる微細化に加えて、GPUコア構造を改良。シェーダープロセッサとテクスチャユニット数は大幅に増加した。GTX600シリーズから動作クロックも1Ghzに達し、加えてGPUブーストを初めて採用。バスインターフェイスもPCI Express 3.0にも対応している。
これだけ前世代からスペックアップしたのにも関わらず、TDPはGTX580から減少したころから、「高性能なのに省電力」という高評価を得る事となった。Geforce復権の立役者と言っても良いだろう。
Geforce 600シリーズと価格
GTX600シリーズの主なゲーミングクラスのラインナップは以下のとおり。GTX690は現時点ではNVIDIA最後のデュアルGPU仕様のグラフィックボードだ。GTX660以上はビデオメモリも2GB搭載しており、GPU性能もPS4と互角かそれ以上なので、現行タイトルも「一応」動作する。
ハイエンド志向の自作ゲーマーはGTX900シリーズ以降に乗り換えており、GTX600シリーズは中古市場の流通量も豊富だ。発売から時間を経ているグラフィックボードなので、1ヶ月程度の動作保証があるショップで購入すると安心だろう。
外観・形状の特徴
「ASUS GTX680-2GD5」レビュー
今回レビューに用いるグラフィックボードはASUStek 社の外排気モデル「GTX680-2GD5」だ。リファレンス・デザイン準拠となっており、発売当初は6万円程度で販売されていた。
インターフェース形状:PCI Express3.0 x16
コアクロック:1006MHz
メモリクロック:6008MHz
ビデオメモリ:GDDR5 2GB
映像出力:HDMI /Displayport /Dual DVI / DVI-I
補助電源コネクタ: 6ピン×2
専有PCIスロット:2スロット
推奨電源容量:550W以上(リファレンスの場合)
付属品はシンプルでドライバとマニュアル、補助電源コネクタ6変換ケーブルが付属している。ハイエンドらしくスポンジで綺麗に梱包されている。
外観はリファレンスにあったスリットを排除し、表面に艶ありとマットな艶消しコーティングのツートンデザインになっている。シンプルだが、リファレンスカードより高級感もあり、見た目は良い。
中央にASUSのロゴがメタリック感のあるプラスチックで立体的に表記されている。ド派手なゲーミングモデルにはない落ち着いた色使いと、Geforceのイメージカラーであるグリーンがポイント配色されている感じだ。
2スロット占有モデルで外排気なのでSLI構成でも無理なくGPUを冷せる。
サイズ比較
GTX970のOEMモデルとの比較。カードサイズは約256 mm×111 mm。現行のGeforceのハイエンドFEモデルより1cm近く短いため、タワータイプのPCケースであれば、問題なく収まるだろう。
映像端子構成
この頃の映像端子は未だデュアルリンクのDVI端子が2基配置されている。それ以外はDispayPortに加えてHDMIなど、現行機と大差はない。GTX680はDisplayPort 1.2をサポートしており、4K60Hzの表示も可能だ。
GPUクーラー
GPUファンはリファレンスデザインでお馴染みのシロッコファン。過度なOCは期待できないが、長期間稼働では相応に信頼と実績もあり安心感は高い。
補助電源・バックプレート
補助電源は6ピン×2。この機種では片方は奥に配置されている。両方とも奥であればスリムタイプPCでも利用できただけに惜しい。
バックプレートはなく、基盤は剥き出しだ。リファレンスカードに準拠した結果と思われる。
ゲーム系ベンチマーク
では「Geforce GTX 680」のゲーム系ベンチマークを見ていこう。6年を経た2012年当時のハイエンドモデルは最新GPUと比較すると、どのようなポジションに収まっているのだろうか
3DMARK Time Spy
DirectX12のゲーミング性能の指標となる「TimeSpy」。「GTX680」は最新のエントリーモデル「GTX1050Ti」には及ばず、「GTX1050」とほぼ同じスコアとなっている。ライバルのAMDの「RX560」とも互角で、現行エントリーモデルは6年前のハイエンドクラスまで性能が達している事が伺える。
3DMARK Firestrike FullHD
現行のPCゲームの大半が対応するDirectX11の性能指標となる「FireStrike」。こちらも「TimeSpy」と傾向は変わらず「GTX680」=「GTX1050」となっている。前モデルとなる「GTX580」からの飛躍率は高い。
FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者
FF14はPS3世代のゲームという事もあり、「GTX680」でもDirectX11モードのフルHD最高品質で「非常に快適」判定を得る事ができる。ここでは旧ハイエンドの意地を見せ、「GTX1050」を僅かに上回っている。Maxellアーキテクチャのミドルレンジ「GTX960」とほぼ互角だ。Geforce有利なベンチであるため、RX560は相手にならない。
4Kは「GTX680」のGPU能力では流石に厳しい。フルHDまでが限度だろう。
国産ライト ネットゲーム ベンチマーク
ここからは国内ネットゲームのベンチマークを見ていく。尚このクラスのゲームの場合、負荷が軽すぎてスコアが飽和気味だ。純粋なGPU性能というより、これらのゲーム動作を図る指標程度に捉えておいた方が良いだろう。
ドラゴンクエストX ベンチマーク FullHD最高画質
ドラクエ10ベンチはフルHDではGPU負荷が低すぎて、GTX1050Ti程度でスコアは飽和する。GTX680はフルHDであれば飽和点に達しており、高リフレッシュレートのゲーミングモニタによる最高画質プレイが期待できる。
負荷が軽いゲームのため、GTX680のGPU性能でも4Kで「すごく快適」判定を得る事ができている。古いゲームのためか、GTX1050Ti,GTX1050はスコアが少し振るわず、逆にGTX680が大きくスコアを上回っている。
ファンタシースターオンライン2 設定6フルHD ベンチマーク
Radeonが苦手なPSOベンチ。GTX680はGTX1050を上回り、GTX1050Ti相当となる。GT1030やGTX750Tiでは60フレームが安定しないが、GTX680なら安定だ。
GPGPUベンチマーク
動画や3Dなどクリエイティブソフトで用いられるGPGPU性能を図る「CompBench2.0」。GTX680はなぜかスコアが全く振るわない。項目によってはGTX480程度のスコアもある。GTX780が期待値に達していることからKeplerが不得意という訳ではなさそうで原因は謎だ。
VRベンチマーク
VRMark
この世代のGPUではハイエンドといえどもVRは厳しい。Oculus Riftの最低ラインGTX1050Tiを下回っており、45FPSすら維持するのが厳しいケースが発生する。要求スペックの低いWindows MR機器なら最低画質でなんとか・・といった所だろうか。いずれにせよVRを楽しむなら、最新のミドルレンジ以上は欲しい。
Steam VR pefomance Test
SteamVRの性能指標となるベンチマーク。一応「可能」と表記されているが「レディ」に達していないと、VR酔いなどを誘発する。スコアも1.5なので「可能」を真に受けない方が良さそうだ。
実際のゲームプレイ時のFPS比較・ゲーム性能
ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のフルHDゲーミング性能と、数年前のPS3・Xbox360世代のフルHDゲームのFPSを計測してみた。
ベンチマークでは最新のエントリーGPUと同程度の性能を示したGTX680。実際のゲームでも同程度の性能を発揮する事ができるだろうか。
*RX580=8GB、RX570=4GB、RX560=4GB
PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080
Witcher3 (ウィッチャー3)
最高画質では2GBというビデオメモリがボトルネックとなるのか、GTX680はフレームレートの落ち込みがやや大きい。平均ではGTX1050やGTX1050Tiと飛躍しても遜色ない。当初はビデオメモリが足枷となりGPU性能を発揮しきれてないと思えたが、同じ2GB搭載のGTX1050がそこまでパフォーマンスダウンしてない事からアーキテクチャの差が出たという事だろうか
画質を中程度まで落とすと、ボトルネックが解消されたのか、GTX680のGPUパワーがフルに発揮されている事がわかる。50フレーム以上を安定して維持しており、GTX1050Tiと比較しても遜色はない。RX560より明確に高いFPSを示している。
For Hornar (フォーオナー)
フルHDではビデオメモリがボトルネックとなり、GTX680はボトムのフレームレートの落ち込みが大きい。GTX1050 2GBも同様の傾向がある。とはいえ30フレームは維持しているため、遊べない事はない。
画質を1ランク落とすとビデオメモリのボトルネックが解消され、GTX680は最低でも秒間50フレーム以上。平均では70フレームに達する。一部の画質オプションを再調整する事で60フレーム堅持も可能だろう。
DarkSouls3(ダークソウル3)
ダークソウル3でも最高画質ではビデオメモリがボトルネックとなり、一部でフレームレートの落ち込みが大きい。とはいえ最低でも45フレームを維持しているので、30フレームを下回るPS4より快適だ。攻略の阻害になる事はないだろう。
画質を1ランク下げると一気にフレームレートが安定する。RadeonのエントリーモデルRX560よりGTX680は明確に高いFPSを維持しており、ほぼ60フレームをターゲットに遊べる。
Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)
バットマンアーカムナイトの最高画質はビデオメモリの消費量が3GBと大きい。GTX680はボトムのフレームレートの落ち込みが大きい。このあたりは他のゲームと傾向が同じだ。
画質を下げてもボトムは大きな改善はない。画質を優先するなら30フレームをターゲットと割り切ったほうが良さそうだ。
PS3、Xbox360世代のFull HDゲーミング:1920×1080
ここからは前世代にあたるPS3、Xbox360とのマルチタイトルゲーミング性能を1920×1080ドット設定で見ていく。
METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)
メタルギアソリッドシリーズの事実上の最終作シリーズとなる「V」の導入作品。PS3世代のゲームだがPS4との縦マルチであり、画質オプションによっては相応のGPU能力を要求する。しかしフルHDではればGTX680のGPU能力があれば、ほぼ60フレームを維持して遊べる。
LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII(FF13 ライトニング リターンズ )
JRRGの代表作FF13のスピンオフ作品。GTX680のGPU能力があれば余裕だ。Steamでも特価で販売されているタイトルなので、FF13をプレイ済みなら、遊んで見るのも良いだろう。
BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)
上限フレームがなく、CPUもボトルネックになりにくいため、GPU性能の地力が出るバイオショック3。「GTX680」は平均125フレームに達しており、画質オプションを微調整する事でゲーミング対応の高リフレッシュレートモニタでのプレイも視野に入ってくる。
Tomb Raider 2013(トゥームレイダー2013)
PS4との縦マルチとなるタイトル。GTX680だと60FPS安定で快適に遊べる。レイトレーシング対応で最新作が発売される話題のタイトルだ。リブート1作目は安価に発売される事が多いので、未プレイならお勧めだ。
Skyrim(スカイリム)
オープンワールドRPGの代表作。もちろんフルHDなら60フレームで安定しており、WQHDや設定次第では4Kゲーミングも期待できるパフォーマンスを見せている。
実ゲームにおいてもGTX1050相当の性能を発揮
Geforce GTX680は実ゲームにおいても、ベンチマーク同等にGTX1050相当のパフォーマンスを発揮できるようだ。最高画質では2GBのビデオメモリがボトルネックとなるケースが多いが、グラフィックオプションを微調整する事で60FPSで遊ぶ事が可能になる。
PS3世代のゲームであれば、GTX680のGPU性能があれば最高画質フルHDで60FPSで安定プレイする事が出来る。グラフィックオプションによっては高リフレッシュレートのゲーミングモニタも視野に入ってくる。Steamで格安で発売されている数年前の名作を家庭用ゲームでは味わえない高画質・ヌルヌルで遊ぶのも悪くないだろう。
GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動
GPU-Z情報
GPUコアは「GK104」で製造プロセスは28nm。Hyrix製のメモリを搭載と表示されている。OpenCL,CUDA,PhiyX、DirectComptuteと一通りサポートされている。GPU-ZのDirectX Supportの表示も「12」と現行機器と大きな差はない。
GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動
以下はアイドル時と高負荷時のGPU-ZのSensors情報。
高負荷時のコアクロック・GPU温度・ファンスピードの推移
下記のグラフはゲーム起動後から終了までのGPUコアクロックと温度、ファンスピードの推移。外排気という事もあって、GPU温度は80度近くまで上昇している。GPUクロックは1100Nhz近辺まで上昇したあとは1000~1100Mhzを行ったり来たりといった具合だ。
外排気モデルであれば、クロックを少し高い状態で維持できていたと思われるが、古いハイエンドは消費電力も気になるところだ。この程度が丁度良いのかもしれない。
消費電力比較
ここからはGTX680の電力消費量にスポットを当ててみていく。Fermiから大きくワットパフォーマンスを改善したKeplerアーキテクチャの実力は最新Pascalアーキテクチャのグラフィクボード群と比較すると、どの程度のものなだろうか。
システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。(左:アイドル 右:フルロード)
アイドル時のシステム全体の消費電力
最近のGPUはアイドル時はクロック制御によって消費電力が低く抑えられる。GTX680はFermiのGTX480と比較すると劇的な改善を見せているが、最新GPUのクロック制御には遠く及ばない。アイドル時でもGTX1050Tiから+30W程度の上乗せが確認できる。
高負荷時のシステム全体の消費電力
GTX480,GTX580と比較すると劇的な改善が確認できるが、同パフォーマンスとなるGTX1050と比較すると+100W近い差となって現れる。省電力なPCシステムであれば、もう1台稼働できそうな消費電力差だ。
電気料金比較
以下は「1日3時間、GPU負荷100%でゲームを1年プレイした」と想定した場合の年間電気料金の比較。GTX680は性能が近いGTX1050と比較すると年間で2500円程度の差となる。2年間使えば5000円。中古で10000円で購入したGTX680は新品の15000円のGTX1050と比較すると2年間でコスパが逆転する計算となる。
「Geforce GTX680」レビューまとめ
6年経た現在もギリ現役で使えるGPU性能
GTX680は2012年の発売から6年を経たハイエンドだ。現行GPUでは「GTX1050 2GB」とほぼ同等性能を示しており、グラフィックオプションを調整する事で現行の作品でもフルHD60フレームのゲーム体験を味わえる。
しかし、2GBのビデオメモリがボトルネックとなる局面は少なくない。GTX680には4GBも存在するが貴重種で価格も高い。ビデオメモリの消費量が2GBを超えないようにユーザーがコントロールしないとGPU性能を十分発揮できないので留意が必要となる。
性能はGTX1050、消費電力はGTX1070相当
GTX680を2018年現在利用すると消費電力がネックとなる。最新のゲームを長時間本気でプレイするつもりであれば、やはり最新GPUを購入する事を強くおすすめする。しかし、用途を限定すれば、電力料金差に留意しつつ利用するという選択肢もなくはない。
・PCゲームを遊びたいが初期投資は抑えたい
・週末に数時間軽くPCでゲームをしたい
・Steamの格安PCゲームを触ってみたい
・とりあえず繋ぎでグラフィックボードがほしい
この程度の用途であれば電力料金差でGTX1050のコスパを上回る事も可能かもしれない。ただし中古品は故障のリスクもある。購入する際はGTX1050の半額以下の価格が目安といったところだろうか。
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