5,000円前後で買えるグラボ「Geforce GT 730」レビュー。リネームでカオスなGPUのベンチマーク・ゲーム性能

「Geforce GT1030」の発売で数年ぶりにラインナップ更新が行われたローエンドレンジのGPU。しかし「GT1030」は9,000円から10,000円で高止まりしており、従来のモデルが担っていた5,000円前後のレンジをカバーするには至っていない。そのためか市場では前モデルの「GT730」が未だ現役で流通している状態だ。
今回はこの「Geforce GT 730」のベンチマーク、ゲーム性能、消費電力にスポットをあててレビューしていく。5,000円前後で買えるグラボのパフォーマンスは、どの程度のものなのだろうか


「Geforce GT 730」の仕様

 GTXの冠を付けないGTシリーズの前世代モデル

「Geforce GT 730」はゲーミングをターゲットにいれた「GTX」の冠を付けないローエンド帯を担う「GT」シリーズのGeforceだ。シェーダープロセッサ数の規模はGT1030と同じだが、コアクロックは控えめでメモリも低速なDDR3と高速なGDDR5が混在するラインナップとなっている。

GT440→GT630→GT730と3世代リネーム

NVIDIAローエンド帯はリネーム商法が酷く、数世代に渡って同じ製品の型番だけを変更して販売している。このGT730も多分にもれず、GT430→GT630→GT730と3世代にも渡ってリネームを繰り返している。

厄介なのはGT630は途中で製造プロセスが40nmのFermiアーキテクチャのタイプに加えて、28nmのKeplerアーキテクチャの新バージョンをリリースしている事だ。

これによってGT630という同名のGPUにも関わらず、性能と消費電力の大きく違う商品が流通している。さらにKepler版には低速安価なDDR3版と高速高価なGDDR5版とメモリタイプが2バージョン派生しており、複雑さに拍車をかけている。

2つのGPUアーキテクチャとバリエーションが混在するGT730

その複雑な構成の「GT630」をそのまま「GT730」にリネームしており、製品構成はカオスの極みといって良い。「GT730」を購入する場合は「Fermi」版を掴まされない様に警戒する必要がある。とはいえ現在市場で新品流通しているものは「Kepler」版なので、中古やオークションの購入時に留意してれば良いだろう。

GT710とGT1030の間を埋めるGT730


現在、NVIDIA製のGPUで1万円以下で買えるグラフィックボードは「GT1030」、「GT730」、「GT710」となっている。一応「GF210」も現役ラインナップだが、既に市場流通は殆どない。最新の「GT1030」は未だ9,000円前後と高価だ。「GT710」は発売から時間も経っており、価格は最安値だと3,000円と安価で、「GT730」はこの2つのGPUの間に収まるような価格帯で流通している。

しかしDDR3版とGDDR5版では2,000円から3,000円程度の価格差があり、GDDR5+2GBの最上位クラスだと「GT1030」に届きそうな値段に達するケースも少なくない。

外観・形状の特徴

ZOTAC GeForce GT 730 LP 2GB DDR5 64bit 2slot

今回レビューに用いるグラフィックボードはZOTAC社「 GeForce GT 730 LP 2GB DDR5 64bit 2slot (VD5369 ZTGTX730-2GD5L64BR01)」となっている。GTX730の中ではDDR5+2GBと最上級に位置する商品だ。

以前は8,000円以上するローエンドでは高級機だったが、「GT1030」の発売によって値下がりし、5,980円などは珍しくなく、筆者も新品で4,000円代で購入できた。


ZOTAC GeForce GT 730 LP 2GB DDR5 64bit 2slot グラフィックスボード(amazon)

インターフェース形状:PCI Express(2.0) x16(スピードは×8)
コアクロック:902MHz
メモリクロック:1,252MHz
ビデオメモリ:GDDR5 2GB
映像出力:HDMI1.4/D-SUB/DVI-D
補助電源コネクタ:不要
カードサイズ:14.58cm×11.12cm××3.54cm
専有PCIスロット:2スロット


付属品

付属品はマニュアル、ドライバに加えてLowProfile用のブラケットが2つ付属している。2つ用いる事によってLowProfile利用でも全ての映像端子を有効化する事が出来る。(後述詳細)

外観

形状は2スロット専有のロープロファイルモデルとだけあってコンパクト。補助電源は勿論不要で、推奨電源容量は300Wとなっている。このクラスのグラフィックボードの場合、ヒートシンクが剥き出しのデザインが多いのだが、このモデルはプラスチックカバーで保護されている。

ゲーミングモデルのGPUの様な派手なデザインやカラーはなく、黒い箱といった様相だ。一応、ファンはオレンジでカラーリングされており、黒とオレンジのツートンカラーが特徴的だ。

アクリル製のGPUファンは少しチープだが、それ以外は質実剛健な質感で見た目も悪くない。


Geforce GTX 1080 FE版とのサイズ比較

ハイクラスGPUのリファレンスサイズとなる「GTX 1080TI」のFouderEdtionと比較すると、コンパクトなサイズ際立つ

最新の「GT1030」は1スロット&ロープロファイルモデルのビデオカードが多いが、「GT730」は2スロット専有タイプが多い。PCIスロットに余裕がない場合は留意が必要だ。


カード長は14.58cmとなっており、メーカー製PCでも十分収まる長さに留まっている。高さは2スロット3.54cm。GT730の1つ下段にPCIカードを配置するのは厳しい。

旧型モニタ用の映像端子構成


映像端子は旧型仕様でアナログD-SUB端子が未だ存在している。一応HDMIも備わっているがバージョンは1.4で4Kだと30hzが上限となってしまう。HDMIを利用する場合は、事実上フルHDと考えた方が良いだろう。DVI-Dは2560×1440で60Hz表示が可能だ。

アナログのD-SUB端子はブラケットから取り外しが可能な構造になっており、ロープロファイルでD-SUB端子を用いてモニタに接続する場合は付属のブラケットを2スロット目に配置し、そこにはめ込む事で初めて固定できる。

小型GPUクーラー

GPUクーラーは小型1基のみ。GPU負荷によって細かく制御されるがセミファンレスでない。TDPが38Wしかないので、これで十分の様だ。

補助電源・バックプレート

勿論バックプレートなどはない。PCI Express(2.0)は形状は「 x16」だがスピードは「×8」となっている。実際にPCIスロットに収めると、2段目にクーラー部分が少しだけ被っている事が確認できる。

ゲーム系ベンチマーク

ではGeforce GT730のゲーム系ベンチマークスコアを見ていこう。5,000円前後で買えるローレンジGPUの性能はどの程度なのだろうか

3DMARK  timespy

最新のDirectX12による高負荷ゲーミングベンチマークのTimeSpy。GT730はCPU内蔵グラフィックである「intel HD 530」と比較すると僅かに勝っているが、次世代ローエンドの「GT1030」の3分の1以下にとどまる。デモ中も3FPS程度しか出ておらず紙芝居状態だ。

3DMARK  Firestrike Full HD

現在の主流であるDirectX11でも傾向は変わらない。「Geforce GT 730」はGTXシリーズの最下位モデル「GTX1050」の4分の1以下の性能といったところだ。新モデルの「GT1030」は「GTX750TI」に肉薄しており、一定のゲーミング性能が期待できる。

FF14ベンチマーク 紅蓮の解放者

PS3世代の古いゲーミング性能指標となるFF14ベンチ。フルHD最高画質では「設定変更を推奨」判定となり、そのままでは快適なゲームプレイは期待できない。解像度を1280×720に変更し、画質も下げれば何とか動作するといったところだ。

GT1030になると飛躍的に快適になるので、FF14が目的であれば上位GPUを検討したほうが良いだろう。

国産ライト ネットゲーム 4Kベンチマークテスト

国内の軽量ネットゲームであればローエンドGPUでも十分遊べる事が期待できる。ここからは国産ネットRPGのベンチマーク結果を見ていこう。

ドラゴンクエストX ベンチマーク

「Geforce GT730」はフルHD最高画質でも「快適」判定を得る事ができており、ドラクエ10であれば十分快適にプレイできる事が期待できる。CPU内蔵GPUである「intel HD530」からは微増で、Core i7-6700のような第6世代以降のCPUを搭載したパソコンからのパフォーマンスアップは余り期待できない。

ファンタシースターオンライン2 設定6 ベンチマーク

軽量な「PSO2」だが「最高画質設定6」では相応にGPU負荷が高まる。「GT730」はスコアが1000を切っており、最高画質で遊ぶには足りないようだ。設定を「3」程度まで下げると十分遊べる判定を得れる。

設定3

GPGPUベンチマーク

近年はゲームだけでなくクリエイティブソフトやエンコーディングなどで利用されるGPU。ここではGPGPUの性能を図るCompbenchベンチマークを用いて、GT730の性能を測っている。

「GT730」は何故か「intelHD530」を下回る結果に留まっており、GPGPU目的の場合は余り期待できない事が示唆されている。ライバルAMDの新型ローエンド「RX550」が健闘しており、特定の分野では高いスコアを叩き出している。
「HD6450」のスコア傾向を見る限り、世代間の性能差が激しいようだ。

CPU内蔵グラフィックとの比較

歴代のCPU内蔵グラフィックとの性能比較が以下。GT730は最新の第7世代Core iシリーズのミドルレンジ以降のCPUに搭載されている「intel HD630」に負ける結果となっている。

第2世代Core iに搭載されている「HD2000」や「HD3000」と比較すると3倍から4倍程度の性能は保っている。この辺の古いパソコンであればGPU性能の向上も期待できそうだ。

実際のゲームのFPS・性能比較

ここからは実際のゲーミングでの動作を見ていく。最新のプレイステーション4・XboxOne世代のゲームと、数年前のPS3・Xbox360世代のゲームのフルHD環境下のFPSを計測してみた。

比較対象はCore i7-6700Kなどに実装されているCPU内蔵グラフィック「Intel HD530」、最新アーキテクチャのローエンドGPU「Geforce GT1030」、「Radeon RX550」となっている。

PS4・XboxOne世代のゲーム:1920×1080

「Geforce GTX 750TI」相当のGPU性能を求めるPS4世代のマルチタイトル。「GT730」はどこまで動作するのだろうか

Witcher3 (ウィッチャー3)

オープンワールドRPGの決定版ウィッチャー3。広い描画範囲と大量のオブジェクト表示で流石に「GT730」には荷が重すぎるようで、最低画質でも平均フレームレートは10FPSを少し上回る程度だ。
フレームレートが上下に激しく触れるCPU内蔵GPU「intel HD530」より少し安定しているが、平均フレームレートでは誤差程度に収まっている

For Hornar (フォーオナー)

GT730はintel HD 530より明確に高いパフォーマンスを発揮しているが、アクションゲームプレイの最低水準30FPSには遠い。次世代ローエンドGT1030では平均30FPSを上回っており、何とかプレイできる水準に達している。

DarkSouls3(ダークソウル3)

平均20FPSとPS4マルチタイトルの中では善戦している方だが、やはりアクションゲームをプレイできる水準には達していない。このクラスのゲームは最低画質でもGT1030,RX550程度の性能がなければ厳しそうだ。

Batman Arkm Knight (バットマン アーカム・ナイト)

他のPS4タイトルと同様にプレイ不可な状況は変わらない。しかしCPU内蔵グラフィックでは動作さえしなかったが、GT730は一応動いている。下位モデルのGT710との差も大きい。VRAMの消費量が多いタイトルなだけに、GDDR5 +2GBのメモリ容量が効いてるのかもしれない。

PS3、Xbox360世代のフルHDゲーミング

最新のゲームでは最低画質でもGT730のGPU能力は厳しい。ではPS3等の前世代のゲームはどうだろうか。ここからはGT730のフルHDにおける前世代ゲーミング性能を見ていく。

METAL GEAR SOLID Ⅴ (メタルギアソリッドV-グラウンド・ゼロズ)


クオリティが高い割に負荷が軽量なフォックスエンジンを用いたメタルギアソリッド5。GT730はHigh設定だと平均25フレームとプレイ可能ギリギリの水準に達している。画質設定を落とせば平均30フレーム安定も不可能ではなさそうだ。
intel HD530の倍程度のパフォーマンスを発揮しており、第6世代のCPUを搭載しているパソコンからの増設でも一定の性能アップが期待できる。

LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII(FF13 ライトニング リターンズ )

比較的負荷の軽いJRPGの代表作FF13の外伝作品。GT730はほぼ秒間30フレームを維持できており、PS3以上の解像度で、同等のフレームレートで快適にプレイできる水準に達している。このクラスのゲームであればGT730でもグラフィックオプション次第で十分遊べると見て良さそうだ。

BioShock Infinite (バイオショック インフィニット)

上限フレームがないため、GPU性能差が明確に出るバイオショックインフィニット。VeryHighだとGT730はギリギリ30FPSに達していないが、グラフィックオプションを調整することで十分プレイできそうだ。しかし、最新ローエンドGT1030、RX550との性能差は大きい。

Tomb Raider 2013(トゥームレイダー2013)

PS4・PS3との縦マルチでもある「トゥームレイダー2013」。GT730はHigh設定でも平均フレームレートを30FPS超えており、何とかプレイできる事が期待できる。描画設定を多少調整することでフレームレートを更に安定させる事ができそうだ。

Skyrim (スカイリム)


最高設定でもボトムで30FPS以上、ピークでは60FPSに達しており、GT730でも快適にプレイできそうだ。グラフィックオプションを調整することでフルHD60フレームのゲームプレイが期待できる。

最新ゲームは厳しいが、PS3世代ならプレイ可能なゲーミング性能

「Geforce GT 730」は最低画質でもPS4世代のゲームプレイは厳しそうだ。解像度を1280×720ドットに下げる事で何とか30フレームに達するタイトルもあるが、快適とは言い難い。このクラスのゲームをプレイするのであれば、やはりGTX1050程度の性能は欲しい。


PS3,Xbox360世代のゲームなら、最高画質でも30フレームで遊べるタイトルが一気に増える。グラフィックオプション次第では60フレーム安定も狙える程度のGPU性能を「Geforce GT 730」は備えているようだ。
Steamで安価にセールされる数年前のゲームを遊ぶ程度ならGT730でも十分役割を果たせそうである。

GPUクロック、温度、GPUクーラーの挙動

GPU-Z情報

GPUはGK208。GDDR5はSamsung製で、PCIの接続は「2.0」の「×8」となっている。

GPU-Z アイドル時と高負荷時の挙動

以下はアイドル時と高負荷時のGPU-ZのSensors情報。

高負荷時のコアクロック・GPU温度・ファンスピードの推移

下記のグラフはFF14ベンチの起動からベンチマーク終了後にアイドルに戻るまでのGPUクロックと温度とクーラーファンの挙動グラフ。クロック制御はアイドル時の135Mhzと負荷時の
901Mhzの2段階制御となっており、細かい制御は行われていない。

ローエンドGPUという事でGPU温度も52,3℃程度が上限といったところで、ファンの音も非常に静かだ。回転速度が遅いためか小径ファンながらも殆ど音は聞こえない。

消費電力比較

二世代前のKeplerアーキテクチャという事で消費電力が懸念されるGT730.ここからはGT730の消費電力にスポットを当てて見ていく。

システム全体の消費電力のリアルタイムログが以下。(左:アイドル 右:フルロード)

アイドル時のシステム全体の消費電力

アイドル時の消費電力は製造プロセスが1世代前という影響からか、最新Pascal世代のGPUと比較すると少し高い。とはいえ殆ど誤差程度の範囲に収まっており、グラフィックボードを搭載しないシステム「intel HD530」と比較しても「+10W」程度だ。

高負荷時のシステム全体の消費電力

高負荷時の消費電力も「GT730」は内蔵グラフィックと比較しても20W程度の微増に留まっており、システム全体でも概ね100W以内に収まる省電力性を見せている。
次世代ローエンドGPUの「GT1030」よりも低消費電力を実現しており、製造プロセスのハンデを低いクロックでカバーした形となっている様だ。

電気料金比較

以下は「1日3時間、GPU負荷100%でゲームを1年プレイした」と想定した場合の年間電気料金の比較。内蔵グラフィックと比較しても数百円以内の増加に留まる事が分かる。
ハイエンドクラスと比較すると年間1万円近い電気料金の差となる。

「Geforce GTX 730」まとめ

古いPCからのアップデート用となる「Geforce GT 730」


「Geforce GT 730」は最新世代のゲームを遊ぶには少し足りないようだが、PS3世代となる数年前のゲームやドラクエ10やPS02といった国産ライトゲームを遊ぶ程度であれば十分プレイできるGPU性能をもっているようだ。

しかし、最新のCPU内蔵グラフィックと比較すると、一定の性能アップは期待できるが飛躍率は低い。Core i7-2700KやCore i5-2500、Core i3-2100世代のCPUを搭載したパソコン用のアップグレードが限度といったところだろうか。

「GT730」の後継モデルとなる「GT1030」はHDMI2.0やDisplayPort1.4など最新の映像端子を備えており、4Kモニタ60Hzや高リフレッシュレートモニタでも十分活用できる。

古いPCの活用以外の用途であれば少し予算を追加して「GT1030」まで選択肢を広げた方が末永く利用できるシステムになりそうだ。1スロット・ロープロファイル・補助電源なしの低消費電力とGT730の代替となる条件は全てクリアーしているだろう。

・関連記事

2020年の「Geforce GTX 1060 6GB」レビュー。安価に快適ゲーミングを実現する高コスパGPU
GTX1060は2016年7月にNVIDIAから投入されたのGPUだ。マイニングによって一時期は価格が冒頭したが、ブームの終焉により...

https://androgamer.net/2017/09/04/post-6331/